ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(以下RCA)はロンドンにある芸術大学で、世界の大学ランキング「アートデザイン分野」で1位に輝く超一流の大学です。今年日本で大ヒットした「オデッセイ」の映画監督リドリー・スコットや、ファッションブランド「バーバリー」のCEOクリストファー・ベイリーなどが卒業生として名を連ねます。
そんなRCAの卒業制作ファッションショーは毎年世界中のデザイナーが注目しており、今年もショーから新たな才能が発掘されています。
今回はその卒業生の中から今注目すべき5人のデザイナーをご紹介します。プロ顔負けのファッションショーの模様と一緒にご覧ください。
Stefanie Tschirky
女性服デザインを専攻する彼女は黄金比の理論やカオス理論といった科学的な理論を取り入れて、カオスの中に「完璧さ」を見つけ出したそうです。インペリアル・カレッジ・ロンドン(こちらも世界トップレベルの大学)の数学科や物理科の学生と議論しながら、完璧さと美しさの科学的・芸術的な意味を追求したとのこと。その結果生まれたのが、この作品。
糸とラップをミックスさせて第二の肌のような質感を表現しています。モデルには「暗く、脆く」というディレクションをしていたそうです。
Oksana Anilionyte
液状素材の研究を熱心に行ってきた彼女の作品は、液体の服をまとっている感覚を表現しているそうです。
ライラック色とオレンジ色の流動的な模様が施された肩掛けのトップは、ポリマーをベースとした素材でできていて、体温や汗が衣装を変形させ、身体の形にフィットすることで第二の肌のように着られるそうです。
「液状素材は人間の体と相性のいい新しい形の生地になりつつあります」と彼女はインタビューで答えています。
Mao Tsen Chen
彼の作品のコンセプトは「人間と動物の入れ替え」です。もし動物が私たちから物を取り始めたらどうなるのか?という疑問を追求しています。「私たち人間が毛皮を着るということは、動物の皮膚や衣服を奪っているようなものです。もし、動物が逆のことをして、私たちから皮膚や衣服を奪ったらどうなるのでしょうか。」彼はインタビューでこう語っています。
偽物の毛皮、シュニール、ポリエステル、セルロース、綿などを使って贅沢なコートを作り上げ、層構造にすることで大きなボリュームを出しています。
Niels Gundtoft Hansen
男性服デザインを専攻するデンマーク人の彼は、子供の頃に故郷のコペンハーゲンで遊んだ思い出を表現しました。
「当時のコペンハーゲンは冷え込んでいて、孤立した北ヨーロッパの景色があった。」と彼はインタビューで答えています。
油の海、濡れたアスファルト、錆びついたコンテナの街の中で迷子の子供たちが遊びながら服を汚していく。「純粋でまぬけ」というコンセプトを基に、防水素材で服を仕上げたそうです。
Timothy Bouyez-Forge
彼は機械とファッションの境界線をぼやかすことを追求しています。
特に目立っている光沢のあるグリーンの素材は単車のスクラップを利用しているそうです。
彼はインタビューで「輸送を服で表現したようなもの。着た人を別の場所や夢の国なんかにつれていければいいな。」と答えています。
・・・レベルが高すぎやしないでしょうか。明確なコンセプトを一人一人のデザイナーが持っていて、そのコンセプトについて研究しつくした結果を衣服として表現しているようです。
斬新な見た目なドレスばかりですが、どれもデザイナーの想いが込められた魅力的なドレスとなっています。
気になった方は、公式ホームページに動画もありますので是非チェックしてみてください。
この記事は「Five designers to watch from the Royal College of Art’s 2016 fashion graduates」を翻訳・参考にしています。