私たちはテクノロジーのレイヤー機能にたくさんの注意を払いますが、これが感情的なものであることを忘れがちです。テクノロジーはいつでも生活のあらゆる側面に組み込まれており、デバイスとの感情的で知的なインタラクションは、モバイルデバイスの未来を形づくっているのです。
感情的で知的なデザインは、モバイルUXデザインの最適な原則ないし実践の一つとして位置付けられています。これは感情の喚起のみならず、テクノロジーを経験するときに生じる思考のあり方にも関わります。
では、どうしたら感情的な度合いを優先的に結びつけたテクノロジーをデザインできるでしょうか。心の知能は、感情的なデザインへのアプローチを有意義なものにし、喜びを超えた感動をもたらすと考えられます。それではさっそく、心の知能の特徴について述べていきましょう。
心の知能:新しい意味
Googleによれば、心の知能とは、感情を意識、制御、表現し、そして対人関係を思慮深く、共感をもって扱う能力です。
昨今のテクノロジーの発展は、感情的な認識をモバイルアプリへ組み込むことが可能にし、心の知能というコンセプトへ新たな意味を生じさせました。未来のモバイル体験は、心の知能と結びついた人工知能(AI)によって形作られるのです。
なぜ感情はビジネスのために重要なのか?
心の知能とは、対人関係において最も重要な領域の一つです。こうしたことを意識していなくても、たとえばピザの注文から恋人とのやりとりといったあらゆることに関わっています。
とりわけビジネスにおいて、これほど影響力の強いことがらを無視することができるでしょうか。マーケティングで働いている誰もが、感情の販売力を知っています。モバイアルアプリのデザインに実装された感情は深い影響力を持ち、アプリを際立ったものにします。人間のためにデザインをしているということを覚えておいてください。デザインとは、全体的な経験のためになされるものなのです。
製品をつくるためには、ユーザーとの長期に渡る関係を築くことになります。そこで、こうしたことを助けてくれる開発者やデザイナーを見つける方法、さらにアプリ開発に伴って増加するコストとそれらの管理のための考慮事項について、知っておく必要があります。
EQをモバイルUXに組み込む方法
私たちのデバイスはどんどん洗練されてきています。カメラやオーディオ、そして身体感覚のような様々な入力情報が収集ないし分析され、感情を検知するためにAIテクノロジーが用いられています。
感情的知性を搭載したモバイルのユーザーエクスピリエンスは、以下の3つの主要領域に分けることができます。
・自然言語処理
・表情認識
・物理信号の解析
自然言語処理
人間はいつでも、テクノロジーとのより自然なコミュニケーションを願ってきました。昨今の自然言語処理(NLP)の開発は、それを可能にしてくれます。これは新型のUIである対話型インターフェイスのことで、会話と感情を融合させます。
こんにちの市場では、チャットボットと音声ユーザーインターフェイスの二つが、主要な対話型インターフェイスとして存在しています。
チャットボットよりもすごいもの
話しことばのパターンを認識する人工神経網という、チャットボットの新世代が登場しました。
Xiaoiceはこのテクノロジーの好例です。これはマイクロソフトが製作した最新のNLPチャットボットであり、いまのところ中国の市場にのみ出回っています。これは人間のポジティブかネガティブかのキューに基づいて感情を分析し、フレーズや回答を調整することができるのです。
Xiaoiceアプリは会話から詳細を学習して記憶することが可能で、すでに4000万人以上の人々が利用しています。
Xiaoiceを他の競合製品に比べて突出させている重要な機能とは、テキストから感情を認識する能力です。チャットボットは感情移入と感受性によって、はじめからはプログラムされていない応答が可能です。こうした学習能力によって、チャットボットはワクワクしたものになっています。
音声分析
ボットは声の抑揚から感情を理解することができます。こうした機能を持ったアプリの代表的な例として、Beyond Verbalによって開発されたMoodies Emotions Analyticsがあります。
これはリアルタイムで会話を聞きながら、感情のスペクトルを解読することができます。このアプリは、インターフェイスとユーザーインタラクションをより高度なレベルへ引き上げることができます。
表情認識
表情とは、人間の表現の中で最もパワフルです。そして顔認識は、主にソーシャルネットワークで写真から友人を自動検知するために利用されています。感情的で知的なデザインの製作にとても役立つはずです。
Facebookのデザインが、心の知能をどのように利用しているか考えてみましょう。「いいね(Like)」はユーザーの感情を可視化してシェアすることを可能にし、さらにはデザイナーやマーケティング担当者に感情的なデータを提供するために、いくつもの反応が可能になっています。
このテクノロジーはもちろん、プライバシーに関して多くの問題を抱えています。企業や第三者に「感情」の情報が利用されていることを知って、不快に思う人もいるでしょう。しかし表情認識は依然としてテクノロジーに組み込まれ、新たなUX/UIデザイン制作のために用いられています。
物理信号の解析
今日のテクノロジーは、感情を解釈するだけではありません。驚くかもしれませんが、デジタルデバイスはパーソナルコーチとして、感情的な幸福を助けてくれさえするのです。携帯電話がストレスを理解し、それを処理するためのヒントを教えてくれることを想像してみてください。
市場には、脈拍、血圧、そして体温から感情を読み取るセンサーを用いた製品として、Feel wristbandとSpireの二つが出回っています。信じられないようなことですが、これらは感情に基づいて提案をしてくれるのです。
デザインに感情が大切である理由
たくさんの感情に関するデータが、テクノロジーに関わる経験を改良するわけではありません。すぐれた感情的で知的なデザインを製作する試みは、デザインの捉え方に変更を迫るような多くの課題に立ち向かうものとなるでしょう。
こんにち、デザイナーはデザインの機能性に焦点を当てています。しかしテクノロジーはすでに次の段階に移行し、感情のためのデザインは異なるアプローチを必要としています。プロダクトデザイナーはデータを収集して感情にマッピングし、様々な方法でこれらの感情を喚起することによって、感情への総合的な感度を向上させることができるでしょう。そうすることで、クリエイターはユーザーの気持ちを理解し、ユーザーの感情を尊重したデザインができるようになるのです。