9月12日に発売されるiPhone X、8、8+は、新しいA11 Bionicチップを搭載し、今よりも増してパフォーマンスが向上します。新しいiPhoneのバージョンは毎回、ハードウェア、カメラ、高速プロセッサが少しずつ改良されます。そして、AppleのスマートフォンであるiPhone Xは、初めて人工知能のワークロードを処理するために開発された特注のチップを搭載します。
デザイン
A11 Bionicチップは、64ビットの6コアCPUを搭載し、4つのエネルギー効率の良いコア「Mistral」と2つの高性能コア「Monsoon」を備えています。A10とは異なり、第2世代のパフォーマンスコントローラによって、6つのコアをすべて同時に利用することができます。
また、A11には特注の3コアGPUが統合されており、Imagination Technologiesのハードウェアが不要になります。これまでのAppleのプロセッサ設計は、PowerVRアーキテクチャの実装に対してデバイスごとに使用料を支払っていました。なので、これによって大幅なコスト削減になります。
チップ内の専用ニューラルエンジンは、1秒間に6,000億回の演算が可能です。これにより、スマートフォンはFace ID、Animoji、拡張現実アプリケーションを実行しながら、機械学習タスクを不具合なく実行することができるようになります。
A11には新しいM11モーションコプロセッサーが搭載されています。これは、統合されたジャイロスコープ、コンパス、加速度計からセンサーデータを収集し、センサーデータの処理からCPUをオフロードします。A11チップに組み込まれているのは、高度なピクセル処理、ワイドカラーキャプチャ、ライトニング推定をサポートする新しい画像プロセッサです。
このチップは中国にある台湾セミコンダクター社が製造していて、10nmのFin Field-effect Transistorプロセスを使用した43億個のトランジスタが搭載されています。
パフォーマンス
Appleは、新しいCPUはA10チップより25%速く、GPUは30%速くなったと発表しています。また、エネルギー効率の良いコアは70%、パフォーマンスコアは25%高速化されているとのことです。
Geekbench 4のスコア(実測値)を比較すると、A11チップはApple自身のiPad Pro 10.5インチを除く他のデバイスに大きく差をつけられています。S8+やGoogle PixelなどのAndroid端末は比較にもならない。
A11チップは、現在のA10チップ世代を上回るだけでなく、一部のMacBook pro 13インチ構成(シングルコア・プロセッサ)の性能にも匹敵します。
このチップは、低照度下でのオートフォーカスの高速化やマルチバンドノイズの低減など、写真撮影の体験を向上させるために特別に調整されています。「3Dゲームやアプリケーションに最適で、Metal 2テクノロジーを使用するゲームの動作がより速くなるだろう」と、ワールドワイドマーケティング担当上級副社長のフィル・シラーは言っています。
新しいアニ文字機能は、前面のTrueDepthカメラを使って顔の50以上の筋肉の動きを追跡し、ユーザーの表情をマネして顔文字にします。Face IDも、TrueDepthカメラを使って3万以上のドット(不可視)を投影・分析し、ユーザーの顔の正確な深度マップを作ります。これらの処理と機能は、ニューラルエンジンチップがあるからこそできるのです。
他社製のAIチップ
Appleに限らず、人工知能がソフトウェアで一般的になるにつれ、多くの企業がそれに対応するためにハードウェアをカスタマイズしています。近年、マイクロソフトは、現実のヘッドセットと組み合わせたHoloLensの次期バージョン用のAIチップを発表しました。
Googleは、AIに関連する計算ワークロードを処理するために、すでに2世代のチップを開発しています。また、Huawei(中国のハイテク企業)は、自社のKirin 970が画像認識などの複雑なタスクを従来のCPUの最大20倍高速に処理できると発表しています。
「近い将来、特にニューラルネットワークの推論やトレーニングのために開発されたデジタル信号プロセッサが登場するだろう」と、G I/Oカンファレンス2017でGoogleのAndroidチーフ、Dave Burkeは述べました。