・人工DNAにデータを保存・回収する初めての自動化システムが誕生しました。
・開発研究者は5バイトのメッセージ“HELLO”を保存し、回収しています。
・DNAベースシステムは非常に多くのデータを省スペースで保存でき、既存の記憶装置よりも長く機能します。
私達は非常に多くのデータに囲まれて生活しており、その割合は増える一方です。DOMO’s report第6版によれば、世界中にあるデータの90%が過去2年で作られたものだそうです。2.5エクサバイト(または250万テラバイト)を超えるデータが毎日作られ、その速度はインターネットの成長とともに日々加速しています。
Microsoft社はその非常に多くのデータを効率的に保存する技術を研究しています。現在は加工したDNAデータの暗号化と回収をするための分子コンピューティング技術の開発に取り組んでいます。
シリコンベースのチップと比較すると、DNAは比較的小さなスペースに膨大なデジタル情報を保存できます。ウェアハウスサイズのデータセンターに現在保存されているデータが全て マッチ箱サイズのスペースに全て保存できます。
2018年、ワシントン大学の研修者が1GBのデータ(イメージやオーディオ、ビデオ、文書)を合成DNAに保存する実演をしました。最近ではワシントン大学とMicrosoft社の研究チームが人工DNAにデータの保存・回収をする自動化システムを発案しています。DNAに情報を持続させる完全な自動化システムを実演したのはこれが初めてです。彼らはプロトタイプシステムを用いて5byteのメッセージである“HELLO”を保存・回収しています。基本的に彼らは人工DNAの断片にメッセージをエンコードし、デジタルデータに変換しています。
人工DNAがもたらす変化とは
合成DNA分子にデータを保存するために、研究室での手作業が必要になります。それらのプロセスを自動化することは、商業規模で考えればより手頃なストレージになるでしょう。この研究の目的は、完全なる自動化が可能であることを証明するためなのです。
参考:Nature | doi:10.1038/s41598-019-41228-8 | Microsoft
この研究で開発されたシステムは、デジタルデータ(0と1)をDNAビルディングブロック(As、Ts、Cs、Gs)に変換します。そして必要な化学薬品と液体をシンセサイザーに流し入れ(DNAの作製と断片化)、保存コンテナを使用します。このためにいくつか既製機器を使用します。
このデータを検索するためには、DNA(他の化学物質を添加したもの)を用意し、マイクロ流体ポンプを経由して他のセクションに流し込み、DNA配列を読み込ませてた後にデジタルデータに変換します。
この研究チームはまた、有効的に使用可能な計算方法も提案しています。検索とそのデータの取り出しといったような動作を、緑の自転車とリンゴが写った一枚の写真において可能にしています。つまりこれはデジタルフォーマットに変換することなく、分子のみでやろうという試みなのです。
新たなコンピューティング・システムの確立
このように適切な状況下において、人工DNAは約20年ほどで劣化する既存のストレージ・デバイスよりもはるかに長く持続していくでしょう。DNAベースのシステムは分子を動かすために液体化学物質を使います。電子を使う今日のコンピューティング技術よりも本質的に異なるもので、全くの新しいエンジニア・ソリューションを必要とします。
参考:A Nanoscale Tic-Tac-Toe Board Game Made Of DNA
このように分子をデータ保存のために使用し電子を操作してデータを処理するのは、全く新しいレベルのコンピューティング技術です。将来的には間違いなく大きな可能性を秘めています。