デジタル製品開発のプロセスにおいて、ウェブアクセシビリティは今や必要不可欠な要素となっています。範囲や実行力は、製品戦略の深さによって変わってきます。法令、規制、ポリシーなど様々な面を考慮したうえで開発され、組織的に実行できるウェブアクセシビリティを進めるには、かなりの努力とリソースが必要になるでしょう。
ウェブアクセシビリティには3つの要素が基礎となって構成されています。コンテンツ、デザイン、そして開発です。より大きなデジタルアクセシビリティのプロセスの中で、これら3つの要素を見ていきます。ウェブアクセシビリティとデジタルアクセシビリティは、産業において交換可能であり、この記事では同じように取り扱います。
簡単な歴史的な概略
デジタルアクセシビリティと最近のアプリケーションについて理解するために、簡潔な歴史的概略を振りかえってみましょう。
1973年
リチャード・ニクソン大統領が調印した「リハビリテーション法」は、「連邦機関によって実施されたプログラム上、連邦財政援助を受けているプログラム、および連邦雇用制度や連邦契約での雇用実施のプログラムでの、障害に基づく差別を禁止する」法律です。これは、より広く国内の対話のアクセシビリティを提唱する最初の大きなステップとなりました。
1990年
アメリカの101回議会で提出された「障碍者差別禁止法」は、1990年に国法となりました。H.W.ブッシュ大統領によって調印されました。「すべての公共の場所において、障害を持つ個人を差別することを禁止する。仕事、学校、公共交通、その他すべての公共物・私設物においても一般の人々に開放する」特記すべきことは、これは単なる法律ではなく、市民の権利をうたったものでした。
「障碍者差別禁止法」は、法の下ではひとくくりに「障碍者」と分類されてしまいますが、具体的には「身体的」および「メンタル的」の両方を取り扱う法律であることが重要な点です。聴覚障害、視覚障害、四肢障害や、車いすを必要とする「筋ジストロフィー」といったものも含まれます。
癌、糖尿病、エイズなどの物理的医療が必要な状態や、うつ病、双極性障害などの精神的なコンディションも、「障碍者差別禁止法」には含まれています。他にも、それぞれの個人の症状によって、日々の生活や仕事に支障がでたり、投薬や身体的・心理的な治療が必要だったり、生活支援のために危惧を使用する場合など障害として認められる可能性があります。
1997年
ビル・クリントン時代のホワイトハウスは、「ワールドワイドウェブコンソーシアム」(W3C)を発表しました。これは、W3Cウェブアクセシビリティイニシアチブ(WAI)として知られています。W3Cは国などで構成されている、国際組織です。この種の機関としては初めて、デジタル上での使用における平等をめざした大変意義のある大きなステップになりました。
1998年
アメリカ議会は、1973年の「リハビリテーション法」を改正しました。「障害者にも電子・情報通信におけるアクセシビリティを確立するよう求める」としました。この改正はリハビリテーション法のセクション508としてよく知られています。今日における、デジタルアクセシビリティの進展は、セクション508の概要とガイドラインに基づいています。
2018年
W3C WAIのいくつかのワーキンググループは、多角的な問題をとらえウェブアクセシビリティに関して検討を重ねています。意見や具体的な項目やガイドラインを発表しています。2018.年6月に発表された最新のとりまとめは、ワールドワイドウェブコンソーシアム ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン バージョン2.1(W3C WCAG2.1)として知られています。
WCAGのチェックリスト
W3C WCAG2.1チェックリストは、包括的な枠組みのためのメソッドや、ウェブアクセシビリティのコンテンツを作成するためのテクニックなどを戦略家、開発者やデザイナーにむけて提供しています。
アクセシビリティガイドラインは、3つのレベルを適合規格として定義しています。A,AA,AAAにそれぞれ分けられます。これらは頻繁に言及されます。コンテンツの内容、製品の必要条件、そしてほかの要素によって、組織は一つかそれ以上のレベルに適合するようになっています。それぞれの成功基準が当てはまる適合レベルを定義しています。
成功基準チェックリストも、「基準の理解」セクションがあります。これは、具体的な例を示し、推奨するソリューションを提示しています。こうしたツールを使うことによって、WCAGを使用する際にわかりやすくなっています。
ウェブアクセシビリティの4つの原則
WCAGのすべてのメソッドとテクニックにかかわってくる4つのウェブアクセシビリティの原則があります。それは、認知できること、使用できること、理解できること、健全であることです。5つ目の原則の適合性については、このパートでは触れません。
アクセシビリティの原則の目的について理解することは、あなたの助けになるでしょう。アクセシビリティの原則は、最も効果的で、明確なヒューマンユーザーに対して情報の提供方法を定義します。言い換えれば、人々はメソッドやテクニック、そしてテクノロジーを通して、情報を正しい方法で提供する方法を探しているのです。情報伝達を支援するテクノロジーも含まれます。ハードウェア、ソフトウェアに加えて、障碍を持つ人達がコンピューターにアクセスしたり他の情報伝達テクノロジーの使用をサポートする周辺機器などもこれに含まれます。
