映画「ハリー・ポッター」のファンである私にとっては、「不死鳥」と言えばダンブルドアのフォークスです。赤と金の威厳あるこの生き物は、とりわけ、自分の体重よりはるかに重いものを運ぶことができ、その涙は致命的な傷を癒すことができます。
それが真実なら、この生き物をこの目で見ることができるとしたら、驚異的としか言いようがありません。ギリシャ神話によると、不死鳥は長寿の鳥で、それまでの自分の灰から再生、あるいは生まれ変わることから、復活を象徴しています。通常、太陽と関連付けられています。
この記事では、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの記述から現代の文学や映画まで、不死鳥という鳥について興味深い内容を厳選してみました。
まずは身近なところから
16. ウィリアム・シェイクスピアの詩「不死鳥と雉鳩」 は、多くの人から最も謎めいた作品のひとつとみなされています。この詩では、恋人同士だった雉鳩と不死鳥のために準備された葬儀が描写されています。
15. ハリー・ポッターの世界に登場する不死鳥は、とてつもない重さを持ち、傷を癒すだけでなく、空中から変身することができます。不死鳥の歌は、純粋な心に勇気を与え、悪に恐れを抱かせます。
14. 有名なロックバンド「クイーン」のロゴは、トップに不死鳥が描かれています。これは、リードボーカルであるフレディ・マーキュリーがデザインしたものです。
クイーン 1977年ワールドツアーのポスター
画像出典:Wikimedia Commons
13. ポケモンの世界に登場する鳥のような伝説のポケモン「ホウオウ」は不死鳥伝説(正確には不死鳥の類語である中国の鳳凰【ほうおう】)を元にしています。
12. マーベル・コミックでは、「フェニックス・フォース」は生命と創造と破壊の力を象徴する宇宙的存在であり、破壊不能で不死身です。
11. フェニックス・フォースは突然変異体のジーン・グレイと密接に関係しており、彼女は宇宙の力の唯一の理想的な正当な所有者であることを証明されています。
10. 人気ファンタジーMMORPG『RuneScape』【ルーンスケープ、オンラインゲームの名称】には、瀕死の不死鳥の蘇生儀式を手伝うというミッションがあります。その対価として、不死鳥を呼び出すための羽が与えられます。
9. イギリスの小説家イーディス・ネズビットの人気ファンタジー児童小説『不死鳥と絨毯』は、神話の鳥と人間の家族の友好関係を描いています。
8. 多人数参加型オンラインバトルアリーナゲームとして広く親しまれている『Dota 2』には、「不死鳥」というユニークなヒーローが登場します。神話に登場する生き物をモチーフにしています。
7. 『Ark: Survival Evolved』(サバイバルアクションゲームの名称)では、不死鳥を家畜化したり、飼いならしたりすることができます。ゲーム中、不死鳥は地表に降り立つことなく、灰になって死ぬまで飛び続けます。
6. 不死鳥神話の起源
不死鳥の最古の例は、おそらくエジプト神話にあり、そこでは太陽、創造、再生に関連する自己創造の存在として描写されています。しかし、古代エジプト人はこれをBennu【ベンヌ:不死の霊鳥】またはBennu-birdと呼んでいました。
エジプト神話によると、ベンヌはラー(太陽と天空の神)の魂であり、世界そのものの創造に不可欠な役割を果たしたということです。古代ギリシャ人が「フェニックス【不死鳥】」という名前をエジプトの「ベンヌ」に由来させた可能性があることは、様々な歴史的文献に示されています。
ヘロドトスは、この壮大な鳥についての記述(ヘリオポリスの住民の物語に基づく)の中で、聖鳥フェニックスは500年に一度しか現れず、はるばるアラビアからやってくると書いています。
5. 不死鳥の類型は様々な文化に存在する
古代ギリシャ(またはエジプト)以来、伝説上の不死鳥は世界中の様々な文化や民話に取り入れられてきました。
不死鳥の類型として最も広く知られているのは、中国の鳳凰、ロシア(スラブ神話)の火の鳥、ヒンドゥー教のガルーダなどです。これらの神話上の生き物には、多くの印象的な共通点があります。
カズウィーニー『創造の妙薬』に描かれたアンカの姿
アラビア神話では、アンカは4枚の翼を持ち、鮮やかな色をした大きな女性の鳥で、不死鳥と密接な関係があるとされています。「アンカ」という言葉は、ペルシャ神話のシムルグという鳥を識別するために、しばしば同じように使われます。
ガルーダは仏教、ジャイナ教、ヒンドゥー教の神話で重要な役割を担っています。インドネシアとタイはガルーダを国の象徴として使用しています。
4. 復活と再生を象徴している
不死鳥は太陽だけでなく、時間、聖化、帝国、キリスト、輪廻転生を表しています。古英語のエクセター写本では、不死鳥はキリストの復活の寓意と見なされています。
復活や再生を連想させることから、不死鳥は初期キリスト教において広く人気のある象徴でした。多くの人々は、不死鳥は世界を創造し、いつか世界を食い尽くす宇宙の炎を象徴していると信じていました。
他の文化圏の神話的生物、たとえばトルコ神話のコンルルやユダヤの民間伝承のミルチャムは、同様の力(背徳感や輪廻転生など)を持っています。
大衆文化では、不死鳥の涙には絶大な治癒力がある、不死鳥が近くにいると嘘をつけない、といった現代的な神話がいくつか生まれています。
3. 不死鳥の姿
不死鳥は古代の様々な文学作品に描かれていますが、その描写は一様ではありません。現存する最古の不死鳥を描いた文学作品や美術作品にはよく、ギリシャ神話の太陽神ヘリオスのような光輪やニンブス(明るい光線)が描かれています。
不死鳥は通常、鮮やかで色彩豊かなものとして認識されていますが、その色彩一般については、資料によって矛盾があります。コンスタンティヌス大帝の顧問であったラクタンティウスは、この鳥がサファイアのような青い目と金色の脚を持っていると述べています。
一方、ヘロドトスは、この鳥は鮮やかな赤と黄色であると主張しています。この不死鳥の説は、劇作家エゼキエルをはじめ、多くの人々によって支持されました。
プリニウス、ソリヌス、ヘロドトスなどの学者は不死鳥の大きさを鷲の大きさに例えています。それに対して、劇作家エゼキエルは、雄鶏によく似ていると主張しました。また、ダチョウよりも大きいとする説もあります。
2. 500〜1000年生きる
灰の中から蘇る
この神話上の生物が死んでから復活する年齢も不明であり、文化によって異なります。
ある神話では、不死鳥は1000年まで生きるとされ、また別の神話では1500年近く生きるとされています。ザカリーヤー・カズウィーニー【ペルシャ人の法学者、1203年~1283年】は、著書『創造の驚異』の中で、この鳥は約1700年生きたと主張しています。
しかし、不死鳥の寿命に関するほとんどの記述は、再び生まれ変わるまでの年齢を500年としています。また、500年以前に死んだという記録も、1500年を超えて死んだという記録も、例外を除いて今のところ見つかっていません。
1. 錬金術の象徴としての不死鳥
錬金術では、化学反応の変化や物質の性質を表すために不死鳥が使われます。不死鳥は、白鳥やカラスなどの鳥類とともに、錬金術の用語で賢者の石をつくる過程を表すマグナム・オプス(Magnum opus)とも関連づけられます。
錬金術には、腐敗を表す「ニグレド」、浄化を表す「アルベド」、認識を表す「シトリニタス」、そして最後に血や不死鳥、バラ、赤い服を着た人などの象徴で表される赤い段階「ルベド」という、4つの原初的な段階があります。