研究者たちは初めて、走査型電子顕微鏡を用いて励起した量子ドットの3D画像化に成功した。この技術は光触媒となる金属クラスタやカーボンナノチューブといったナノレベルの構造物の研究に応用することができる。
量子ドットとは?
量子ドットは半導体を構成するナノメートルの小さな物質であり、研究の発展に伴い急速に発展を遂げている。これらは、植物の成長を促進するフィルムやソーラーパネル、高速データの転送、最新のLCDテレビ、実験的なパッシブ/アクティブ ターゲティングを用いた特定の細胞の色付けや生物医学分野での蛍光ラベリング技術への応用が期待されている。
今回、研究者らはそんな量子ドットの走査型電子顕微鏡を用いた3D画像の作成に初めて成功した。この技術は今後、ナノレベルの構造物の研究に応用することができる。
研究のカギとなるのは”欠陥”
量子ドットの発展と動態は完全には解明されていない。半導体は無数のナノ粒子から成り、製造の過程で構造に欠陥が生じることもしばしばである。一見すると同一に見えるドットも電子などの細かい構造を見ると一つ一つ異なる構成をしていることがある。材料科学の分野では欠陥は面倒ごととして扱われることが多いが量子ドットの場合は違う。
量子ドットの応用はドーピングを用いて行う。欠陥により既存とは違った特性の量子ドットが得られれば半導性や電気構造などを改良することができる。この欠陥のメカニズムをより解明するために、イリノイ州立大学の研究者らは初めて、励起した量子ドットの3D画像化を試みこれに成功した。この研究により量子ドット工学はさらに発展していくだろう。
どのように画像を得たのか?
3D画像を得るために、研究者らは単分子吸収型走査型電子顕微鏡(以後SMASTM)を用いた。これはレーザー分光器の機能と走査型電子顕微鏡の高い空中分解能力を合わせ持っている。この技術により、電気的に励起された量子ドット視覚化のために、ナノ粒子個々の画像をレーザー中に抽出可能となった。
研究者らはレーザーによって励起された電気的構造の画像スライスを様々な方向から得るために量子ドットをSTMの(鋭く薄い金属ワイヤの)先端の表面を圧延した。これらのスライスはその後、3D画像作成のために互いに接着され再構成される。
詳細について
研究者らは量子ドットをSTMの表面に転がし、励起状態を撮影するのに2つの機能を用いた。このため、電気的に励起した量子ドットの電気密度を様々な角度から撮影することができた。彼らは励起した個々の量子ドットをSMASTMの表面に圧延し、どのように限2局した部位での欠陥を撮影するのか示した。かれらは実験でみられた多様な励起状態の画像が数学的にモデル化できると示すために量子ドット欠陥モデルの密度汎関数理論をも用いた。
今後の応用に期待
この技術は、実験内ではカドミウム、セレン、硫化亜鉛の量子ドットに対してのみ使用していたが他の材質の物質にも応用可能である。今後は、カーボンナノチューブや光触媒金属などのその他のナノ構造の解明への応用が期待される。さらに、このチームはこの技術の単分子トモグラフィーへの発展を試みているが、それ以前に圧延と走査が再操作や位置の変更中にナノ粒子を傷つけないか確認している。
さらに、励起状態の定量的モデリングでは、いくつかの欠陥のある量子ドットの大きさを実験の対照として測定しておく必要がある。今後、単分子トモグラフィーがより鮮明な画像をもたらしてくれることに期待したい。