ユーザーはプライベートな会話を楽しむための、無料のメッセージアプリを利用する頻度がますます多くなってきています。しかし、だからと言ってメッセージアプリがビジネスに向いていないというわけではありません。それどころか、AIチャットボットは、質の高い見込み客獲得のためのすばらしい機会を提供してくれるかもしれません。
調査によると、アメリカ人の大多数が月に1つもアプリをダウンロードしていないことが分かっているので、おそらく、アプリが見込み客獲得の解決法にはならないことを認めなければいけません。オンライン上で過ごす時間のうち、モバイルアプリを使っている時間は57%だというデータはありますが、それは単にFacebook Messenger、WhatsAppなどといったメッセージアプリを使っているだけなのです。しかし、ユーザーがプライベートなメッセージアプリに閉じこもっているなら、そういった人たちにマーケティング担当者は入る余地がないのでしょうか。そこで考えて欲しいのが、チャットボットによる見込み客獲得です。
チャットボットという言葉は、最近ではよく耳にしますが、そもそもチャットボットとは何でしょうか。人間の会話を模倣して人とコミュニケーションするように設計された人工知能(AI)を指します。 代表的なものとしてSiriはチャットボットですが、クリックすると「今日はどのようなご用件でしょうか。」と尋ねてくる小さなウィンドウもチャットボットなのです。
メッセージングはこれまで以上に人気です
少し前までは、FacebookやTwitterでプライベートメッセージを送ることができる機能は、サイトやアプリを使う主たる目的に付随していた便利なおまけ機能でした。ケータイがあればメッセージもメールも送ることができましたし、そして電話をかけることもできたのに、これ以上どんな選択肢が必要だったのでしょうか。
それが、こんなにも必要なツールになるとは夢にも思っていませんでした。2009年にJan Koumが生み出したWhatsAppによって、メッセージアプリ革命が起こりました。これはスマホに登録されているアドレスに一斉にメッセージを送信する簡単な方法としてサービスは開始しましたが、すぐに友人同士が個人的なメッセージをやりとりする方法として飛躍を遂げました。 2014年までに、このアプリは4億5000万人のユーザーを誇り、毎日100万人単位でユーザーが増え続けました。スマホのメールは割高で、Skypeは使いにくかったので、日常的なやりとりをするためのツールとして世界中の人々がWhatsAppが飛びつきました。 Facebookは2015年に「Messenger」を発表し、急いでWhatsAppの後を追いました。
メッセージアプリの会話は、ソーシャルメディアに投稿する内容とは違って個人的な内容であり、画像やGIFを使うことができたので(当初スマートフォンではまだ利用することができませんでしたが)、メールを送るよりも便利でした。メッセージアプリのユーザーは世界中で約50億人いることから、メッセージングアプリは黄金時代に入ったと言えるでしょう。
ブランドにとってどんな意味があるのか
ユーザーがメッセージングアプリをプライベートな会話目的で利用しているなら、ブランドは手を引かざるを得ないと思われるかもしれません。しかし、そうではないのです。多くのブランドが、メッセージアプリを通じて、顧客にアプローチする方法で提供する方法を見つけています。
もちろん、1日24時間キーボードに張り付いて顧客とやりとりするカスタマーサービス担当者を大量に雇用しても、事業の拡大には結び付きません。貴重な顧客の意見を吸い上げるだけでなく、同時に何千もの相手と会話をすることができるチャットボットを導入しましょう。
例えば、顧客にアプローチする新しい方法を探していた化粧品小売のSephoraは、メッセージングアプリKikと提携して、顧客にメイクアップやスキンケアの秘訣、チュートリアル、製品レビューを提供するチャットボットを作成しました。 Sephoraは、来店予約をサポートする2つ目のチャットボットを導入し、顧客がアップロードした顔写真を用いてAIが肌の色を分析してオススメの商品を紹介するSephora Color Matchサービスを使用するためにFacebook Messengerと提携しました。
このチャットボットの導入は功を奏しました。 Martech Todayによると、チャットボットを使用した顧客は、使用していない顧客よりも50ドル多く購入しており、チャットボットの導入後は11%の予約数の増加が見られました。
チャットボットが見込み客の獲得に大きな違いを生む
顧客が販売員に声をかけ、営業時間と商品の在庫の有無について質問したとします。販売員がこれらの質問に丁寧に答え、顧客の購入につなげていければ理想的です。
今度は、販売員が数百万の顧客からの質問に一度に対応し、その質問に関してデータを保存し、顧客の購買志向を記憶し、気に入ってもらえる可能性のある他の商品を紹介し、顧客が最もよく尋ねる質問の種類をまとめて、将来のマーケティング戦略や販売戦略をよりよく準備するのに役立てられるという状況を想像してみてください。
これがチャットボットの力です。彼らは質問に答えるだけでなく、質問に関連するデータを使用して、拡大可能で個人向けにカスタマイズされた1対1の提案を行うことで、見込み客を商品の購入へと導くことができます。
