夏と言えば音楽フェスや花火、スポーツ観戦をはじめ各種イベントが盛りだくさんですが、イベントと言えば欠かせないのが「チケット」の存在。
人気イベントのチケットなら数か月も前から手配していないとゲットできなかったり、何よりイベント当日に近づけば近づくほど、オークションサイト等で「値上がり」していくのが常識だと思っていませんか?
でもこうした「チケットの常識」は今後大きく変わるかもしれません。
東京工業大学グローバルリーダー教育院(AGL)リーンローンチパッドプログラム発、株式会社KOUVASが運営する「チケットバケット」は、どれだけ直前期であってもチケットを「定価以下」で取引できるP2P型プラットフォームサービスです。
つまりチケットを買いたい人と売りたい人が「チケットバケット」上で取引するのですが、同サービスではチケット価格を釣り上げるいわゆる「ダフ屋」行為は禁止されています。
本当にチケットが欲しい人から見ればかなり理想的なサービスですが、今後チケットの流通市場に大きな変革をもたらすかもしれない「チケットバケット」の千條氏にお話をうかがいました。
「チケットバケット」のはじまり
――「チケットバケット」は売り手側にも「定価以下」でチケットを売るインセンティブが設定された面白い仕組みですが、サービスを思いつかれたきっかけを教えてください。
もともとは東工大の授業の一環で、プロ野球ファンや嵐ファンの方へインタビューをしたことがきっかけです。
ジャイアンツ戦の前売りチケットの発売日には、早朝から1,000人以上もの人が行列を作り抽選会に参加します。でも抽選券を引いた人のうち人気の外野ライト側の席を手に入れられる人はごく僅かで、早朝から並んでもほとんどの人は、チケットを手に入れられず帰っていく――このように「熱いファン」の方たちがチケットを手に入れられない一方で、ネットオークションには定価の数倍での出品が多くあるという状況を目の当たりにしました。
「熱いファンなら高値でもチケットを買うのでは?」と思うかもしれませんが、球場やコンサート会場に何度も足を運び、ファンの方々の話を聞いてみると「法外な値段では買わない」「高値で出品しない」という強いポリシーを持っていることもわかってきました。本当に球団やアーティストを応援したいという方は、ネットオークション等で高値でチケットを売りさばく「ネットダフ屋」と呼ばれる人たちに嫌悪感を持っているんですね。
また急な予定が入り公演に行けなくなった時も、自分の代わりに会場を盛り上げ、しっかり応援してくれる「熱いファン」に譲りたいと考えていることもわかりました。
そんな「熱いファン」たちの思いに応えるために作ったのが、定価取引限定のチケット流通サイト「チケットバケット」です。
「チケットバケット」の開発環境について
――「チケットバケット」の開発言語や開発期間、開発チームについて教えてください。
開発にはRuby on Railsを用いています。授業の最終発表までに、動くものを作る必要があり、「とりあえず動く」プロトタイプは2週間程度で完成させました。
授業が終了した後も、開発を継続することを決め、現在ではエンジニア以外のメンバーもRuby on Railsを勉強し、3名体制で改善を重ねています。
――実際の開発の場で意識されていることはありますか?
追加したい機能は多くあるのですが、実装を始める前にメンバー内で「どの機能がユーザに求められているか?」等議論し、優先順位のコンセンサスを取っておくことを大事にしています。
チケットバケットの仕組み
――チケット保有者が「定価以下」でチケットを売る仕組みについて詳しく教えてください。
チケバケは絶対に「定価以下」での販売ポリシーを設けているほか、定価で譲ってくださるユーザーの皆様には、次回のチケットを優先的に手に入れられる「ファストパス」をお渡ししています。
具体的には、「ファストパス」を持ったユーザのみが「すぐに落札」することができ、それ以外のユーザは「落札申請」ボタンを押し、出品者にチケットに対する熱意をコメントという形で伝える必要があります。
――ユーザーからの反響はどのようなものが多いのでしょうか?
まだまだ、チケットバケットはシステムの検証段階ではありますが、野球ファンの皆様とのインタビューでは、「アイデアが面白い」、「ネットダフ屋からは買わないけど、このサービスなら購入したい」という声をいただいております。
――仮に「チケットバケット」で定価以下でチケットを手に入れられるなら、それをネットオークションにかけ直す「転売ヤー」のような存在が出そうですよね?
我々のサービスの最終的な目的は「ファン同士が行けなくなったチケットを定価で譲り合う」よくある日常のやり取りをwebサービスとして提供することです。チケットがたくさん取り扱われるようになることで、前述の「ファストパス」の仕組みが機能すると考えております。
またファンはコミュニティ内でしか「ファストパス」を使うことができないので、「転売ヤー」にとって利用は難しいサービスになっていると考えております。
――今後の「チケットバケット」の展望を教えてください。
現在は、「巨人戦外野ライト席」のチケットを中心にチケット運用を初めております。今後は野球、ライブなどより多くの様々なファンの皆様にご利用いただけるようなサービスを目指して参ります。
「チケットバケット」の存在は、高騰したチケットを購入することが「当たり前ではない」ことを改めて気づかせてくれます。
チケットを「欲しいと思う人」のところに「適切に」届けること――こちらの「当たり前」が実現した時、私たちはもっと人気イベントを身近に感じられるようになるでしょう。
今後の「チケットバケット」の活躍が楽しみですね!
【チケットバケット】