アイトラッキングは議論を呼ぶ手法です。ワイヤフレーミングやプロトタイピングなどの定番の手法について、効果を疑う方はいないでしょう。しかしアイトラッキングはまだその評価が定まっておらず、10年以上議論が続いています。
UX Magazineによれば、アイトラッキングはユーザーの意識と無意識の振る舞いをつかむのに有効です。ただ、これからアイトラッキングを導入する場合には効果とコストを見極める必要があるでしょう。
今回は興味のある方向けに、簡単にアイトラッキングがわかるクイックガイドをお届けします。
アイトラッキングとは
アイトラッキングの技術自体は100年以上も使われています。1900年代後半、エドモンド・ヒューイが読書中の目の動きを捉える機器を作りました。この機器は目の疲れの原因を発見するのに役立ちました。
技術は進歩し、現在は赤外線で目の動きを捉える仕組みになっています。移動の軌跡までわかることから、ユーザーがどこを見ているかだけでなく、何を考えているのかまで調べられるようになっています。UXでのアイトラッキングは、主にユーザビリティテストの一環で使われています。
アイトラッキングから発見できること
UIデザイナーにとって、製作したアプリやウェブをユーザーがどのように見てどのように使っているかがわかるのは大きな意義があります。無意識のうちに行われる移動や振る舞いを調べ、次のようなことが発見できます。
- ・ユーザーがキーとなるUI要素を想定通りに見つけられたかどうか
- ・気を散らす要素がないかどうか
- ・デザインのどこに問題がひそんでいるか
- ・ユーザーがどのように目標を達成するか
アイトラッキングの導入が進まない理由
これほど便利なものを、なぜみんなが導入していないのでしょう?それは、アイトラッキングにも欠点があるからです。
- ・何より価格がネックです。プロ向けの機器は導入に100万円以上かかります。しかも既存のツールを置き換えるのではなく、補うだけなのです。
- ・正しく調査するのが難しい技術です。分析には特別な訓練と経験が必要で、得られたデータが多すぎて途方に暮れてしまうこともあります。
- ・人間の視覚は意識して見ているものと無意識のうちに写っている景色に分かれますが、アイトラッキングは意識的な視線しか追跡できません。しかし人間は視覚の98%を無意識に見ています。そうした部分は分析できないのです。
アイトラッキング導入における注意点
- ・プロジェクトの拡大が必要になるかもしれません。これから調査を行って手作業で結果を分析するのであれば、テスト参加者は5人で十分です。しかし他にヒートマップなども行うのなら、参加者は少なくとも39人は必要です。
- ・専門家への依頼も考慮しましょう。アイトラッキングは自分で行おうとすると高価で、知識も時間も必要です。
- ・テスト中は参加者の邪魔をせず、静かな環境を作りましょう。物音や質問で参加者の気が散ると、正しいデータが得られません。
結論
アイトラッキングの価値については、現在も議論が続いています。これまでにはわからなかった深い洞察が得られるのは確かですが、従来のUXの手法を置き換えるものではありません。しかし時間とリソースに余裕があれば、現在のテストにアイトラッキングを追加する価値はあるといえるでしょう。
※本記事はUXer’s quick guide to eye trackingを翻訳・再構成したものです。