・研究者達は、自由空間において電力の送電を可能とする独自のシステムを開発した。
・当システムにより、コンセントから少し離れた場所にある携帯電話へ、ワイヤレスで充電できる可能性が生まれた。
・当システムは、特定の振幅と位相で信号を伝達することにより機能する。
無線技術にけるアンテナは、情報のみならず電力伝送も含め大きな役割を担っています。しかし、無線通信システムは既に開発されていますが、無線電力伝送技術の開発はまだ初期段階にあります。
共振器や周辺素子の形状を最適化することで、より高い効率で電力を伝送する新しい方法を見つけるため、多くの研究が行われてきました。実際、最近になって大きな進展があったのです。
国際研究チームは、電力伝送効率を高め、長距離ワイヤレス充電を可能とする新しいコンセプトを実証しました。実現すれば、すべての携帯電話用電子機器、医療用インプラント、さらには電気自動車において有益なものとなるでしょう。
どのように実現したのか?
電磁波を通して長距離に十分なエネルギーを(電線を使わずに)伝えることは非常に難しいことです。しかし、研究者達は、干渉メカニズムによってもたらされる波のインピーダンスの局所的な制御に依存する新しい技術を開発しました。
特定の位相と振幅を持つ信号(後方伝搬)で結合導波路をコヒーレントに励起することで、受信アンテナ効率を高めることが可能であると示したのです。この信号はユニークな干渉パターンを形成し、受信側で最適な波動インピーダンスを提供し、自由空間を伝わる電力量を最大化します。
その意味は?
無線電力伝送の大きな問題点は、いわば、アンテナは放射を吸収せず、むしろ放射の一部を放出することです。この2つの過程は通常結合定数を持ち、この定数が同じであるとき、最大量のエネルギーが伝達されます。
この結合定数を安定させるために、研究者はインダクターやコンデンサーなど、設定可能な回路モジュールをいくつか組み込みました。さらに、結合定数のアンバランスを抑制するため、特定の振幅と位相の信号を転送しました。この信号は、負荷を変更することなく、波の伝達を改善するように設定することも可能です。
デモンストレーション
画像は送信アンテナ(右側)が電波(ラジオ周波数)を放射しているところです。受信側のアンテナは、同軸ケーブルでバッテリーへエネルギー(青色で表示された波)を送ります。回路から放射される赤い波は、送信されるエネルギー量を最大化するように干渉します。
研究チームは、この原理を証明する理論モデルを全波数値シミュレーションで開発しました。信号発生器と2本のアンテナを使い、マイクロ波電力を40cmの距離で伝達します。さらに同軸ケーブルで受信アンテナと回路(電池のようなもの)をつなぎます。
その結果、結合定数が大きく異なる場合でも、最大限のエネルギー転送を実現できることを実証しました。研究者達は、この技術を用いることで、変化の激しい環境下においても効率的な無線エネルギー伝送システムを開発することができると述べています。
しかし、ワイヤレス充電装置を製造しているWitricity社は、このコンセプトの利点はまだ検証されていないとし、実装を試みる価値があるかどうかは、まだわからないと述べています。