・宇宙採掘というとかなりSFチックに聞こえますが、将来的には現実のものとなるでしょう。
・研究者たちは、この特殊な細菌が小惑星から金属を抽出する性能を調査しています。
・Shewanella oneidensisという細菌は、極限状態の宇宙でも生存できることが知られています。
バイオマイニングとは、微生物(マイクロマシン)を使って岩石鉱石から経済的に価値のある金属を抽出するプロセスです。微細な生物は、硫化物/鉄を含む鉱石からの金属の抽出を促進します。
現在、バイオマイニングは鉱業全体の中でごく一部でしか使われていません。採掘後の廃岩から残存物を抽出したり、岩石中の目的の物質の割合が少ない場合に使用されます。すでに地球上では、金の5%近く、銅の15%近くがバイオマイニングで抽出されています。現在、ニッケルやウランなど、硫黄含有鉱物に多く含まれる有価金属も抽出されています。
現在、コロラド大学ボルダー校の研究者たちは、バイオマイニング・プロセスを使って、宇宙の小惑星から貴重な物質を採掘できないか探っています。SF映画のような話ですが、将来的には宇宙採掘が現実のものとなるでしょう。
単なる金融ブームではない
バイオマイニングは、従来の採掘方法に比べ、かなり安価に行うことができます。特定の種類の岩石にバクテリア(と水)をかけて、そこから目的の製品を取り出します。
太陽系の小惑星には、電子機器や宝飾品などに使われるものの、地球上では入手が極めて困難な物質が過剰に含まれているものが多くあります。これらの小惑星には、将来、地球上で供給が制限される可能性のある約44種類の絶滅危惧元素が含まれています。
研究チームは、火星、月、小惑星のレゴリス模擬物質から人工的な低重力環境下で、金属イオンを還元し、酸素の有無に関わらず生息できる細菌(Shewanella oneidensis)の鉄抽出性能を調べる予定です。
実はNASAも、そんな小惑星の1つである16プシケを研究するために、2022年にプシケ探査機を打ち上げる予定です。この小惑星は、小惑星帯の中でも地球から3天文単位近く離れたところにある金属製の大型小惑星(地球の月の直径の約16分の1)です。
探査機は小惑星プシケの軌道を周回しながら、ガンマ線・中性子スペクトロメーター、マルチスペクトルイメージャー、磁力計、電波計などを用いて小惑星の特性を分析します。氷や岩ではなく、金属でできた世界を研究する初めてのミッションとなります。
小惑星16 Psycheの芸術的な姿 | 画像元: Maxar/NASA/JPL-Caltech
16 Psycheは700 quintillion相当の鉄やニッケルなどの貴重な金属で構成されていると推定されています。これは、物理的な資産と仮想的な資産を含めた世界のお金の総量よりもずっと多いのです。
経済的なメリットだけでなく、バクテリアによる宇宙採掘は、次世代の深宇宙探査機や宇宙ステーションを作るための金属資源を提供することができます。成功すれば、宇宙機関は完全に宇宙で構造物を開発できるようになり、地球からの重いロケット打ち上げの必要性を減らすことができると予想されます。
また、重工業や鉱業はすべて宇宙で行い、私たちの惑星は生きるためだけに確保することができると研究者は考えています。