・水がどのようにして地球にやってきたのかを、新しい理論モデルで説明する。
・地球上の水は、小惑星の物質だけから来たものではないかもしれない。
・地球の水の約2%は太陽系星雲から来ている。
水の起源は長い間謎のままです。この謎を解き明かすことは、地球の進歩の歴史や今の構造に近づくための鍵となります。また、太陽系内の他の惑星がどれだけの水を蓄えていたのか、さらには太陽系外惑星の発生や生命を支える特質についても詳しく知ることができます。
45億年の間に地球の表面に水が蓄積された理由については多くの説があり、相互に整合性がとれています。それらのほとんどは、地球の水は小惑星が運んできた物質に由来するという事実に即しています。
ところが、アリゾナ州立大学の新しい研究では、それとは異なることが述べられています。地球上の水は、小惑星の物質だけではなく、太陽系形成後に残された水素ガスや星間塵の雲である太陽星雲からも、もたらされた可能性があるというのです。
水の起源についての他の説は?
これまで多くの研究者が、地球上の水はすべて小惑星に由来するという説を支持してきました。これは、通常の水素と重水素(水素の2つの安定同位体のうちの1つ)の比率が、海と小惑星から採取したサンプルで似ていることが主な理由です。たしかに、海の化学組成は小惑星の物質と一致していますが、それがすべてではないかもしれません。
最近の研究では、海の水素は、地球全体に存在する水素のすべてを占めるものではないことがわかっています。また、マントル【核の外側にある層】と核の境界から採取されたサンプルは、重水素の量が非常に少ないことから、水素が小惑星物質から発生したものではないと考えられています。
地球のマントルはネオンやヘリウムなどの希ガスで構成されており、その同位体組成は太陽系星雲から得られたものです。
新しいモデル
新しい理論モデルによると、数十億年前、太陽星雲がまだ太陽の周りを渦巻いている間に、大量の水を含んだ小惑星(「惑星の胚子」と呼ばれる)が惑星へと形成され始めたと考えられます。
これらの小惑星は何度も衝突を繰り返し、急速な進化を遂げた後、最終的にマグマの海へと姿を変えました。この天体が最終的に地球となりました。
太陽系星雲の水素や希ガスは、その後、マグマに覆われた巨大な胚子に引き継がれ、大気が形成されました。星雲の水素は、小惑星から得られる水素よりもはるかに軽く、重水素の含有量も少量でした。星雲の水素は徐々に海の溶融鉄の中に拡散していきました。
惑星系を取り巻くガスと塵のイメージ図
画像提供:NASA
その後、水素は同位体分別【物理学的・化学的プロセスを通して同位体比が変わること】の過程を経て、地球の中心部へと引きずり込まれました。この「鉄に引き付けられた」水素は核に引き寄せられ、重水素のほとんどはマグマの中に残り、最終的に冷えてマントルになりました。
小さな胚子や他の天体が地球に衝突し続け、それによって水や質量が増えていき、惑星が最終的な体積に達したのです。新しいモデルは、この惑星は、マントルや海に比べて核の重水素と水素の比率が低い状態になっており、マントルの奥深くには希ガスが残っているというものです。
このモデルでは、各供給源から受け継いだ水素のおおよその量が示されています。水素のほとんどは小惑星から来たものですが、地球上の水の一部、最大2%の水は太陽系星雲から来たものです。
この研究により、太陽系外惑星の発展を新たな視点で見ることができるようになりました。地球に似た他の惑星も、自身の星雲を通して水や水素を集めた可能性があります。