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週休3日のグローバル社長を実現する「ギグエコノミー」とは?

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元マイクロソフト役員で、現在は働き方改革のコンサル企業「クロスリバー 」の代表を務める越川慎司さんは、週休3日、週30時間労働という働き方を実践しています。

 

短時間勤務の中でも、2017年1月の創業以来わずか1年半の間に、500社を超える企業の支援を行なっているから驚きです。その鍵となったのは、仕事に制限を設けて自ら工夫を促すことと、ギグエコノミーを利用した人材の活用法にあります。

 

一般的に組織というと、上意下達の「ピラミッド型」が主流です。しかし越川さんは、企業と働く人のつながりを上下関係ではなく横並びにとらえ、各メンバーのスキルをフルに活用することに注力し、単発(ギグ)の課題解決プロジェクトを数多く回しています。

 

働き方の多様化に伴い、企業と個人の関係性は変化しています。越川さんの高いパフォーマンスを維持するための秘訣についてお話を伺いました!

 

――越川 慎司(こしかわ しんじ)
国内通信会社、外資通信会社に勤務、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフトに入社。Officeビジネスの責任者を務めた後、働き方改革の支援会社クロスリバーを設立。2017年は全てのクライアント企業で事業生産性・労働生産性、そして従業員の働きがいが向上した。著書『新しい働き方~幸せと成果を両立するモダンワークスタイルのすすめ~』(講談社)は、TSUTAYAオンラインで全書籍中トップの週間売上げを記録しベストセラーに。

 

起業は自己実現のための「手段」だった

――越川さんはこれまで、大手、ベンチャー、国内中心、グローバル企業と実に多様な経歴をお持ちです。そんなご経験を踏まえて、2016年12月には前職であるマイクロソフト社から独立し、クロスリバー社を立ち上げられています。起業を決意された背景にはどんな理由があったのですか?


越川慎司(以下、越川):
僕は大学講師も勤めているのですが、学生に対して「働くことは、自己実現のための手段にすぎない」と伝えています。僕が起業したのは、ビジョンを実現するためなんですよ。なので、人によっては会社員でも、アルバイトでも雇用形態なんて何でもいいんです。

 

――ビジョンがあっても、マイクロソフトという大企業を退職するのは勇気が必要だったと思います。

 

越川:そうですね。マイクロソフトという大企業の看板のもとで大きな仕事をすることに充実感はありましたが、一方でその環境に慣れてしまうと自分の成長を止めかねない。そんな危機感を抱いたんです。なので、自分の永続的な成長のために過去の成功を捨てようと決めたんです。

 

また、経営者のサポートをしたいという気持ちが芽生えたことも起業を後押ししました。マイクロソフト在籍時には、変化の激しい時代に怯むことなく、新しいことに挑戦しようとする多くの経営者に出会い刺激を受けまして、その姿を見て「支えたい!」と思うようになっていきました。

 

彼らが欲しているのは変化への対応力で、それをどうやって組織として身に付けるかだと感じて、マイクロソフトで培った経験が役に立つと思いました。

 

――誰もが知る有名企業を退職して起業したことにも驚くのですが、会社に週休3日を取り入れようとしたきっかけを教えていただけますか?

 

越川:働く上で健康は重要だという僕の考えによるところが大きいですね。マイクロソフト勤務時代は海外出張が多く、働く時間を自分でコントロールしにくかった。

 

時間に追われる働き方から脱却し、短時間で爆発的な生産性を生み出す「週休3日のベンチャー企業」を立ち上げようと思い立ちました。それに、働き方のコンサルをする僕が、目の下にくまを作って客先に訪問したら説得力がないじゃないですか!

 

――確かに(笑)

 

越川:夏休みの宿題って、期限があるからやるのですよね?自分で制限を設定して、制限の中で目標を達成するにはどうすればいいのかを考える環境を作りたかった。・・・まあ正直なところ、今は結構忙しいので、なんとかギリギリ週休3日を保てているといった状況ですが(笑)

 

様々な人から必要とするスキルを集めて、組み合わせる

――現在のような働き方を実現させるために、 “ギグエコノミー”という方法を採用して人材活用をしているとうかがっています。あまり聞きなれないのですが、どんな組織なのですか?

