・研究者らは、銀河団に存在するダークマターを検出する新しい技術を開発しました。
・この技術では、どの銀河にも属さない数個の星から来る微弱な光を追跡します。
・こうして得た星の光のデータを分析して、ダークマターが宇宙にどのように分布しているかを調べるのです。
・将来的には、この手法を用いてダークマターの正体を明らかにすることができるかもしれません。
ダークマターとは、宇宙に存在する物質の85%を占めると考えられている仮説上の物質のことで、研究者たちは何十年にもわたってその発見に努めてきました。ダークマターは光やその他の電磁波と通してではまったく見えないため、既存の機器では検出することができません。
そのため、ダークマターについて私たちが知っていることの多くは、間接的な評価によるものです。例えば、天文学者たちは重力場による光の屈折を用いている重力レンズを使ってダークマターを監視しています。ダークマターの事実を明らかになればなるほど、私たちの宇宙がどのように形成され、現在どのように機能しているのかについての理解が進みます。
今回、スペインとオーストラリアの天文学者たちは、ダークマターの正体を解明して宇宙におけるダークマターの分布を明らかにするために、NASAハッブル宇宙望遠鏡のフロンティアフィールドプロジェクトで得られたデータを分析しました。
その結果、ダークマターを「見る」ための新しい方法を発見しました。非常に微弱な光を発している星々のうち、ごく一部である「クラスター内光」を利用して、ダークマターが宇宙にどのように分布しているかをマッピングすることができるのです。
ダークマターに沿うクラスター内光
銀河同士が合体したり接近したりすると、一部の星が脱離し、銀河団の中で自由に浮遊するようになります。これらの星は、親銀河とのつながりを断ち切った後、銀河団の質量の大部分、特に暗黒物質が存在する場所にたどり着きます。
これらの孤立した星は、ダークマターに沿って「クラスター内光」と呼ばれる微弱な光を発しています。今回の研究では、このクラスター内光を追跡することで、ダークマターの正確な分布を調べたそうです。
孤立した星もダークマターも、衝突しない存在として振る舞い、ともに星団の重力ポテンシャルに従っているのです。
現在の理解において、ダークマターは他の通常の物質と重力的に相互作用しています。それ以外の相互作用は今のところ検出されていません。しかし、ダークマターが自己作用しているということは、その正体にいくつかの制約があるということになります。
この方法は効率がよい
重力レンズのような他の複雑な技術と比較して、この方法はより効率的です。重力レンズ法が正確なレンズ再構成と分光観測を必要とするのに対し、この方法は深部の像のみで済むからです。この方法を用いれば、より少ない観測時間で、より多くのクラスターを調べることができます。
研究チームは、銀河団の総質量と銀河団内の光の2次元分布の平均的な空間差を示す、修正ハウズドルフ(MH)距離を算出しました。その結果、MH距離は約25kpcであることがわかりました。
衝突しているクラスターでは高温のガスが乱れやすいため、X線ではクラスターの全質量の分布をたどることができない場合があります。今回の場合、クラスター内光は質量分布のトレーサーとして非常に優れていることがわかりました。
研究者たちは、この手法が正確であるかどうかを検証するために、さらに多くのクラスターを調査する予定です。また、2021年打ち上げ予定である、より高感度の装置を備えたNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がもたらしてくれるであろう正確なデータにこの方法を用いて、遠い宇宙にあるもっと暗い星の光について解明することを楽しみにしています。