俗に宇宙人と言われる「地球外知的生命体」の探査が可能になったのは、電波が発見されてからのことです。電波は、1867年にスコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルが、光の波動性を観察して数学的に予測したものですが、研究室で電磁波の実証に成功したのはドイツの物理学者ハインリヒ・ヘルツでした。
意外かもしれませんが、20世紀以前にも地球外知的生命体(太陽系内)を探していたという話はたくさんあります。その一つに、電気工学者ニコラ・テスラの有名な主張があります。
1899年、コロラドスプリングスの研究室で働いていた彼は、普通でないシグナルに遭遇し、それが地球外からのものだと主張したのです。しかしながら、その主張はさらに精査されて、テスラはその年の初めにグリエルモ・マルコーニ【無線電信の開発で知られるイタリアの発明家、起業家】が送信した電波を傍受したのではないか、という仮説が立てられました。
知的な地球外生命体を探索するための大規模な専門的科学調査は、1960年に初めて開始されました。それ以来、私たちはいくつかの謎のシグナルに遭遇し、それぞれは際立って謎めいています。
11. ユディカ・コルディーリアの録音
コルディーリア兄弟
ユディカ・コルディーリア兄弟は、イタリアの元アマチュア無線家で、1960年代にソ連の秘密宇宙ミッションからの複数の無線通信信号を傍受したと主張して人気を博しました。
これらは主に宇宙飛行士の苦痛の信号、瀕死状態の音、燃えている音で、多くの宇宙飛行士の死とそれに続くソビエト宇宙計画による隠蔽に関する陰謀説を裏付けるものでした。
何十年にもわたって何度も検証された結果、兄弟が拾ったシグナルは、宇宙空間にあったいかなる宇宙船からのものでもないことがほぼ確実となったのですが、ではこれらの音は何だったのでしょうか?
10. 高速電波バーストFRB 150418
高速電波バースト(FRB:fast radio burst)は、一過性の電波パルスとして現れる原因不明の高エネルギー現象で、ガンマ線バースト【天文学の分野で知られている中で最も光度の高い物理現象】とは別のものです。このFRBの一つが、2015年にオーストラリアのパークス観測所で検出され、その後「オーストラリアコンパクト電波干渉計」【オーストラリア国立望遠鏡機構が運営を行う電波望遠鏡】で捉えられました。
ハワイにある「すばる望遠鏡」での追観測により、このFRBの発生源を世界で初めて特定することができました。しかし、これはすぐに議論の的となりました。現在、電波天文学者たちは、このFRBが超巨大ブラックホールを伴ったAGN(活動銀河核)から発生したものであることを立証しています。しかし、不確実なことはまだ残っています。
9. 電波源 SHGb02+14a
SETI@homeの分散コンピューティング・プロジェクトのスクリーンショット
電波源SHGb02+14aは、地球外知的生命体の探索において、最も有力な候補の一つです。このシグナルは、2003年3月にSETI@homeによって初めて発見されました。【SETI@home:インターネットを通じた分散コンピューティングによって、宇宙から到来した電波を解析し、地球外知的生命体の存在を探索するロジェクト】 この電波源は、おひつじ座とうお座の間の非常に特異な領域にあり、地球から1000光年以内の観測可能な星が存在しない方向にあります。
このシグナルは、1420MHzで合計9分間(3回以上)観測されました。3つの周波数のうち一つは、地球外知的生命体がシグナルを発信する際に使用する可能性のある標準的な周波数の一つと考えられているwaterhole【滝壺】の領域でした。
この候補には他にも天文学者を驚かせるような特徴があり、その一つが、毎秒8〜37ヘルツという急激な周波数ずれです。このずれがドップラー効果現象【電磁波などの波の発生源と観測者との相対的な速度の存在によって、波の周波数が異なって観測される現象】によるものだとすると、この発生源の天体は地球の40倍の速さで自転していることになります。
8. 星からのシグナル
2012年、カナダのケベック州ラヴァル大学の物理学者Ermanno F. Borraは、「地球外文明がレーザーを使って星間通信を行うことができる」という大胆な主張をしました。彼の理論によると、地球外文明が地球に向けてレーザーを照射した場合、そのスペクトルを注意深く分析することで、ホスト星の助けを借りて、地球でレーザーを観測することができるというのです。
そこで彼は、大学院生らとともに、そのようなシグナルを探してSloan Sky Surveyでカタログ化されている約250万個の星を調査しました。その結果、合計234の異なる星が発見され、そのほとんどが太陽と同じスペクトルクラスを持っていました。つまり、彼らのチームは、234種類の地球外文明を発見したということになります。
予想通り、彼の発見は、その単なる可能性について、電波天文学者の間で大規模な議論を引き起こしました。謎のシグナルは、実は望遠鏡の較正の問題で発生したものだ、と多くの人は考えています。
7. ペルセウス座銀河団からのX線放射
チャンドラ天文台が捉えたペルセウス座銀河団の中心領域
上の画像は、ペルセウス座銀河団のX線写真です。ペルセウス座銀河団は、観測可能な宇宙の中で最も大きく、最も巨大な天体の一つであり、超高温のプラズマ雲に囲まれた数千個の銀河を含んでいます。また、1970年に初めて観測された奇妙な電波の発生源でもあります。
