天文学を趣味にしたいですか? 望遠鏡がほしいですか? そんなアナタ、このコラムへようこそ! ここでは、初心者に最適な望遠鏡を紹介するだけでなく、ご自身のニーズに合った望遠鏡の選び方を説明しています。ぜひ参考になさってください。
望遠鏡の選び方
光学望遠鏡(可視光線から光を集める)には、大きく分けて「屈折式」「反射式」「反射屈折式」の3種類があります。この3つのタイプの違いは、使用する対物レンズ(光を集める部分)の種類にあります。屈折式望遠鏡はレンズを対物レンズとして使用し、反射式望遠鏡は鏡を使用します。一方、反射屈折式望遠鏡は、レンズと鏡を組み合わせて使用します。
口径
望遠鏡で最も重要な側面は、分解能(画像の鮮明さ)であり、これは対物レンズの口径で決まります。つまり、対物レンズの直径が大きければ大きいほど、より多くの光を集めることができ、より鮮明で詳細な画像を得ることができます。
口径が10インチ【254㎜】の光学望遠鏡は、口径3インチ【76.2㎜】のものに比べて、遠くの惑星や淡い銀河をより鮮明に観察することができます。大きいほど良いのです。この根本的な理由から、天文学を楽しむには巨大な望遠鏡を買うべき、ということになりますね。しかしながら、口径が大きくなると、かさばるうえに重量があり、扱いにくいのが難点です。持ち運びはもちろん、狭い場所での設置や、使わないときの保管にも不便が生じます。
初心者向け望遠鏡の適切な口径について
初心者にお勧めの望遠鏡の口径は、2.8インチ(70㎜)から12インチ(304.8㎜)の間です。人間の目の最大口径が7㎜であるのに対し、70㎜の小型望遠鏡では10倍もの光を集めることができます。同様に、口径5インチ(127㎜)の初心者用中型望遠鏡では、人間の目の約18倍の光を集めることができます。
威力は劣るものの、小型望遠鏡は、アマチュア天文家にとっては理想的です。経済的(手頃な価格)なだけでなく、使いやすく、リュックに入れて気軽に星を見に行くことができます。
一般的には、十分な経験を積んだ後に、口径の小さい望遠鏡から口径の大きい望遠鏡へとステップアップしていくのが良いと言われています(2.8インチから5インチへ、5インチから8インチへ……と)。望遠鏡の口径が大きくなると、観測する惑星や銀河がより細かく見えるようになります。
倍率
望遠鏡の倍率も、購入時に考慮すべき重要な要素です。望遠鏡の倍率は、対象物をより大きく見せる一方で、画質を落とすために用いられます。つまり、倍率が高ければ高いほど、視野内の微小な物体を観察することができますが、その分、画質は低下します。
理論的には、望遠鏡はいくらでも倍率を上げることができます。しかし、極端に倍率の高い望遠鏡を使っても意味はありません。望遠鏡の倍率を生産的に利用できない限界があるのです。最大有効倍率を超えると、画像は細部まで見えずにぼやけてしまいます。
望遠鏡の倍率は、望遠鏡の焦点距離と口径の2つで決まります。望遠鏡の焦点距離とは、主対物レンズの中心から像面までの距離のことです。焦点距離は、望遠鏡の倍率を決定する最も重要な要素です。
望遠鏡の倍率の限界は、主レンズまたは主鏡の直径(㎜)に2を掛けるだけで決まります。実際には、初心者向けの望遠鏡の望ましい倍率は、口径1インチあたり40倍です。
レンズと接眼レンズ
様々な直径の接眼レンズ|画像提供:Tamás Szőcs/Wikimedia Commons
これから紹介する望遠鏡には、ほとんどの場合、焦点距離10㎜〜30㎜の補助レンズが付属しています。接眼レンズの倍率は、その接眼レンズの焦点距離を望遠鏡の焦点距離で割って求めます。
たとえば、望遠鏡の焦点距離が650㎜で、接眼レンズの焦点距離が25㎜の場合、650÷25=26倍の倍率になります。焦点距離の短い接眼レンズを使うことで、より高い倍率を得ることができます。
5. セレストロン StarSense Explorer DX 130AZ
画像提供:セレストロン
口径:5.11インチ(130㎜)|光学設計:ニュートン反射鏡|有効倍率:307倍|総重量:18ポンド(8.16kg)|マウントタイプ:経緯台
長所
✔軽くて丈夫
✔セットアップが簡単
✔星のアライメントの必要がない【天体自動導入】
✔見たい天体を提案してくれる
短所
✖鏡筒の位置を手動で調整する必要がある
✖平均的な品質のマウント
セレストロンのStarSense Explorerブランドの望遠鏡は、現代のテクノロジーを駆使して、初心者でもほとんど問題なく天文学を楽しめるようになっています。スマートフォンを使って夜空をスキャンし、数分で測定を行うことができます。
まず初めに、スマートフォン(望遠鏡に装着)にStarSenseアプリをインストールして起動します。夜空をスキャンすると、現在観測可能な天体(星、惑星、銀河、星団)のリストが表示されます。目標を設定すれば、その方向に向かってガイドしてくれます。あとは観察するだけです。
