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低コストでより安全かつ高性能な電力を供給できる次世代電池の有望な候補の全固体電池の概要説明

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本記事は、Solid State Battery [A Simple Overview]
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

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読了時間 : 約6分42秒

全固体電池は、低コストでより安全かつ高性能な電力を供給できる次世代電池の有望な候補の1つです。全固体電池は熱安定性に優れているため、より高温で動作することができます。

 

固体イオン技術用の材料開発は、1世紀近くの間制約がありましたが、過去20年間で大きな進歩を遂げました。多くの材料が見つかり、固体のイオン伝導最適化のための効果的な手法が使用されました。

 

同時期に、研究者たちは固体中のイオン伝導に関して、いくつかの基礎理論を考案し、比較的小さな体積に大量の利用可能エネルギーを貯蔵することを可能にしました。

 

全固体電池が必要な理由

現在、商用デバイスに使用されている電池は、リチウムイオン技術に基づくものです。リチウムイオン電池の人気は年々高まる一方で、その成長はハイブリッド車や電気自動車の利用増、スマートフォンやノート PC の急速な普及により牽引されています。

 

世界的な成功に関わらず、リチウムイオン電池には、基盤技術において、安全性、フォームファクター、効率、およびコストの面で制約があります。既存のリチウムイオン技術のほとんどは、有機溶媒にリチウム塩 (ヘキサフルオロリン酸リチウムやテトラフルオロほう酸リチウムなど) を含む液体電解質を利用しています。

 

ただし、電解質の分解により、固体電解質界面 (SEI) と呼ばれる不動態化層が形成されます。この層は、電池のアノード材料に形成され、実効コンダクタンスを制限します。

 

液体電解質には 漏れを防ぐための耐液性のケーシングと、アノードをカソードから隔離するための高価な膜が必要です。したがって、液体リチウムイオン電池の設計とサイズの自由度は制約されます。

 

また、リチウムイオン電池には、可燃性および腐食性の液体を使用されているため、安全衛生上の問題があります。多くのメーカーは、このような欠点を公表していません。固体電解質の使用にょり、特にウェアラブル、ドローン、電気自動車の市場で、これらすべての問題に対応可能です。

 

全固体電池の材料

 

 

全固体電池では、電極と電解質は両方固体状態です。電解液は、セパレーターとしてだけではなく導電体としても動作可能なため、ケーシングやセパレーターなどの特定のコンポーネントが不要になります。そのため、全固体電池をより薄く、柔軟にすることができます。

 

全固体電池には液体またはポリマーゲル電解質が含まれないため、安全上のリスクがなく、温度変化や物理的損傷に対して高い耐性があります。

 

全固体電池は、従来のリチウムイオン電池と比較して、単位重量あたり、より多くのエネルギーを蓄積することができます。また、大幅な劣化が発生する前に、より多く充放電サイクルを処理できるため、寿命延長が見込まれます。

 

固体電池と液体リチウムイオン電池の比較

 

液体リチウムイオン電池とは異なり、全固体電池は可燃性物質を含まないため、水素ガスを発生せず、動作の安全性が向上します。

 

全固体電池は、固体状の界面層を形成しないため、自己放電率が低く、損失を最小限に抑えて複数年の電力貯蔵が可能です。稼働時間は従来のリチウムイオン電池の最大100倍となります。

 

固体リチウムイオン電池 液体リチウムイオン電池
優れた熱安定性 不十分な熱安定性
自己放電率が低い 自己放電による短寿命化の可能性
非可燃性の電解質 可燃性の電解質により燃焼の可能性
広範囲の温度でイオン伝導率が高い 室温でのみイオン電導率が高い
セパレーターは剛性で、機械的応力により破損する可能性がある セパレーターは柔軟で機械的応力に高い耐性がある
SEI 層を形成しないため、ライフサイクルが長期化 SEI 層の形成によりライフサイクルに影響
エネルギー密度が高い 適度なエネルギー密度
高耐性 加充電に敏感

 

さらに、固体電解質はより大きな電位窓を提供するため、高電圧カソード材料を使用できます。高エネルギー密度の金属で作られたアノードは、エネルギー密度を1,000 Wh/kg (キロワット時) 以上に引き上げることができます。これらの利点により、全固体電池はゲームチェンジャーとなる可能性があります。

 

全固体電池の機能

液体電池と全固体電池の動作原理は同じです。イオンの流れにより、バッテリー材料間の化学反応を引き起こします。

 

バッテリーが放電すると、アノード で酸化が起こり、カソードで還元が起こります。酸化により、電気エネルギーの自由電子を含む化合物が生成され、還元により、化合物が電子を獲得して電力を蓄積します。

 

 

より具体的には、電池が電力を供給するとき、正の電荷を帯びたイオンは、固体電解質を通りアノードからカソードに移動します。これにより、アノードから電子を引き出そうとするカソードに正電荷が蓄積されます。

 

しかし、電解質は電子がカソードを通って移動することを許さないので、電子は閉回路を横切って移動し、接続されているデバイスに電力を供給します。

 

 

電池の充電時には、逆が発生します。イオンはアノードに流れ、電子は回路を横切ってカソードに流れます。イオンがアノードへの移動を停止すると、電池は完全に充電されたと見なされます。

 

イオンがある電極から別の電極に移動する限り、電子は一定に流れ、接続されたデバイスが動作を維持するためのエネルギーを供給します。

 

