私が生まれ育ったテルアビブでは青少年運動がとても盛んで、市内では多くの選択肢が提供され、ほとんどの子供たちが参加しています。私は12歳の時にシースカウトを選び、2010年に卒業したのですが(それも優秀な成績で!)、いまでもまだシースカウトにいるような気持ちになります。
シースカウトでは、舟漕ぎや帆走といったいろいろなボートで海洋活動を行います。10代の子が船長で、みんなグループのリーダーであることを真剣に受け止めています。船長になることはジョークではないのです。
彼らが仕事の深刻さを理解しているとしても、問題はあります。10代のインストラクターと大人の部隊のマネージャーとの意見は、決して一致しません。年齢差がそれほど重要ではないとしても(部隊のマネージャーは大抵25歳〜35歳です)、インストラクターというのはいつも、自分がいちばんものごとをわかっていると思っているのです。
大学の教育工学の3年生のとき、友人のElla Zivと最後のプロジェクトのためのクライアントを選ぶことになりました。私たちはシースカウトを一緒に卒業したので、私たちの部隊をクライアントに決めたのです。
プロジェクトにおける初めのタスクは、テクノロジーで解決できる問題を調査して見つけることでした。私たちは調査の中で、インストラクターが、経営陣の望むようには自身の役割を理解していないことを知りました。
経営陣によれば、インストラクターは、インストラクション、リーダーシップ、マネジメント、そして海洋技能の4つのカテゴリで評価され、カテゴリ毎に異なるタスクと責任が求められます。しかしインストラクターは自らの役割を以上のように理解してはおらず、大抵一つか二つの、自分にとって簡単なカテゴリだけを気にかけ、他のカテゴリには十分な時間と注意を使いません。
インストラクターの誤った理解は仕事の質を落とし、インストラクターの見習いがシースカウトを辞めることにまでつながります。すると部隊の人数は減り、よりより子供を育むという目標の妨げにもなります。
Z世代を追い詰めない
私はいまでも、シースカウトで10代のときに感じた、インストラクターとしての責任感の大きさを覚えています。インストラクターは自らの仕事をミッションと考えており、大きな組織に成長させて維持することで、さらに新たな人々を魅了します。
このミッションは、容易ではありません。週に2つの活動を準備し、特別なイベントを主導し、両親に電話し、週毎にそれらをアップデートし、登録と料金を管理し、良い船員でいるのです。こうしたすべてに取り組むことで子供たちにとっての模範、そしてリーダーになることができます。
大人はタスクの優先順位で決めるけれど、ティーンエイジャーは、タスクが自分の大切な時間に値するかを考える
たくさんのタスクがあるときには、自然に優先順位が決まります。このようなとき、大人は大人はやるべきタスクを優先順位で決めますが、ティーンエイジャーは、どのタスクが自分の大切な時間に値するかを考えます。しかし残念なことに、どのタスクも重要で、はずせないものなのです。そしてインストラクターがいくつかの責任を取るのを諦めたときに、彼らの仕事は良くないものになっていきます。中にはとても悪い仕事をする人もいて、そのために子供たちがシースカウトを去ってしまうこともあります。私がそうであったように、シースカウトは人を良い方向へ導くことができるのに、残念なことです。
しかし私たちはユーザーインタビューのあと、実際の問題は仕事量ではないのだということを理解しました。インストラクターは、良い仕事をするためにはすべてのタスクが重要であることを知っていると明言します。ただ、彼らはそれらをやりたくないのです。
Z世代は、誰よりも自分こそが、ものごとを知っていると考えています。特に、部隊を運営し、大して重要に思われない面倒なタスクを与える30歳の「老人」よりも。Z世代は、大人がいなくてもやっていけるのです。私たちはどうすれば、重要でないように思われるタスクがインストラクターとしての成功に重要であると、彼らの若い感性に信じさせることができるのでしょうか。
私たちは、ティーンエイジャーがどのような理解を持っているかを調査することから始めました。何が彼らに影響を与え、そして何が彼らに決定をさせているのでしょうか。Z世代はどの世代よりも影響を受けやすく、さらに競争心が強いといえます。
徹底的な調査の結果、4つの結論に達しました。
1. 心の変化には時間がかかるので、(3年間の)インストラクションの最初の1年という、特定の期間内に収まるプロセスを検討する必要がある。
2. 心の変化は意識によってなされるもので、良くない習慣を変えるためには現状を自覚する必要がある。したがって、アプリの制作のためにはセルフリフレクションの方法が必要。
3. 心の変化あり方は個人によってさまざまであるため、アプリにはそれぞれの状況と進捗によってカスタマイズできる適応力が求められる。(これは開発段階において鍵となる要素でした。)
4. 心の変化は孤立状態では起こらないので、社会的な要素が重要。
心を変化させるマシン
