・木星は太陽系のなかで最も強力な磁場を持つ惑星である。
・双極子磁場と非双極子磁場の両方を持っている。
・このような磁場の形態は、木星の組成、電気伝導度、熱力学的特性の結果である。
NASAの木星探査機「ジュノー」の目的は、太陽系最大の惑星である木星の起源と進化を解明することです。木星の大気を調べるとともに、磁場や重力場を分析し、木星の内部構造を明らかにします。
木星の表面の下で何が起こっているのかを知るには、木星の内部から発生する磁場を調べることが重要です。現在、木星の極軌道を周回するジュノーは、木星表面に近い磁場を直接測定しています。
最近、キンバリー・M・ムーア【ハーバード大学】とその同僚は、ジュノーのデータを研究し、木星の磁場が他の惑星とは異なることを証明しようとしました。木星の磁場は、南半球と北半球で大きく異なっているのです。この非対称性は、木星の内部構造によって生じた可能性があります。
2016年以前は、木星の磁場をほんの少し概観できただけでしたが、ジュノーがはるかに鮮明な詳細を提供してくれるため、研究者たちは木星の磁場に関する新しい参照モデルを作ることが可能になりました。この探査機は、木星大気の奥深くから来る熱放射を測定する複数のマイクロ波と赤外線装置で構成されています。
木星の双極子磁場と非双極子磁場
木星の内部を流れる電流が、木星の周囲に強い磁場を作り出しています。木星の内部はほとんどがヘリウムと水素でできているため、木星が電気を通すというのはとても不思議なことです。しかし、木星内部の密度と圧力が非常に高いため、水素は金属状態を保ち、他の金属と同様に電気を通すことができるのです。
赤道方向から見た木星磁場の図
出典:研究チーム
巨大な惑星は、その形成後、冷えるまでに数十億年かかります。その間に、木星は大量の熱を放出します。木星は現在、太陽から受け取る熱と同じだけの熱を発しています。この熱と対流が惑星内部の構造をなじませ、大きな渦巻き状の雲や嵐を形成しています。南赤道上の大赤斑【高気圧性の巨大な渦】もそのひとつです。
内部で対流によって駆動される流体の流れは、「ダイナモ作用」【熱対流運動による発電作用】と名付けられたメカニズムによって、強い磁場を発生させます。地球の磁場も同じように対流によって駆動される流れによって発生しますが、電流を流すことができるのは液体鉄の核です。
地球も木星も、磁場は主に双極子【一対の正負の同じ大きさの単極子をわずかに離れた位置に置いたもの】です。木星を棒磁石に見立てると、半径方向の磁場は南半球がほとんど負(緑~青)、北半球がほとんど正(黄~赤)です(下記画像のa)。
木星の双極子磁場と非双極子磁場
出典:Nature
ムーアたちの研究チームが発表した木星の磁場の非双極子【対にはなっていない磁場】部分は、そのほとんどが北半球に集中しています(上記画像のb)。一方、地球では、非双極子部分は両半球に均等に広がっています。
考えられる説明
このユニークな場の分布については、数多くの説明があります。そのうちのひとつが、木星の不思議な核に関するものです。地球の5倍の質量を持つ、小さくて密度の高い核であると考える説もあれば、大きくて希薄な核が磁場の形成を変化させると考える説もあります。
また、木星の奥深くに安定した流体層(1層または複数層)が存在するという説明もあります。これらの層は、木星の内部を異なる部分に分割する、ユニークな組成の流体を含んでいる可能性があります。例えば、遷移層がヘリウムを多く含む場合、木星内部の流体の流れが変わり、磁場が変化する可能性があります。
研究チームは、木星の内部構造と大気の多くの特性を考慮したダイナモのモデルを設計しました。これらの特性は、惑星の組成、電気伝導率、熱力学特性に依存します。
これらのパラメータはすべて広く研究されていますが、まだ多くの不確定要素があります。ダイナモのモデルにより、ムーアの説明がジュノーのデータと一致するかどうかを効率的に検証できるようになりました。まもなく、木星の内部がより鮮明に見えてくることでしょう。