材料

一般に、全固体電池のケミストリーは液体電解質電池に似ています。カソード材料は、リチウムベースの酸化物、リチウムベースのリン酸塩、および酸化バナジウムです。アノード材料は、金属リチウム、炭素、リチウム合金、およびチタン酸塩で構成されています。

 

リチウム硫黄 (L-S) は、有望なカソード材料です。リチウムの原子量が低く、硫黄の原子量が中程度であるため、リチウム硫黄電池は比較的軽量で、リチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度 (約500Wh/kg) となります。

 

 

リチウム硫黄電池のもう1つの有望な材料は 超酸化リチウム (Li-O2) です。アノードでのリチウムの酸化とカソードでの酸素の還元を利用して、電流を生成します。理論的には、超酸化リチウム電池により12kW・h/kg のエネルギー密度を実現できます。これはガソリンのエネルギー密度 (13kW・h/kg) に匹敵します。

 

リチウムイオンと比較して、超酸化リチウムを利用した固体電池は、最大15倍の比エネルギー (単位質量あたりのエネルギー) を持つことができます。

 

リン酸鉄リチウム (LiFePO4) は、電気自動車、電動工具、および太陽エネルギーのインストレーションへの固体電池用途として有望です。電力密度が高く、高温での安定性および長いサイクル寿命を備えています。

 

応用と最近の研究

 

これまでのところ、全固体電池は、ウェアラブルデバイス、人工心臓ペースメーカー、および無線周波数識別 (RFID) タグでの用途が見込まれています。液体電解質より優れた利点があるため、大型電池や電気自動車で大きな用途が見込まれます。

 

過去10年間で、多数の企業や研究機関が、効率的で充電可能な金属電池の製造に数千万ドルを投資してきました。

 

トヨタは2017年、電気自動車用の軽量で小型の電池製造を可能にする新しいタイプの電池技術に取り組んでいると発表しました。新たな技術は総充電容量を増加させ、車の走行距離を最大2倍にする可能性があります。

 

Dyson の子会社である Sakti3 は、数値シミュレーションと最適化によって導かれる薄膜堆積を使用して、スケーラブルな全固体電池を開発するための技術について発表しました。同社の知的財産ポートフォリオは100以上の特許を持つまでに成長しました。

 

リチウムイオン電池の共同発明者であるジョン・グッドイナフは、ガラス電解質とナトリウム、リチウム、またはカリウムからなるアルカリ金属アノードで作られた不燃性電池を開発しました。この種の電池は、-20°C で導電率が高く、電気自動車に使用された場合、氷点下の天候で良好に動作する可能性があります。

 

2018年、Solid Power 社は、年間10メガワット時の容量が見込まれる全固体電池を作り出す競争で2千万ドルを調達しました。フォルクスワーゲンは、全固体電池を開発するために QuantumScape に約3億ドルを投資しました。

 

2020年に、サムスン (Samsung) は、より長いサイクル寿命と大容量をサポートするために、アノードとして銀-炭素複合層を使用する新しいプロトタイプを考案しました。既存のリチウムイオン電池よりも体積が50%小さく、電気自動車は1回の充電で最大500マイル走行可能になります。

 

電気自動車の自動車メーカーである Fisker 社は、家電、自動車、その他の業界で使用される全固体電池技術に関連していくつかの特許を申請しています。同じ技術に取り組む他の自動車メーカーには、現代自動車、ホンダ、日産、BMW などがあります。

 

現在の課題

固体電解質を使用した電池は、技術を商品化準備を整える前に、主に3つの問題を克服する必要があります。

 

1.デンドライト

全固体電池は、リチウム金属アノードを使用する場合、リチウムデンドライトの形成と成長が問題となる場合がよくあります。デンドライトは、カソードとアノードの間のセパレーターを貫通することで、クーロン効率を低下させ、過熱と短絡を引き起こします。

 

 

デンドライトは通常、充放電中に形成されます。ただし、固体電解質とリチウム金属電極の界面でどのように成長を始めるかを説明できる信頼できるメカニズムはありません。さらに、リチウムデンドライトの成長に関与する固体電解質の特性はまだ十分に確証されていません。

 

2. 温度と圧力に対する感度

固体電解質の2つの主要なタイプであるポリマーとセラミックまたはガラスには、独自の問題があります。ポリマー電解質は、室温では高い導電性を示さないため、加熱する必要があります。

 

一方、セラミック電解質は、室温で適切な導電性を示しますが、電極との接触を維持するには高圧 (1平方センチメートルあたり約1トン) が必要です。

 

3. コスト

現在、全固体電池の製造にはかなりコストがかかります。製造プロセスには、高価な真空堆積装置を必要とするため、スケーリングが困難です。全固体電池の高い価格はスマートフォン、ノート PC 等の電子機器への採用の妨げとなっています。

 

市場

全固体電池の世界市場規模は、2020年の6,200万ドルから2027年までに4億8300万ドルに増加し、年平均成長率は34.2%になると予想されています。

 

この成長を牽引している要因には、家電製品の小型化傾向の高まり、電気自動車で先進の電池が必要とされること、および巨大企業による研究開発活動の増加があります。

 

容量面では、20mAh 未満のセグメントが予測期間中に全固体電池市場を牽引すると予測されます。これらの薄膜電池は、主にワイヤレスセンサー、包装、化粧品パッチ、その他の低ドレイン機器の用途で使用されます。

 

スマートカードや電気自動車の需要増のために、北米が市場シェアの大部分を占めています。米国は、全固体電池を幅広い用途に採用している主要国です。欧州市場も、今後10年間で大幅な速度で成長すると予測されています。

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