私たちは、インストラクターの1年目の仕事を通して彼らを導くアプリを作成することにしました。このアプリは、彼らが無視しがちなタスクこそが成功に不可欠であると示すことによって、より良いインストラクターになることを促します。そしてこの励ましは、ゲーミフィケーションとソーシャルメディアに似た活動を用いて行われます。
私たちは、これらすべてのタスクのリストを集め、4つのカテゴリに整理しました。このカテゴリは、インストラクターの仕事にとってどれも重要です。このため、インストラクターはそれぞれのカテゴリでの達成の違いを見ることができます。
インストラクターは、写真やテキストを使ってタスクの完了を友人とシェアします。それぞれのシェアはカテゴリごとの強みと弱みを示すプログレスバーとして反映されるので、彼らは自分が向上すべきポイントを知ることができます。さらに、アプリは弱点を克服するためのタスクを教えてくれます。そして、それぞれのタスクのページにはお互いの成果を見てインスピレーションを得たり、自分の成果を確認できるフィードが含まれています。
私たちの提案にはソーシャルメディアやゲーミフィケーション的な傾向がありますが、どちらの要素もティーンエイジャー、とりわけZ世代へ大きな影響を与えていることを証明されています。私たちは社会的な影響力を用いて彼らの習慣を変化させ、ゲーミフィケーションを利用して新たな習慣を維持し、関わりを生み出したいと考えたのです。
ゲーミフィケーションの要素
ゲームプレイヤーはレベルの達成とスキルの開発によって満足感を得ます。攻略する感覚が継続的な努力の動機づけになるのです。私たちのアプリでは、それぞれのタスクの完了によって攻略する感覚が喚起されます。
ゲーミフィケーションにおける達成の要素として、ポイントやバッジ、レベル、リーダーボード、プログレスバー、そして証明書があります
私たちの主な目標はタスクに向かうユーザーの心の変化なので、これらの要素をアプリの基礎としました。彼らの責任をタスクというよりもチャレンジとして扱い、その達成が報いられることで、タスクはゲームの一部となります。彼らをより良いインストラクターにするはずであるものの、なかなか自分一人ではできないタスクは、勝って自分自身を証明したいという意欲によって成し遂げられるのです。彼らはアプリ内でだけでなく、現実の世界でも報酬や奨励を得ています。タスクを放棄しないことで彼らの自尊心は高まり、さらに見習いやマネジャーは幸せでいられます。つまり、ウィンウィンウィンなのです。
プログレスバー
プログレスバーは、アプリの主な要素です。それぞれのタスクがより大きなミッションの一部であることを表現するために、私たちはプログレスバーを円で表すことにしました。
バッジ
各タスクのアイコンをバッジとしてデザインしていますが、これは最初の達成の後にだけ与えられます。
リーダーボード
ユーザーの成功の基準が何かに注意を向けておくことが重要です。最高のユーザーとは、どんな人でしょう。最も多くのポイントを集める人でしょうか、あるいは頻繁にアプリを使う人でしょうか。
インストラクターが4つのすべてのカテゴリで優秀になるように励ますために、それぞれのカテゴリで、最も多くの挑戦できたインストラクターをリーダーボードに示すことにしました。もちろん、一人のインストラクターが4つのカテゴリすべてで勝者になることもできるのです。
ポイント
各タスクを達成したあと、インストラクターは特定のタスクに対するスターを獲得します。小さな報酬で達成感を得ることができるのです。そしてよりたくさんの達成によって、より高いスターのスコアを獲得できます。
ソーシャルエレメント
2018年の1月に公開された研究は、Z世代がオンライン上の他の世代よりも感情的で、ソーシャルメディアに影響されていることを明らかにしています。同調査は、いじめられるとか自尊心の低いなどの悪影響を示しています。しかし私たちは同じ効果を、勇気づけあってより良いインストラクターになるという目的のために使おうとしているのです。
私たちのアプリのシステムは、シェアを基盤としたシステムに基づいています。互いの成果や成功をシェアすることで、良いインストラクターであるための新たなコンセンサスが作られると信じています。
心の変化と冷静さ
私たちのZ世代のテスターは、初めにアプリを与えられたとき、8秒のアテンションスパンで、10分間ほど遊んでいました。これは一つの成功です。
彼らの反応は、まさに望んだ通りのものでした。それは素晴らしい成果ではありますが、もっと望めるはずです。より多くの統計、達成すべきミッション、社会的インタラクションのための選択肢、獲得すべきバッジが有効でしょう。
私たちの出発点では、彼らはそれほど多くを求めずに、それでも成果を上げていました。これが変化の始まりです。
すでに述べたように、心の変化には時間がかかります。Z世代に対して、ただやるべきことを伝え、彼らがそれをやるということはありえないのです。彼らは自分で決定を下すために、自立していて、自信があって、自律的でいることを好みます。だからZ世代に対して習慣を変えることや仕事のやり方を言い含めても意味がないのです。彼らは、自分で決定する必要があります。彼らの前に鏡をおくことで、うまくいけば時間とともに、彼らはより良い選択のためにその鏡を使うことでしょう。