Webデザインにおいて最近、「人間に合わせた」とか「感情を考慮した」ということが重要なこととしてしばしば言われます。
Webサイトは人間が使うものである以上、どれほど「感情」を理解したデザインができるかが大切になるということです。
本記事では、具体的な事例から、Webデザインにおいて重要な要素となりつつある「感情」についての「インテリジェンス」について考えてみます。
Twitterの場合
2016年3月、Twitterは10歳の誕生日に合わせて「いいね」ボタンに素敵なアニメーションを1日限定で登場させました。
ハートのアイコンが紙吹雪をとばしながらぴょんぴょん跳ねる楽しいエフェクトでしたが、たった一日で元に戻されてしまいました。
「いいね」をするたびに味わっていたエフェクトの楽しさが急になくなって残念に思った人もいるのではないでしょうか。
実はTwitterには、この「いいね」アイコンをめぐる論争が過去に巻き起こっていました。
2015年の終わりごろに、TwitterがUIを星マークからハートへと変えたときのことです。
Twitter社はこの変更をきっかけとしたインターアクションの増加に期待していましたが、星にせよハートにせよ、ネガティブな内容のツイートに対する共感のシンボルとしてふさわしくないと議論になりました。
これはTwitterだけの問題ではありません。たとえばFacebookは、レスポンスの可能なタイプを増やすことでこのジレンマをいくらか解決しています。
デザインと「感情的インテリジェンス」
Beth Deanさんという女性がMediumに投稿した記事で、Webサイトで知り合いの可能性がある候補として亡くなった母親を表示された体験を語っています。
彼女の記事によると、こうした体験を避けるためにもデザインにおける感情的知性を意識することが大切で、感情的知性は自己意識・自己制御・モチベーション・エンパシー・対人スキルの5つの要素で成り立っているといいます。
・自己意識…ユーザの目線に立ってより良いエクスペリエンスを提供し、相手に合わせることを意識しましょう
・自己制御…色んな意味で数字を常に意識するようにしましょう。アナリティクスやエンゲージメント率が上がっても、ユーザの気持ちや立場をないがしろにすれば企業の信用は失墜します。
・モチベーション…ターゲットオーディエンスであるかないかに関わらず、常に相手を理解しようという姿勢を忘れないでください。
・エンパシー(共感)…謙虚な姿勢でユーザに接することを心がけましょう。
・対人スキル…ソフトウェアの話に対人スキル?と不思議に思うかもしれませんが、ここでの対人スキルとは製品がユーザに対して適切な雰囲気で対応できているかを指します。悲惨な事故にあった友人に「素敵な1年だったね!」と声をかけないのと同じように、製品もユーザに気をつかうべきです。
まとめ
人は生きていれば良いことも悪いことも経験します。それは仕方ありません。
ソフトウェアがここまで進化しているからこそ、感情的知性を意識して人間らしいエクスペリエンスを提供していく必要があるのではないでしょうか。
ソフトウェアというのは“一般”で“ふつう”のユーザを想定してつくられていますが、より良いソフトウェアというのはあらゆるパターンを想定し対処できるもののはずです。
(※本記事は、Emotional Intelligence and the Uncomfortable Side of Designを翻訳・再構成したものです)