原則1 認識できること
情報やユーザーのインターフェイス構成物は、人々が認識できる方法で見えていなければなりません。
この原則は、情報の基本部分と、構成の連続性、色、コントラスト、文脈の関連性、ディスプレイやテキストといったコンテンツの見え方などが問題としてとらえています。
原則2 使用できること
ユーザーインターフェイス構成部分と、ナビゲーションは使用できる状態でなければなりません。
この原則は、ナビゲーションや見出し、ラベル、キーボードだけのナビゲーションなどの要素や、発作などの好ましくない身体的な反応を防ぐ方法に対処しています。
原則3 理解できること
情報とユーザーインターフェイスの使用については、理解できるものでなければなりません。
この原則は、コンテンツを理解する能力に注目しています。構成や言語スタイルなどです。これにはかなり多くの交流における考慮すべき事項があります。ナビゲーションパターンと同じように、フォーカスやインプットといったことにも対処します。
原則4 健全であること
コンテンツは、サポート機器を使用している様々なタイプのユーザーが理解できるように、十分に健全な内容である必要があります。
ウェブアクセシビリティの3つの柱
コンテンツ
ビル・ゲイツの「コンテンツは王様だ」は、1996年に出版された彼のエッセイのタイトルでもあります。デジタルアクセシビリティに関していえば、コンテンツの重要さを過小評価するのは難しいものです。コピーや物語、他の文面による要素も含まれます。
コンテンツの戦略家、コピーライター、マーケティングの専門家たちは、頻繁にコンテンツの作成にかかわっています。組織の大きさや構成によることが多く、その内容は多岐にわたります。
コンテンツのカギとなる構成部分であるコピーは、文体や言語その他の特徴を反映していて、総合的に「言語」のブランドをサポートしています。コピーはある特定のコンテンツガイドラインをフォローしていて、メッセージを明確に理解しやすく伝達するものとして注意深く定義されています。
コンテンツ開発チームは、リサーチの専門家も含まれているでしょう。リサーチの努力は分析を実施してデータの理解に役立ちます。そして特定の改善や編集が必要なコンテンツエリアを指し示します。
コンテンツの作成の際には、開発者チームはWCAGコンテンツアクセシビリティガイドラインと成功基準に沿って進めます。言語、意味、文脈などを包括的に考慮して作成します。
デザイン
デザインは全体的な見た目と、感覚を定義し、UIやナビゲーションエレメントと同じように取り扱います。ユーザーエクスペリエンスチームは、インターアクションデザイナーや、ビジュアルデザイナー、インフォメーションデザイナーなど様々な分野で訓練されたデザイナーを雇用します。
デジタルアクセシビリティの4つの原則のメソッドとテクニックに沿って、デザイナーチームは、より理解しやすくビジュアル的にも交流のための解説にも使いやすいコンテンツを作るために、開発者チームと協力します。
明確で直感的に使用できるインターアクティブパターンは、ナビゲーションとインフォメーションのフォローを高めるために、確立されています。このプロセスは、特にアクセシビリティにおいて考慮しなければならない人たちにとっては、恩恵を与えます。これは大きなウェブシステムの中では特に重大な役割があります。医療の診断や、経済におけるテクノロジーなどの複雑な情報プロセスを要するも野にとっては、大変重要なものです。
開発
開発チームはウェブアクセシビリティの3つの要素を完成させます。適切なコーディング方法論とテクニックを使用し、正しいコンテンツのアクセシビリティを確証します。ARIRは(アクセシブルリッチインターネットアプリケーション)は、デジタルツールの組み合わせで、ウェブコンテンツとアプリケーションのアクセシビリティを定義する方法を助けています。
ARIAオーサリングプラクティスは、W3Cによって保持されており、ランドマークや異なった特徴を確認するために追加されたものなど、ナビゲーションに必要な要素を定義することを含みます。
組織の大きさによって、開発チームはフロントとバックの専門家や、データーベースプログラマーや他のエリアの専門家も加わります。アクセシビリティ開発にかかわっているテクニカルチームは、ARIAの方法論についてトレーニングを受けます。
デジタルアクセシビリティの認証
この記事を書いている時点で、W3CはW3C認証のウェブアクセシビリティ認証コースを提供していません。しかし、多くの第3ベンダーがアクセシビリティ認証を提供しています。
企業や組織は、WCAGチェックリストに基づいて、その組織内でのアクセシビリティ認証を実施することができます。適切な認証経験を持つアクセシビリティのコンサルタントを雇用して、それをすることができます。会社の事業によっては、WCAG適合レベルは合致しないかもしれません。
結論
はじめに言及したように、この機論のポイントは、読者にデジタルアクセシビリティを正しく理解をしていただくことです。適切なデジタルアクセシビリティテクニックのアプリケーションは、製品開発サイクルの一部に統合されています。デジタル製品をよりアクセシブルにすることによって、私たちと社会全体がデジタルに取り交わされる情報に関して平等な世界を構築し、デジタル社会での市民権の基礎を確固なものにすることができるのです。