選択バイアスとは、集めた情報が私たちの考察結果や判断を左右してしまうことです。
例えば、第2次世界大戦中に多くの爆撃機を失い対策を必要としていたイギリスは、生還した機体の損傷部分を見て、翼とボディの補強を検討しました。
ところが数学者のAbraham Wald氏に相談したところ、彼は生還した機体ではなく、撃墜された機体のデータを見てエンジン・コックピット・尾翼の補強が課題だと突き止めたのです。
このような選択バイアスは広汎に指摘されている現象で、その原因は様々ですが、本記事ではWebデザイナーが特に注意すべきものを4つにまとめてみました。
順番に見ていきましょう。
選択バイアスの主要な原因4選
1.サンプルの偏り
選択バイアスの原因の多くがサンプルの偏りです。イギリスが当初撃墜された爆撃機のデータしか見ていなかった例がそうですね。
デジタルデザインも同じで、ユーザのサンプルが偏っていると間違った方向に進んでしまいかねません。
2.期間や時期
商品試験の期間や時期を誤ると、それが選択バイアスにつながります。ユーザが普段通りの行動をとる時期を選び、条件をそろえて適切な期間を決めましょう。
3.新しい条件の追加
商品試験が既に始まっているのに、途中で新しい条件を加えたり、被験者を新しいものに接触させたりするとデータが偏ります。ユーザが普段と違う反応を示してしまうと、データが参考になりません。
4.データの歪曲
説得材料になるようなデータだけ集めて、そうでないものは無視する…というのは厳禁です。残念ながらインターネットはそうして作られた情報であふれていますが、同じことをすれば後でツケが回ってきます。
選択バイアスを防ぐ
サンプルは偏りがないようにしましょう。サンプル対象全員からデータを集めるのは非現実的な場合が多いので、分析対象、つまりターゲットオーディエンス全体からアト・ランダムにサンプリングしましょう。
また、商品試験の期間や時期・条件はそろえて途中で変更しないよう注意してください。クリスマスのような特殊な時期に試験を行っても、参考になるようなデータはとれません。
根拠にするデータを取捨選択するなんてもってのほかです。
最後に
人はあらゆるものから法則を見出したり、点と点をつなげて法則を作ったりするのが好きな生き物です。それが良い方に働くかどうかは、選択バイアスのような「偏り」の存在を知っているかどうかで変わってきます。良いデザインは良いデータから、というのを頭の片隅に置いておいてくださいね。
(※本記事はDesign principles: Selection biasを翻訳・再構成したものです)