現在の惑星理論では、「月」は約45億年前に、火星よりやや小さい質量の彷徨う天体【惑星を意味する古い表現】と地球が大衝突して誕生したとされています。
その衝突によって、形成されたばかりの地球から破片の塊が切り離されましたた。それが時を経て、月へと姿を変えていったのです。形成された直後の月は、地球に与える引力が、現在の約200倍もあったということです。
過去数十億年の間、月の引力は私たちが知っている地球上の生命を形成する上で重要な役割を担ってきました。月が誕生する前には巨大な火の玉だった地球が、人間だけでなくあらゆる生命が生息できる場所になったのです。
現在、月は地球から平均38万kmの距離にあって、1年に5cmの割合で地球から遠ざかっています。このままでは、月が地球に及ぼす引力が徐々に減少し、約30〜40億年後には地球と月が完全に分離してしまうと言われています。
そうすると、30〜40億年ではなく、もっと早く地球と月が分離してしまったらどうなるのでしょう? きっと皆さんの頭の中にも同じ疑問が浮かんだことでしょう。では、それを調べてみましょう。
月の引力の影響
宇宙環境観測衛星DSCOVRが観測した、地球の前を横切る月
太陽系に存在する150個の衛星の中で、地球の月はあらゆる意味で最も特異な衛星です。地球と比べると約4分の1の大きさで、中心となる惑星との関係で他の月と比較すると巨大です。
月が地球の潮流を支配していることは科学的事実です。月の質量は、地球の海洋水を絶えず引き寄せておくのに十分で、(慣性のため)両側に潮のふくらみを生じさせています。
ところが、多くの人が気づいていないのは、海の潮流が太陽によってもコントロールされているということです。それでも、太陽は地球から非常に遠いため、地球に対する引力の影響は月に比べてはるかに小さいのです。
しかしながら、月がこの均衡から外れると、太陽が完全にコントロールするようになり、海洋水は太陽の引力の方向に押し寄せ、地球規模の津波が世界中の海岸線を破壊することになるのです。
地球規模の津波と海洋生物
月が空から突然消えたら、どんな大惨事になるかは想像することしかできません。一瞬にして海洋水が湧き上がり、これまで誰も見たことのないような世界的規模の津波が発生するでしょう。また、海流の変化や気象パターンの乱れにより、食物連鎖も破壊されるかもしれません。
月がなければ、食物連鎖の最下層であるプランクトンからサメに至るまで、海洋生物の生態系も狂ってしまいます。その結果、沿岸域の経済全体が破綻し、世界的な食糧不足に悩まされることになるでしょう。
地球の安定した自転軸の傾きに対する影響
地球-月系(模式図)
月がなくなると、海洋生物学や沿岸生物に大きな影響を与えることは間違いありませんが、最も大きな影響を与えるのは、地球の安定した自転軸の傾きでしょう。
私たちが1年を通して四季を感じることができるのは、地球の自転軸が23.5度傾いているためです。月がないと、この傾きが太陽や他の惑星の引力の影響を受けて、急激に激しく変化してしまうのです。
月は、地球の自転軸を同じ場所に固定する安定器のような役割を果たしているのです。月がないとどうなるかを実際に確かめたいなら、火星に行くしかありません。
火星は地球と違って軸の傾きが固定されておらず、100万年の間に劇的な変化を遂げています。火星の赤道付近で発見された水の氷は、この激変を証明する一つの可能性です。
このような軸の変動があると、火星のように赤道付近に氷の塊があり、極点に緑があるという状態になる可能性もあります。このような変化が起こるには何千年、何百万年かかるとしても、それまでに人類がどうにか生き延びることができたなら、過酷な環境に急速に適応しなければならない、とても奇妙な場所になるのです。
結論
30-40億年というのは極めて長い時間ですし、月が自爆した形跡もないため、心配する必要はありません。
月のない地球での生活は考えられません。私たちの太陽系にある火星や別の惑星のひとつに過ぎなくなってしまうかもしれないからです。月がなければ、私たちの地球はまったく見分けのつかないものとなり、おそらく人が住むこともできないでしょう。