この電波は、ウフルX線衛星によって再び拾われ、最初の観測例を裏付けるものとなりました。それでも、発見されて以来、天文学者らはこの電波の本当の発生源や発生理由を特定することができませんでした。現在では、この電波は銀河団のメンバー銀河であるNGC1275から来ており、銀河同士の衝突が原因ではないかという仮説が立てられています。
6. 恒星HD164595からのシグナル
HD164595の電波信号の強さ
2015年、イタリアの数学者・天文学者であるクラウディオ・マッコーネらの研究チームが、短時間の奇妙な電波信号を発見しました。そのシグナルは、ヘラクレス座に位置する星HD164595の方向から届いていました。同研究チームは、この信号を詳しく調べた結果、地球大気の電波干渉によるものか、遠方の天体の重力レンズ効果によるものであると結論づけました。
このシグナルが謎であるのは、一度だけ、しかも一つの望遠鏡でしか観測されていないことです。その後、SETI研究所の研究者が行った観測では、その周波数と位置で重要なシグナルは観測されなかったと報告されています。
5. ロリマー・バースト
カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)
画像提供:Flickr
FRB010724は、ロリマー・バーストとしても知られており、2007年にオーストラリアのパークス電波アンテナで収集された古いデータを分析した結果、ウェストバージニア大学のダンカン・ロリマーと彼の学生デイビッド・ナルケヴィッチによって発見された史上初の高速電波バーストです。2007年以降、ロリマー・バーストは電波天文学者の注目を集めていました。
ところが、2017年、研究者たちはこの謎のバーストの発生源を特定することに成功しました。驚くべきことに、それは地球から約30億光年の距離にある、星を形成している矮小銀河だったのです。天文学者はこれまで、FRB010724は、2つの中性子星の衝突や超新星爆発などの稀な大災害に由来すると考えていたのですが、ロリマー・バーストの反復的な性質から、バーストを引き起こすものが単純に破壊できないことが後に明らかになりました。
4. 高速電波バーストFRB121102
中性子星からの非常に強力なフレア
画像提供:NASA/チャンドラX線観測所
FRB121102は、これまでに記録された高速電波バーストの中で最も謎に満ちたものでしょう。2012年にアレシボ電波望遠鏡によって初めて観測され、ぎょしゃ座の方向から来ているようでした。ほとんどのFRBは一度だけ現れて、その後は追跡できなくなる傾向にあるのですが、このFRBは違います。
2015年以降、同じ方向から30以上の電波バーストが観測され、その中には最初に記録された10のバーストも含まれています。入手可能なデータに基づき、研究者グループはその発生源を若い中性子星に絞ることができましたが、依然として議論の余地があります。
2017年に行われた新たな研究では、この電波が高度に偏光している(横波)ことが判明し、これは強い磁場を持つ高温のプラズマを通過している場合にのみ可能であると考えられました。
3. 宇宙の叫び声
2006年、NASAの研究者グループは、原因不明の巨大な電波信号を偶然発見しました。このシグナルは、NASAのARCADE放射計によって捉えられました。この放射計は大気の上層部に送られ、宇宙の初期の星や銀河からの不明瞭な電波や熱信号を探していました。
これは、それまでに観測されたものよりも約6倍強く、「宇宙の叫び声」と名付けられました。この電波源を詳しく観察した結果、初期の星の内部振動や銀河系の乱れによるものではないことが判明しました。この謎の音の発生源を特定することは、まだできていません。
2. WoW! シグナル
1977年にプリントアウトされたシグナルのカラーコピー
1977年8月15日、天文学者のジェリー・エーマンは、オハイオ州立大学に設置されたビッグイヤー電波望遠鏡のデータを確認しているときに、非常に奇妙な異変を発見しました。それは、短時間に高い強度で変動する狭帯域のシグナルでした。調査の結果、彼はその発生源をおおよそ特定することができ、射手座の近くではないかと思われました。
1980年代以降、何人もの天文学者が繰り返しこのシグナルを観測したにもかかわらず、現在まで検出されていません。エーマンはこの発見に感激して、文字列の横に「Wow!」と書いたことで、この謎のシグナルの名前になりました。
1. 恒星KIC8462852からの謎のシグナル
タビーの星(KIC8462852)の想像図
タビーの星と呼ばれるKIC8462852は、はくちょう座にある主系列星で、地球から約1280光年の距離にあります。この星は、観測された明るさが大きく変化することで知られています。様々な観測の中には、わずかな明るさの変化しか見られないものもありますが、22%もの大きな変化が見られたものもあります。
また、天文学者たちは、比較的短い期間にその輝度が急激に上昇するのを目撃しています。このような星の明るさの不均一で急激な変化は、その背後に軌道上の彗星や塵があるのではないかと推測されています。しかし、優れた文明が星のエネルギーを利用するために建設した巨大な構造物がこの変動の原因であるという説もあるのです。正確なところは誰にもわかりません。