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世界中を舞台に活躍するフリーランスの音楽家

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読了時間 : 約4分35秒

――KASHIWA Daisuke

広島出身、東京在住。
学生時代、プログレッシヴ・ロックに影響を受け作曲を始める。 2004年にkashiwa daisukeとしてソロ活動を開始し、2006年 ドイツのレーベル、onpaより1st “april.#02” をリリース。
2007年 MIDI Creative / nobleより、2nd “program music I” を発表。 2009年 3rd “5 Dec.” をリリース。
同年6月にはヨーロッパ3ヶ国8都市を廻るツアーを敢行し、世界三大クラブと呼ばれるベルリンのクラブ、BerghainでCLUSTERと共演し、旧ソ連軍の秘密基地跡で毎年開催されるドイツ最大級のフェスティバルFusion Festival 2009にも出演。

自身の創作活動の他、劇伴作曲家、リミキサー、マニピュレーター、ミックス&マスタリングエンジニアとしても活躍中。
2011年 Virgin Babylon Recordsより、ピアノアルバムである4th “88” をリリース。 2012年 5th “Re:” をリリース。
新海誠 監督作品 “言の葉の庭” の音楽や、黃飛鵬 (fei pang Wong) 監督作品 “十年 – 冬蟬(香港映画)” の音楽を担当。
また中国 TVアニメーション番組 “山海宝贝” の劇伴を担当。

kashiwadaisuke.com

 

 

KASHIWA Daisukeさんインタビュー


フリーランスの音楽家、KASHIWA Daisukeさん。

サラリーマンから新海誠監督 “言の葉の庭”の音楽を担当するまでになった経緯、またKASHIWAさんから見たフリーランスのメリット・デメリットなどをインタビュー!

彼がフリーランスとして成功した秘訣とは?

 

 

退路を断つべく仕事を辞め、30歳のタイミングで上京を決意。


――いまや世界中を舞台に活躍する音楽家のKASHIWAさんですが、フリーランスになられたきっかけは何だったのでしょう?

 

KASHIWA Daisuke(以下、K):きっかけは、上京です。それまでは、福岡でサラリーマンとして勤める傍ら、帰宅後に深夜3時ごろまで音楽を作って、3~4時間寝てまた出社して、というかなり無茶な生活を送っていました。大変でしたけど充実した毎日でしたね。でも、30歳を目前にしたタイミングで結婚もしたので、いつまでもだらだらやっていてもしょうがないと思い切り、サラリーマンを辞めて上京しました。福岡時代にアルバムのリリースや広告の仕事をもらっていた経緯もあり、少しずつ仕事を広げていくというスタイルで、気付けば約10年経っていましたね。

 

 

一回一回が勝負。責任感が常に求められる。


——フリーランスとして苦労されていることは?

 

K:若い頃はただ趣味として音楽を作っていました。でも、会社に守られないフリーランスになった以上、一回一回の仕事が勝負です。失敗したら次はない、そんな責任の重さを常に痛感しています。引越しや海外公演など、物理的に難しい時以外は仕事を断ることはほとんどありません。自分を求めていただいている以上は、精一杯応えたいと思いますし、クライアントの要望に自分の力が試されているという覚悟を持って仕事に臨んでいます。過去に、かなり無茶なオーダーをいただいたこともありましたが、悩んでいる時間もないので(笑)なんとかやり遂げたのもいい経験になっています。

 

 

自ら営業をするのではなく、9枚のアルバムが名刺替わり。


——仕事はどのように広げているのですか?

 

K:実は自分から営業活動をしたことはあまりないんです。フルアルバムを9枚出しているのですが、聴いてくれた方から仕事をいただくという状況ですね。

 

——新海誠監督の映画「言の葉の庭」の楽曲をご担当された経緯とは?