セレストロンのStarSense Explorerには、口径3インチの屈折式、4インチの屈折式、4.5インチ、5.11インチの反射式の4種類のバリエーションがあります。より高い集光力を求めるなら、こちらの5.11インチ口径の「StarSense Explorer DX 130AZ」がお勧めです。
この望遠鏡には、25㎜と10㎜の2本の接眼レンズが付属しており、倍率はそれぞれ26倍と65倍です。
4. セレストロンInspire 100AZ Refractor
画像提供:セレストロン
口径:3.9インチ(100㎜)|光学設計:屈折式 |有効倍率:241倍|総重量:19.84ポンド(9kg)|マウントタイプ:経緯台
長所
✔設定が簡単で使いやすい
✔地上と天空の両方を見ることができる
✔付属品が充実している
短所
✖光学収差【像の崩れ】が大きくなることがある
セレストロン Inspire100AZは、そのシンプルさと使いやすさ、そして他の入門用望遠鏡にはない付属品の豊富さから、初心者に最適な望遠鏡です。
光学系のものは、月面上のいくつかの興味深い特徴を明らかにするには十分な性能を持っていますが、惑星については平凡な視界しか得られません。それでも、適切な条件の下では、アンドロメダ銀河やオリオン大星雲など、最も明るい深宇宙の天体を観察することができます。
付属品には、快適に観察できる1.25インチの直立像90度の星空対角線、20㎜と30㎜の2本の接眼レンズ、接眼レンズ内の目標を素早く中心に置くための赤い点のファインダー、LEDフラッシュライト、一体型スマートフォンアダプターなどがあります。
3. ミード Infinity 102 AZ
画像提供:ミード
口径:4インチ(102㎜)|光学設計:屈折式|有効倍率:204倍|総重量:12.2ポンド(5.5kg)|マウントタイプ:経緯台
長所
✔使いやすい
✔頑丈で軽量
✔ポータブル
短所
✖GoToシステムが搭載されていない
✖遠距離天体の観測には不向き
✖焦点距離が速いため、光学収差が発生する
ミードのInfinity102 AZは、この価格帯での品質の高さから、アマチュア天文家の間で人気の高い製品です。この望遠鏡は口径4インチの対物レンズを搭載し、焦点距離がF5.9と速いため、月などの明るい対象を観測する際には周辺部で光学収差が発生します。
Infinity102は、入門用望遠鏡として広視野観察に適しています。また、日中の地上観望にも使用できます。マウントは十分に頑丈ですが、観測中に振動が発生して視野が狭くなることがあります。その場合は、トレイに重りを追加することで対応できます。
この望遠鏡には、焦点距離26㎜、9㎜、6.3㎜の3つの接眼レンズと、それぞれの接眼レンズの倍率をさらに上げる2倍のバローレンズが付属しています。また、電池式の赤い点のファインダーを搭載しており、望遠鏡を目標物の方向に向けることができます。
収差を除けば月面を公正に観測することはできます。また、木星の雲や土星の環など、ほとんどの惑星をきちんと見ることができます。遠距離天体の観測には適していません。
2. スカイウォッチャーDobsonian 8-inch Traditional
画像提供:スカイウォッチャー
口径:8インチ(203㎜)|光学設計:ニュートン式|有効倍率:406倍|総重量:45ポンド(20kg)|マウントタイプ:ドブソニアン
長所
✔セットアップが簡単
✔コストパフォーマンスに優れている(大口径でありながら低コスト)
✔遠距離天体の観測に最適
短所
✖非常に重い
✖GoToシステムが搭載されていない
✖コリメーション(微調整)が必要
ドブソニアンは「集光器」と呼ばれ、コンパクトで持ち運びやすく、一般向けの安価な望遠鏡です。独自の設計により、他の設計に比べてより多くの対物レンズ径をより安価に得ることができます。
対物レンズの直径が大きく、持ち運びに便利なコンパクトサイズなので、集光力が必要な遠距離の天体(銀河や星雲など)の観測や、汚染の少ない場所での観測に適しています。ただし、重さはかなりあります。
この製品を、初心者に最適なドブソニアン望遠鏡として選びました。8インチ(203㎜)の主鏡は、地球から遠く離れたかすかな天体の観測に最適です。最大有効倍率は406倍で、ここで紹介した他の望遠鏡に比べて格段に高くなっています。
1. セレストロンNexStar 5SE
画像提供:セレストロン
口径:4.92インチ(125㎜)|光学設計:シュミットカセグレン式|有効倍率:295倍|総重量:17.6ポンド(8kg)|マウントタイプ:コンピュータ制御式経緯台
長所
✔素早く組み立てられる
✔ポータブル
✔コンピュータ制御のGoToシステム
✔天体写真撮影の入門に最適
