・銀原子で作られた原子スケールのトランジスタのサイズは、およそ1ナノメートルです
・おおよそ10 mVの非常に低い電圧を消費します
・この3端子スイッチは室温で作動します。これは未来のアプリケーションにとって大きな利点となります
過去50年で、1つのシリコンチップあたりのトランジスタの数はほぼ18か月ごとに倍増してきました。そして2017年には、シングルチッププロセッサにおけるトランジスタの数は180億以上に達しています。
しかしながら、従来のシリコントランジスタの縮小には限界があります。そして私たちはいま、トランジスタのサイズのさらなる縮小がパフォーマンスに影響を及ぼすという段階にまでさしかかっています。
科学者たちは現在、マイクロエレクトロニクスの新世代を実現するために、新たな技術を探しています。最近、カールスルーエ工科大学の物理学者は単一原子トランジスタの発想を得たということです。これは世界最小のトランジスタで、単一原子の再配置によって電流を切り替えることができます。
これはまったく新しい技術的アプローチで、トランジスタはもっぱら金属を含んでいるために(半導体は含みません)、デバイスは極めて低い電圧で機能することが可能なのです。
サイズと使用電力、構造は?
銀の単一原子トランジスタにおける切替装置のサイズは、おおよそ1ナノメートルです。これはシリコントランジスタのゲート長のスケーリングの限界(5ナノメータトル)よりずっと小さいものです。
現在、IT産業は先進国の総消費電力の10%以上を占めており、データ処理および電子機器による大量のエネルギー消費は、二酸化炭素排出量の増加においてもまた大きな役割を果たしています。
既存の半導体は1000 mVほどの動作電圧が必要である一方、銀の単一原子トランジスタの消費する電力は極めて低く、約10 mVでしかありません。これはトンネル電界効果トランジスタ、マルチゲートトランジスタ、そして0.5 V近くを消費するゲルマニウムのナノデバイスよりはるかに少ない数値です。
これらの単一原子トランジスタは、金属の量子ポイントコンタクトに基づいて開発された3端子の抵抗スイッチです。これらは以下の3つの方法のうちの一つで製造されます
1.走査型トンネル顕微鏡
2.Mechanically controllable break junction (MCBJ)
3.固体電解質ないし水性電解質を用いた電気化学過程
研究者たちはこの研究において、水性電解質内での機械的ないし熱的安定性の高い、原子スケールの銀の量子ポイントコンタクトを実証しました。さらにそれらを独立したゲート電極によって制御される3端子スイッチとして利用しました。
2つの小さな金属接点の間には、一つの金属原子を収容できる小さな隙間があります。研究者たちはこの銀の単一原子の位置を調節するために電気制御パルスを使って回路を閉じました。そして再び原子が取り除かれるときには、この回路は中断されます。
信頼性も高い
このトランジスタは制御された原子の可逆運動によって電流を切り替えます。そして量子エレクトロニクス機器とは異なり、絶対零度付近(-273℃)でのみならず、室温でも機能します。これは将来のアプリケーションにとって大きな利点となります。
原子スケールのポイントコンタクトは直接に接触している領域中には検出されませんでした。またトランジスタの整数量子のコンダクタンスの特性は、電解質中のシリカゲルが原子スケールのポイントコンタクトにおいて電子の輸送に影響を及ぼさないことを示しています。
研究者たちはまた、準固体電解質の粘度を分析して特定の時間の経過とともに変化することを発見しました。しかし、この変化が原子スケールのトランジスタのスイッチング特性に影響を与えることはありません。