 

K:もともと僕が新海監督の「秒速5センチメートル」を観て感銘を受けたのがきっかけです。決して仕事をもらいたいという動機ではなく、自分の作品を聴いてほしいという一心でアルバムを何枚かお送りして。それから5年後に、雨の日の物語を作ろうと思い立った監督が、僕の『88』という作品を聴きながら制作作業を進めてくれていたことを知りました。嬉しかったですね。

 

 

がむしゃらに突き詰める。その蓄積が、成長の原動力。


——フリーランスになると、スキルアップ面で悩む方も多いと伺います

 

K:好きなことを仕事にするのですから、自分の道を突き詰めるしかないように思います。睡眠や自由になる時間やお金を削ってでも、10代や20代の若い頃にがむしゃらに取り組んだ経験こそが財産ですし、かけた時間だけがその人の実力になると思うんです。

 

——スランプからの脱出方法はありますか?

 

K:正直、ないですね(笑)戦い続けるしかないと思います。僕もスランプの時にはひたすら家の中をうろうろ歩き回ったり、横になってみたりと、とにかくあがきます。それでも抜けられない時もある。でも、みんなにもスランプがあるんだ、自分だけじゃないんだ、という気付きがあると、救いになりますね。

 

 

将来への不安や、社会的立場の弱さを乗り越えて。


——フリーランスとしてのデメリットとは?

 

K:一番のデメリットは不安定だということ。仕事の件数は平均で月3〜4本ですが、まったくない月もあったりすごく忙しい時もあったりと波が激しいです。まだ小3と小1の息子たちの将来を思えば、歳を重ねるほど不安にはなります。

 

——日本ではフリーランスの社会的立場の弱さが指摘されます。

 

K:敷かれたレールから外れるとダメという見方も根強いですね。実際、結婚時や住宅購入時のハードルも高い。仕事を請ける立場になると、クライアントの要求に対しても、なかなか強く出られないジレンマもあります。フリーランスのみんなが団結し、組織として力を持って社会的地位を獲得できるような働きかけがあるといいですね。

 

 

好きなことを仕事にする幸せ。幸せに暮らすということ。


——苦労や不安が多くても、フリーランスとして続けることのメリットとは?

 

K:幸せである、ということでしょうか。好きなことを仕事にできていることは幸せですし、作品を聴いてもらった方から良かったという感想をいただくと、やりがいを感じます。むしろそれがないと続けられないですね。また、海外からお声がけいただいてツアーに行き世界中の方々との交流や出逢いが生まれるなど、自分の音楽が地球規模で広がっているのが嬉しいですね。それと、子供ができてから、自分自身が幸せであると思える人生を過ごしたいと思うようになりました。若い頃は音楽一辺倒でしたが、いまでは生活面でも満たされることの大切さを実感しています。

 

 

一生完成しない、人生のライフワーク。


——今後の目標は何ですか?

 

K:目指す世界を作りあげるということですね。昔からものを作るのが好きで、大学も工学部を出ているんです。水槽や箱庭をつくるのも好き。音楽においても、音を使って1つの世界をつくる、という感覚です。一般的な音楽家とはタイプが違うんですが、こんな音楽家がいてもいいんじゃないかと。でも、まだまだ高みに届かないですね。むしろ、高みを目指して登るほど、ゴールが益々高くなって一生辿りつけない感覚です。でもある時、太宰治の〝作家は、一つの大作を作ることに執心してはいけない。息をするように毎日書くことこそが本文なのだ〝というニュアンスの言葉にハッとしました。生き方そのものが1つの作品ではないですが、これからもただ毎日、コツコツと音楽を作りあげていきたいですね。

 

【 1日のタイムテーブル 】

7:00  起床

朝食&子供を学校へ

午前中は主にメールの確認などの事務作業

昼食

午後は音を作る作業に没頭

16:00  子供の帰宅

夕食

22:00  就寝

 

※本記事は「働き方メディア Fledge」との提携により掲載を許可された記事です。

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