・新しい「ブレイン・コンピュータ・インターフェース」により、麻痺患者が市販の電子機器を効果的に操作できる。
・カーソルを移動することや、マウスのボタンをクリックすることを「考える」だけで、様々なアプリケーションを利用することができる。
・様々なアプリケーションを利用しながら、1分間に22回の「ポイント&クリック【マウスでポインターを移動させクリックするだけで操作する】」による選択を行った。
モバイル・コンピューティング機器はもはやどこにでもあって、日常生活に欠かせないものとなっていますが、麻痺を抱える人にとっては使いづらいものです。米国では、500万人以上の人々が様々なタイプの麻痺を抱えており、日常生活を送ることが困難な状況に置かれています。
たとえば、ALS【筋萎縮性側索硬化症】のような状態だと、その患者は最終的に周囲とのコミュニケーション能力(音声を含む)を失うことになります。これまで、支援技術の分野は多くの助けとなっており、麻痺を抱える人が汎用コンピュータを簡単に操作できるように機能を改善し続けてきました。
最近、米国のブラウン大学の研究者らが、マウスで指したりクリックしたりすることを「考える」だけで、身体障害者がタブレット端末を直接操作できるブレイン・コンピュータ・インターフェースを示しました。彼らが行った実験では、麻痺のある3名の被験者がオンライン・ショッピングや家族とのチャット、その他のタブレットアプリを使用することができたのです。
ブレインゲート・インターフェースの仕組み
ブレインゲート【脳インプラントシステム】コンソーシアムでは、神経工学と神経科学を改良し、麻痺者(怪我や病気で運動能力を失った人)が、手を動かすことを考えるだけで電子機器を操作できるようにするための研究を長年行ってきました。
ブレイン・コンピュータ・インターフェースは、大脳の運動皮質に設置された微小なセンサーで神経作用を捉えます。その後、神経信号はデコードされ、外部機器に送信されます。長年にわたり、科学者たちは同様の技術を用いて、身体障害者がロボットの腕や手足を操作できるようにしてきました。
a) セットアップの概略
b) 試用124日における被験者T5氏のタスクのタイムライン
写真提供:研究者
これまで、脳波を利用したブレイン・コンピュータ・インターフェースでは、文字つづり、ゲーム、絵画、Web閲覧などの制御が確認されていますが、市販のスマートフォンやタブレットのような電子機器の一般的な制御はできていませんでした。
この実験では、インターフェースから抽出した神経信号を、ワイヤレスマウスとして動作するように設計されたBluetoothインターフェースに送信します。この仮想マウスをタブレット端末「Nexus 9」に接続し、麻痺のある3名の被験者に特定の作業を行ってもらいました。
結果
四肢麻痺の3名の被験者は、タブレット端末を操作するための皮質内ブレイン・コンピュータ・インターフェースの一部として、運動皮質に多電極アレイを装着しました。被験者のうち2名は進行性の運動ニューロン疾患であるALSを患っており、1名は脊髄損傷を患っています。
被験者全員が、音楽ストリーミング、チャット、電子メール、ソーシャルネットワーキングなど、複数のアプリを操作することができました。ニュース・アグリゲーター【オンライン・ニュースを収集するプログラムやウェブサイト】をスクロールしたり、ストリーミングサービスを閲覧したり、YouTubeでコンテンツを検索したり、チャットやメールを作成したりしました。
写真提供:研究者
彼らは様々なアプリケーションを使用しながら、1分間に22回の「ポイント&クリック」による選択を行いました。文字のアプリでは、テキストインターフェースを介して、1分間に30文字のスピードで入力することができました。
今回の研究では、マルチタッチ【同時に複数の箇所に触れる操作】、ジェスチャー、クリック&ホールドなどの高度なカーソル機能は行われませんでしたが、立案者は、すべての被験者が自分の興味や趣味を探求するためにインターフェースを迅速に使用したことを喜んでいます。
この研究は、医療従事者と重篤な神経疾患を持つ患者とのコミュニケーションに新たな扉を開く可能性も秘めています。これにより、患者と介護者の間の相互作用と理解がさらに向上する可能性があります。