 

越川:ひとことで言えば、「関わっている各メンバーの能力を把握し、課題解決のために必要な部分を必要なだけ調達して組み合わせる」という考え方です。

 

以前から、企業と個人の関係性は、従来の上下関係から横並びの関係になると感じてきました。もし企業と個人がフラットな関係になった時、どのような組織になればメンバーが能力を発揮できるのかを考えた末、ギグエコノミーとティール組織を実証実験することにしたんです。

 

AIの普及によりスキルのアンバンドル(細分化)が進みます。経営者は従業員が持つ能力を細かく把握し、需要に応じてその能力を組み合わせることが求められます。ひとりでは顧客の課題解決が難しくても、たとえば、Aさん、Bさん、Cさんの3人の能力を掛け合わせるというやり方で、顧客が抱える複雑な問題が解決できるのです。

 

――実際にはどのようなメンバーがいるんですか?

 

越川:弊社のメンバーは、アグリゲーター(※)と呼んでいます。メンバーは国内だけでなく、パリやシアトル、バンコクなど海外にもいて、合計で25人です。それぞれ別に本業を持ち、複業として参加することを条件としています。本業は学生や会社社長、主婦など様々ですね。(※アグリゲーター=複数の企業に関わり、短期間に社内外の多様な能力を集め、差別化した商品・サービスを市場に負けないスピードでつくりあげる新しい職種のこと)

 

普段メンバー間のやりとりは、Skypeなどオンラインで行うことが多いですが、現地に出向いて直接顔を合わせることもあります。

 

僕は各メンバーのスキルを把握しているので、必要に応じて仕事を割ることができます。僕が掲げる週30時間労働の実現には、日本だけでなく海外にもメンバーがいる方が都合がいいので。たとえば、今が夕方だとして、明日の午前中までに資料を用意する必要があるとします。

 

このとき、シアトルにいるメンバーに資料作成を頼めば、僕が朝起きた時には資料が完成しているんです。日本で夕方であれば、シアトルでは朝の時間帯です。時差を利用すれば僕の労力を減らすことができるわけです。

 

 

「何でもやります!」と自信たっぷりの人を採用

 

――越川さんと一緒に仕事をするハードルは高そうに感じます…。

 

越川:書籍を出したり、講演に出させていただくなど世間への露出が増えたので、そのように言われることはありますね。

 

そうそう、面白い採用ケースがありました。年配の方だったのですが面談中に「何でもやります!」と言うんです。既存のメンバーには若い人が多いのですが、彼らは「何でもできます!」とはあまり言いません。それだけに新鮮に映り、採用を決めました。

 

――それはなかなか懐が広いですね…!

 

越川:もちろん、そこには意図があって。違った価値観を持った人と一緒に働いてみたかったんです。ベンチャー企業にとって、いかに新しいアイデアを出せるかが重要なので、多様な人材が近くにいる環境が不可欠なんです。

 

様々な価値観やスキルを持った人材がいるメリットは、アイデアをターゲットに合わせてまとめる段階で役立ちます。自由に出されたアイデアを収束させる時は、ある程度の知見を持つ人がいる方がスムーズです。

 

あと、僕はリスクを考えずに決断してしまうので、暴走を止めてくれる人がいるのはありがたいです(笑)

 

一同:そうなんですね!すごく緻密で戦略的に動かれているという印象があったので、意外でした(笑)

 

――これまで多くの企業を支援してきた越川さんだからこそお伺いしたいのですが、越川さんが考える“企業と個人がお互いに力を発揮できるような組織」に必要なものについてお伺いしたいです。

 

越川:上から指示を出して従業員を従わせるのではなく、企業と社員がともに自律的な成長を目指していける組織が理想ですね。今年話題の「ティール組織」なんかはまさにそうだと思います。

 

▲越川さんの著作『新しい働き方~幸せと成果を両立するモダンワークスタイルのすすめ~

 

編集後記

輝かしい経歴を歩まれている印象にも関わらず、取材時には決しておごらず終始、こちらの質問に丁寧に回答されている姿が印象的でした。活躍できる背景には、越川さんの能力だけでなく、人柄の存在もあるなと感じました。

 

また、取材中に越川さんが繰り返し強調したのは、「働くことは目的ではなく手段である」ということ。起業という選択をしたり、週休3日や週30時間労働を実現できたりしているのは、越川さんの頭の中で目的と手段が明確だからなのですね。

 

 

 

※本記事は「働き方メディア Fledge」との提携により掲載を許可された記事です。

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