ブランドロゴをデザインするゴールのひとつとして「より多くの人の目を惹きつけ、ブランドを魅力的に映し、記憶に残る」が挙げられます。少なくともロゴデザインを依頼するクライアントが期待するところは、ここが大きいのではないでしょうか。
ロゴデザインのこうした成否はデザイナーの「勘どころ」に頼るところが大きかったのですが、アイトラッキング(ユーザーの視線追跡)技術を用いることで、科学的なアプローチができるようになりました。
そこで本稿ではアイトラッキングの結果をヒートマップ化し、点数として評価してくれる「Dragonfly」というツールを用いて、ブランドロゴの新旧パフォーマンス比較を行ったレポートをご紹介します。
各ブランドの新旧ロゴデザイン対決
(※編集註:本稿にて各ロゴのヒートマップ状況を確認するためには点数がついていないほうの画像をご覧ください。またヒートマップはユーザーの視線が集中するところほど赤く表示されます。)
■Instagramロゴ
先日ロゴデザインの変更を行って非難の声が上がったInstagramですが、以前のInstagramのロゴは「Dragonfly」の解析によると「58点」と平凡な評価だったようです。
また同アプリは「ノスタルジーに依拠したデザインで、ユーザーの視線を集めるところは『Insta』のテキスト部だが、明るい背景色がその効果を相殺している」と示唆したそうです。
一方で、新しいInstagramのロゴは「68点」で以前のロゴより10ポイント高評価となり、「よりインパクトがある」との結果に。「Dragonfly」によると、「白いカメラの枠線によってさえぎられたカラフルなグラデーションがロゴの中心にユーザー視線を集めている」と示唆しました。
Instagramの新しいロゴは一部の既存ユーザーから歓迎されませんでしたが、「視線を集め、記憶に残る」という部分では以前のものよりもパフォーマンスが上回る結果になりました。
■Googleロゴ
続いてGoogleのロゴですが、以前の細身のフォントのロゴは「67点」の評価。Googleのようなアイコン的な企業では驚くことはないスコアでした。
一方で新しいロゴは「65点」と以前のロゴに比べて2点低い評価に。この原因を同アプリは「2番目のgの輪状のフォルムが失われたことで、ユーザーの視線が分散した」と分析したそうです。
■Airbnbロゴ
Airbnbの以前のロゴは「76点」の高評価をつけました。下図のヒートマップを見ても、ロゴ全体にユーザーの視線が集まっていることがわかりますね。
一方で、新しいロゴも「75点」と同じくらいいい評価になりました。これはAirbnbの創設者がデザインやアートをバックボーンとして持っていることと関係があるかもしれませんね。
(※編集註:Airbnbの創設者は両者とも芸大出身)
■Twitterロゴ
Twitterの以前のロゴは「47点」とあまり芳しくない評価でした。現在のものより大きなくちばしをもっているのが特徴ですが、ユーザーの視線は緩慢で、思わず見入るようなポイントが以前のロゴにはなかったようです。
一方、新しいTwitterのロゴは「58点」と以前のロゴより大幅に高い評価となりました。くちばしがより焦点となる位置に来たことで、ユーザーの視線が鳥の頭部から分散することを回避できたようです。
これまで見てきたように、Googleのロゴはマイナーチェンジの範囲ですが、それでもロゴデザインのパフォーマンスは変化してしまいます。
実際にアイトラッキングをヒートマップ化してくれるツールがないと、ロゴデザインでユーザーの視線を明確に確認することはできませんが、Instagramの例を見るとデザインの細部がユーザーの視線を誘導していることがわかります。
ロゴデザインでは「ユーザーの視線が集中しやすいポイント」を意図的に作り出すことを意識してみるのもいいんじゃないでしょうか。