短所
✖やや高価
セレストロンNexStar 5SEは、初心者が所有できる最高の望遠鏡と言えるでしょう。この望遠鏡の5インチの主鏡は、木星の特異な大気の特徴や土星の環などを観察するのに十分な性能を持っています。
さらに、適切な大気条件の下では、メシエ13番星団の個々の星から、地球から3,100万光年離れたワールプール銀河まで、何百もの遠距離天体を見せてくれます。
NexStar 5SEは、セットアップが簡単で、完全なコンピューターシステムにより、ほとんど手間をかけずに望遠鏡を操作することができます。また、NexStar+と呼ばれる手持ちのコントローラーが付属しており、広大な夜空を探索することができます。約4万個の天体データベースから観測したい天体を選ぶことも、夜空で最も目立つ天体に向けて指示を出すこともできます。
他のシュミットカセグレン式望遠鏡と同様に、NexStar 5SEも携帯性に優れています。セットアップ全体の重量は17ポンドをわずかに超える程度です。この望遠鏡は、いくつかの小さなパーツに分解して、簡単に持ち運ぶことができます。
最も高価なモデル:アストロフィジックス92mm F6.65 Stowaway
画像提供:アストロフィジックス
口径:3.62インチ(92㎜)|光学設計:屈折式|有効倍率:360倍|総重量:7.1ポンド(3.2kg)|マウントタイプ:赤道儀|希望小売価格:3,590ドル
長所
✔軽量で持ち運びに便利
✔天体写真撮影に最適
短所
✖高価
初めての望遠鏡にもっと高価なものをお探しなら、アストロフィジックスの92㎜ F6.65 Stowaway望遠鏡がお勧めです。アストロフィジックスは、その品質と職人技で知られる、ハイエンドの望遠鏡と付属品の製造ブランドです。
この92㎜ F6.65 Stowaway望遠鏡は、軽量でコンパクトな屈折式で、収納式の鏡筒を採用しているため、長期の実地見学でも持ち運びが容易です。画像の鮮明さを向上させ、歪みを最小限に抑えるオプションのフィールドフラットナーレンズが付属しています。また、高度なバローレンズや太陽電池フィルターを追加で購入することもできます。
これまでに紹介した望遠鏡との最大の違いは、ドイツ式赤道儀(GEM)を採用していることです。赤道儀は、見かけ上の日周運動(天空を横切る天体の1日の動き)と正確に同期して回転し、地球の自転を補正するように設計されています。観測や長時間の天体写真撮影の際に、夜空の星を追いかけることができます。
しかしながら、赤道儀は他の望遠鏡の架台に比べて高価で複雑な構造をしています。赤道儀は大型望遠鏡の経緯台に取って代わられることが多くなっています。
よくある質問
月や惑星を見るのに最適な望遠鏡は何ですか?
月や太陽系内のほとんどの惑星は、口径2.7インチ(70㎜)以上の望遠鏡で観測できます。ただし、惑星をより詳しく観察するためには、口径5インチ(127㎜)以上で、できるだけ倍率の高い望遠鏡が必要となります。
さらに口径の大きな望遠鏡(8インチ以上)を使えば、遠くの天王星や海王星をより鮮明に覗くことができます。人気のある機種を3つご紹介しましょう。
・オリオンSkyScanner 100㎜(反射式)
・セレストロン Omni XLT 114㎜(ニュートン式)
・スカイウォッチャー 8 inch Collapsible Aperture(ドブソニアン)
自宅で使える最強の望遠鏡は?
上級者で、家庭用に(ご紹介した)初心者用の望遠鏡よりも、もう少し高性能な機器をお探しの場合は、口径や倍率の高い望遠鏡を選ぶと良いでしょう。
セレストロンNexStar 8SEは、主鏡口径が8インチ(203.2㎜)で、倍率が81倍となっており、家庭用としては最も高性能な望遠鏡としてお勧めできます。なお、上級者向けの望遠鏡は入門者向けの望遠鏡よりも高価であることをお忘れなく。
子供用の望遠鏡にはどんなものがありますか?
子供用の望遠鏡も、プロ用の望遠鏡と大きな違いはありません。軽くて使いやすく、パワーが弱めに設計されているだけです。
10歳以上の子供に最適な望遠鏡は、セットアップが簡単で、同時に近くの天体を捉えるのに十分なパワーがあるものです。代表的なものとしては、オリオンFunScope 76㎜、ジースカイヤー 70㎜ Telescopeなどがあります。
天体写真撮影の初心者に最適な望遠鏡とは?
天体写真は、単に天体を観察するだけではなく、ちょっとした工夫が必要です。第一に、大気汚染の少ない地域に簡単に持ち運べる望遠鏡が必要です。初心者であれば、セレストロン NexStar 5SEやセレストロン Astromaster 130EQなどで天体写真を撮ることができます。
しかし、上級者には、空を横切る星や他の天体を正確に追跡できる望遠鏡が必要です。それは、望遠鏡に赤道儀を使用することで実現できます。