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なぜ人々は「ポケモンGO」にのめり込むのか?―UXデザインの視点から

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ポケモンGOが米国、豪国、ニュージーランドを皮切りに配信されたのが先月6日のこと。まだ1か月ほどしか経過していないのに、この存在感はすごいですね。

 

ここらでポケモンGOをプレイされている方も、そうじゃない方も冷静にポケモンGOを見てみることにしましょう。ポケモンGOに関する報道もずいぶん過熱していましたが、客観的な事実としては、

 

・ローンチから2週間で3000万ユーザーが約3500万ドル(約35億円)のアプリ内課金

・平均的なプレイヤーはFacebookよりも50%多くの時間をプレイ

・1日の売上はApp Storeのみで160万ドル(1.6億円)、Androidを含めると290万-390万(2.9億-3.9億円)の売上

 

があります。

 

これだけ多くの人を「のめりこませる」ポケモンGOには、優れた「UX(ユーザー・エクスペリエンス)」があるとしか言いようがありません。クリエイターやデベロッパーたるもの、そのUXを考察して自らの血肉としてみてはいかがでしょうか?

 

なぜポケモンGOのUXは優れているのか?

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ポケモンGOの成功の要因は、下記3つの要因が考えられます。

 

・ゲーム自体の面白さ

・「ポケモン」というブランド

・これら二つをNianticがうまく融合させ、良質で中毒性のあるUXを創出

 

では、これらの要因をポケモンGOはどのように成し遂げたのでしょうか?

 

導入部のゲームデザイン

 

まず最初の成功はゲーム導入部の設計に見られます。つまり新規ユーザーが経る「アプリのダウンロード→アカウント設定→ゲーム説明(コアループとも言われる)」の部分です。

 

この導入の部分をNianticはパーソナライズできるアバターをユーザーに作らせることで、ユーザー自身に「ゲーム内でユーザーはどういう立ち位置なのか?」を認識させ、ゲーム内世界を理解する場として利用しています。

 

この導入部のUXは多くのゲーム業界に共通してみられる特徴を持っています。

 

・GoogleのOne Click sign-onで簡単に登録できる

・ゲーム説明を「物語形式」で進める(ウィロー博士のセリフによって語られる)

・ミニゲームのような感覚で、キャラクターの設定/パーソナライズができる

・最初のポケモンをユーザーに捕獲させることで、ゲームへの導入、コアループを進み完了させる意義をもたせ、ゲーム内の機能の説明も行う

 

ユーザーを右脳/左脳でのめりこませる

 

導入部の次にゲームデザイナーが達成しなければならない課題は、ユーザーに面白さだけでなく意味のある(中毒性のある)プレイ体験を提供することです。

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ポケモンGOは多くのゲームが用いているテクニックを用いて、こうした体験を提供していますが、そのテクニックとは下記です。

 

・ユーザーのアクションに対して「ランダム」に反応すること

ポケストップで入手できるアイテムはランダムですし、レアポケモンの出現もランダムです。こうした「ランダム性」は、ユーザーをゲームにのめり込ませるシンプルなテクニックです。

 

・疑似的なスキルをもたせること

疑似的なスキルに基づいたミニゲームはユーザーに「達成感」をもたらします。ポケモンGOではポケモンの捕獲やレベルアップという形でユーザーに達成感をもたらしています。レアポケモンを捕まえることはユーザーにより大きな達成感をもたらしますし、またゲームに時間を割くことの「正当性」をもたらすのです。

 

・プレイヤーの成長があること

ポケモンGOのレベルアップやゲーム達成度に応じて与えられるメダルは、プレイヤー個人としての「成長」を提供しています。

 

・不完全さがあること

ポケモンGOでは、プレイヤーの成長度合いによって制限されているゲームコンテンツやロックされている機能があります(ジムの使用など)。こうしたユーザーの「不完全さ」はさらにゲームを進める動機をユーザーに与えます。

 

・往年のポケモンファンへの「ネタ」があること

ポケモンGO以前からポケモンに慣れ親しんでいる世代に対して、ポケモンの「ネタ」を提供することでより親近感が湧くようになります。

 

・「所有欲」を満たすこと

ジムを乗っ取れたり、ポケモンに固有のニックネームをつけられたり、お気に入りのポケモンを進化/強化できたり、ポケモンをたまごから「かえす」ことができることで、ユーザーはポケモンに対する固有の所有欲を満たすことができます。

 

・ヘルスケア要素

ポケモンGOが他のゲームと異なるのは、ポケモンを探すために「歩く(=運動する)」ことが必要になるヘルスケアな要素があるところです。こうした運動自体をゲーム化してしまう仕組みは、誰しもが歓迎してしまうでしょう。

 

拡散性

 

ポケモンGOにはゲーム内のフォーラムもありませんし、「ツイートボタン」もなければ「Fecebookのフレンドを招待する」機能もありません。

 

その代わりにポケモンGOには、実在する「場所」があります。例えばアイテムが集められる場所やポケモンが出現した場所は、その近くにいるユーザー間でリアルタイムに「あそこでピカチュウが出たよ!」という形で伝播していきます。

 

こうした伝播力はSNSでの拡散力より範囲は狭いかもしれませんが、シェアされた情報の感応度という意味ではSNSとは比べものにならないほど高いでしょう。

 

現実の世界を反映する

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NiantecはポケモンGOに現実の世界を反映するため多大な努力をしました。

 

・日中/夜の2つのモードを現実世界とリンクさせること

・現実世界の画像をゲーム内で見せること

・ポケモンが自身の生活圏に現れること

・ポケモンを捕獲するミニゲームで現実の世界の背景を入れ込むこと

 

こうした「現実世界」と「AR(拡張現実)」の融合も「のめりこみ要素」の一つとなるでしょう。

 

UIデザイン

 

ポケモンGOは決して完璧なプロダクトではないですし、UIももっとシンプルにできる箇所が多く見られます――ただしこれらの多くはユーザーが過剰なほど登録している状況に起因するものが多いです。

 

しかし往々にして「UIデザインの失敗は、それが洗練されていて、かつ面白さを提供しているのなら許される」ものです。

 

これらのUI上の問題は今度のアップデートで改善されていくことでしょう。

 

まとめ

 

ゲームのプレイヤーは大きくわけて二つに分類されます。つまり課金を重ねてトッププレイヤーを目指す「ガチ勢」と、他のプレイヤーと盛り上がることを重視する「ソーシャルユーザー」です。

 

ポケモンGOはこの両方のプレイスタイルを許容するゲームになっており、どちらかのプレイヤータイプに偏ることなくプレイできるのが、他のゲームと最も異なる点です。

 

それこそ子どもからその両親までそれぞれのモチベーションでプレイできるゲームバランスの良さが、ポケモンGOの最大の魅力かもしれませんね。

 

 

(※本稿は「The UX of Pokémon GO」を翻訳・再編集したものです)

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