チャットボットをどこで使うべきか
Facebook Messenger
AIチャットボットの世界に飛び込もうと思っているのなら、手始めにFacebook Messengerを使うのが良いでしょう。 ユーザー数が10億人を超え、その数がまだ増え続けているFacebookは、非常に高い価値のある見込み客とのコンタクトを逃さないメッセージアプリの1つです。Facebookアプリの「Click to Message」機能は、見込み客とつながるためのスタート地点です。
ClickZのMarcela de Vivo氏によれば、Facebookチャットボットを設定してくれるツールがいくつかあり、チャットボットの作成をわかりやすい手順を提供してくれるのでプログラマーでない人でも導入可能だとしています。Chatbuel、Chattypeople、Botsifyあたりがお勧めだそうです。
SMSSのブログによれば、Click to Messageの最も優れた機能の1つは、チャットが開始される前に、見込み客かどうかを見極めるための条件を満たす質問を投げかけられることです。見込み客を特定した後は、AIチャットボットはそういった見込み客を顧客へと変えるための情報を提供していきます。電子書籍、割引クーポン、無料トライアルなどを提供することは、見込み客を商品購入に導くための方法論の一つです。最後に、Sephoraの成功例からもう一つのヒントを得るとすると、来店予約が簡単にできるチャットボットを設定することでしょう。
ウェブサイトとランディングページ
多くのウェブサイトやランディングページでチャットボットの導入が増えてきていることにもうお気づきかもしれません。チャットボットはウェブサイトの標準機能になりつつあります。顧客がリンクをクリックして情報を探しに来たら、ウェブサイトに記載してあるテキスト内容よりも詳しい情報の探索をチャットボットは可能にしてくれるのです。
最近、@Landbot_ioの共同設立者でCMOであるFran Conejos氏は、同社のライブチャットに関する見込み客の獲得数を増加させる方法を調査しようとしていました。そこで、システムのバグによって、ユーザーが閲覧する際にはチャットボットが必ずフルスクリーンで表示されるようになっていることに気付きました。そして驚いたことに、図らずもユーザーにチャットを強制することになっていた設定だと、当初想定していた画面の角に小さなチャットボットのウィンドウを表示する設定よりも、ユーザーのコンバージョンが4倍向上していたことが分かったのです。
顧客にチャットを強制することに興味はないかもしれませんが、このハプニングによってチャットボットは見込み客を獲得し、チャットをした顧客はチャットを楽しみ、サービスに満足しているということがわかりました。 de Vivo氏によると、ウェブサイトにチャット機能を追加したり、チャットボット中心のランディングページを作成する場合に最も重要になってくる要素は「計画」です。
「チャットボットの本質は、時間の経過とともにより多くの情報を得ることなので、オリジナルのボットを開発する時にはこのことを念頭に置いてください。顧客に関する詳細な情報は、セグメント化されたマーケティングキャンペーン、商品やサービスの紹介、より高額な商品を勧めるなどを行う時に役立ちます。」とde Vivo氏は解説しています。
大事になってくる質問には、位置情報に関する情報を提供できる郵便番号、商品の好み、過去に購入した商品のレビューなどがあります。
これらの情報から、顧客の問い合わせを予期し、楽しい会話を続けるようにしてください。 AIチャットボットを使って見込み客を獲得するには、日常的で気楽な会話が不可欠なのです。
はたして上手くいくのだろうか?
導入しない理由はないと思います。最近のFacebookの調査によると、チャット後に顧客がブランドの商品を購入する可能性が50%高まり、チャットの向こう側にいるのが人間か機械かどうかは関係ないということが分かりました。
もちろん、今の技術はAIチャットボットに対する熱狂にはまだ追いついていないかもしれません。Tayの一件はまだ記憶に新しいです。マイクロソフトの実験は、思考型チャットボットに10代の少女の発言パターンを真似させることによって学習能力をテストするものでした。この技術はすぐにクリエイターたちを大興奮させましたが、ほどなくしてTayが暴力的で人種差別的なコメントを連発するようになったため、MicrosoftはTayをオフラインにすることを余儀なくされました。
しかし、ほとんどのブランドは、チャットボットが完全に人間のセールス担当者の代わりになるとは思っていません。そうではなく、簡単な機能を備えたチャットボットで、24時間のカスタマーサービスを提供し、そのチャット内容を顧客データに使用して、見込み客に積極的にアプローチするというマーケティングに活用するのです。なので、この記事を読んでもまだチャットボットを使う気が無いのであれば、まもなく時代に取り残されてしまいますよ。
※本記事は、Chatbots could be your secret weapon for lead generationを翻訳・再構成したものです。
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