住所の表記に必然性はあるのか?
いきなりですが、「住所」ってなんのためにあるのでしょう?
配達物・郵便物を届けるため、他人に位置情報を伝えるため、行政的な住民管理のため――いずれもうなづける理由です。
しかし「東京都新宿区1丁目……」のような住所の表記の形式に、どれほど必然性があるか、と問われればいかがでしょうか?
まだ「東京都新宿区1丁目……」なら「あのあたりかな?」という見当がつく人も少なくないと思いますが、「北海道常呂郡佐呂間町……」と言われても日本中のほとんどの人がその場所をイメージできないのではないでしょうか?
住所の表記には国際的な統一規格があるわけでもなし、あまりこの住所の表記に必然性があるようには思えませんね。しかしその割には長いのです……。
さらに、世界の50%の人々は住所がないところに住んでいるそうです。日本に住んでいる私たちからすれば想像もできないことですが、発展途上国ではきちんと区画整理された郵便システムがあるとは限りません。
世界に住所をつけ直す「what3words」とは?
こうした状況を受けて、世界中のあらゆるエリアに新しい住所名を付け直している「what3words」というスタートアップがいるそうです。
その新しい「住所名」の割り振り方はとてもシンプルです。
まず地球を3メートル四方のエリアに分割していきます。そのエリアの総数は57兆エリアにもなるそうです。この57兆エリアに対して、2万語からなる単語を3つ組み合わせた「住所名」を割り振っていきます。
百聞は一見にしかず。まずは渋谷ハチ公像の「住所」を「what3words」で見てみましょう。
「homework.pints.mental」という「住所名」が表示されました。さらに上野公園の西郷隆盛像を見ると、
「sprays.harsh.loosed」という「住所」が出ました。もちろんこの「住所」は世界に1つしか存在しない固有の住所となります。世界中のどこからでも「sprays.harsh.loosed」を「what3words」上で検索すると、上野の西郷像のある位置が検出されます。
ちなみにこの単語の割り当てや組みあわせはアルゴリズムによって行われていますので、意味はありません。
この「what3words」はすでに企業・機関から活用され始めており、インドのソーラー電力会社は住所のない地域へソーラー電力を届けるために活用しているそうです。また国連は発展途上国の災害支援に、モンゴルの一部の郵便局はこれまでの住所を使うのをやめ「what3words」の「住所」に基づいた郵便システムに切り替えたそうです。
もし住所欄にこの3単語だけを書いて郵便・配達物が受け取れるならかなり便利になりますね。一方で、住所には長い歴史性やその土地がもつキャラクター性・ブランド性が含まれることもあります。
さすがに「what3wordsの住所表記」に世界が一本化されることはないかもしれませんっが、その合理性・簡便性から日本でも各シーンで普及していく可能性は十分にあるのではないでしょうか。
▼what3words
(※本稿は「This Startup Is Renaming
Every Place On Earth」を参考にしています)