寡占、英語でOligopoly。この英単語はギリシャ語の2つの単語から成り立っており、oligoは「小さい」、polyは「売る」をそれぞれ意味します。
経済学では、寡占とは、特定の業界が少数の大規模な売り手(寡占者)によって支配されている市場構造として定義されます。つまり、独占と資本主義の中間に位置する状態です。独占は特定の業界を支配する一つの企業のみで構成されるのに対し、寡占では二つ以上の影響力の大きな企業が特定の市場で支配権を握っている状態のことを指します。
今日では、寡占は一般的な経済システムになっています。しかし、新規性、生産数や販売数、価格、マーケティング手法、ユーザ評価などの面で2社から10社が競合しているのが通常の状態であるため、寡占市場を正確に説明できる単一のモデルというものは存在しません。
少数の企業からなる市場では、すべての寡占者は他社の動向に敏感です。ある会社が下した決定は競合他社の決定にも影響を与えることになります。
<寡占市場の主な特徴>
価格を決める権限を持つ:それぞれの企業ひとつでは市場の支配力はほとんどないため、寡占企業は製品やサービスの価格を設定することができます。
参入障壁が高い:寡占市場では、ブランド力や持っている特許、初期費用の高さなど、他社の参入障壁が大きいため、寡占企業はその地位を維持することができます。新規に参入した企業が顧客を集め市場での存在感を確立することは非常に困難です。
取り扱い製品の種類の豊富さ:寡占企業は、例えばアルミニウムといった原料から車両のような独自製品まで、包括的に販売している場合があります。
知識量の格差:企業は自社製品の需要と適切な価格については完全に掌握していますが、寡占企業間では認識が不正確である可能性があります。
長期的なメリット:寡占企業は、市場での高いシェア率をキープできるという恩恵を受けることができます。長期にわたり、普通では考えられないような莫大な利益を得ることができます。参入障壁の高さのおかげで、寡占企業はスタートアップ企業が市場に参入し大きな利益を得ることが阻止されています。
この寡占という現象について具体的にわかりやすく説明するために、この記事ではさまざまな業界における9つの寡占市場の例をご紹介します。
・ニュースメディア
寡占企業:News networks Fox, CNN, MSNBC
近年、ウェブベースの新聞やニュースサイトの人気は飛躍的に高まりつつありますが、きわめて多くの人々が依然としてテレビでニュースを見ています。 アメリカでは、ほとんどの家庭が複数のテレビを所有しており、約99%が少なくとも1台のテレビを持っています。
News networks Fox、Cable News Network、MSNBCはアメリカで最も視聴されているニュースチャンネルであり、ゴールデンタイム(午後8時と午後11時)にトップの座を争います。 2020年6月、FoxNewsは夕方の時間帯に約397万人の視聴者を集めました。
2019年の時点では、Fox Newsはトップクラスのケーブルネットワークであり、平均して250万人の視聴者がいます。 MSNBCは180万人の視聴者を抱え2位にランクされており、CNNは972,000人の視聴者で3位となっています。
・自動車産業
寡占者:Ford Motor Company, Toyota Motor Corporation, General Motors
アメリカは世界で一人当たりの車両所有率が最も高く、2016年には実際に使われている車両の数は1,000人あたり830台以上と報告されています。同年、国内の自動車販売台数は約630万台でした。
2019年の時点では、米国の自動車ブランドのトップ3はFord Motor Company, Toyota Motor Corporation, General Motorsであり、合計で520万台以上の販売台数を達成しました。 フォードは2020年のフォーチュン500で12位にランクされており、2年連続で売上高においてアメリカ最大の自動車メーカーとしての地位を維持しています。
さらに、アメリカは中国に次いで世界第2位の軽自動車市場です。 ゆえに、自動運転車はこの先10年間で米国の自動車市場を大混乱に陥らせるだろうと予想されています。
・スマートフォン市場
寡占企業:Apple, Samsung
スマートフォンの普及率はこの10年間で上昇し続けています。 今日では、スマートフォンの販売による年間収益は700億超とされています。
アメリカは中国に次ぐスマートフォン市場であり、ユーザー数は2億6000万人を超えています。 2020年の時点では、AppleとSamsungが国内のスマートフォン市場を支配しており、市場シェアのそれぞれ46%、25%を占めています。 次点でLGとMotorolaと続き、それぞれ12%と7%の市場シェアを誇っています。
AppleとSamsungは、売上だけでなくユーザー満足度でも市場をリードする存在です。 アメリカの顧客満足度指数調査によると、iPhone (Apple)およびGalaxy (Samsung)のすべてのモデルが最高ランクの評価を得ています。
・電気事業
寡占企業:NextEra Energy、Dominion Energy、Duke Energy、Southern Company
公益事業ではほとんどの企業は利益を上げていますが、普通は公的機関によって厳しい統制がなされています。 アメリカには3,300以上の電力会社があり、電力の大部分が約200社によって供給されています。
200社のうち上位4社が、合計600億ドルを超える時価総額で市場を寡占しています。
45,900メガワットの発電容量を持つNextEra Energy社は、1,000億ドルを超える時価総額を誇っています。 Dominion Energyの時価総額は700億ドル、 720万人以上の顧客を抱えるDuke Energyの時価総額は680億ドルです。 27,000マイルの長さの配電線を持つSouthern Companyの時価総額は620億ドルです。
全体として、アメリカの電力網は250万マイル以上の長さの電力分配線と451,000マイルの高圧送電線からなっています。
・葬儀業
寡占企業:Service Corporation International、Stonemor Partners LP、Carriage Services Inc
アメリカでは、葬儀業は年間150億ドルの大規模産業です。 産業の内訳としては、火葬場、墓地、葬儀場などの分野に分かれます。 全米葬儀ビジネス協会(NFDA / The National Funeral Directors Association)によると、葬儀の費用は平均で7,323ドルであり、埋葬地と献花代を追加すると、コストは9,000ドルとなります。 アメリカで死ぬためにはお金がかかるのです。
上場している葬儀会社は3社しかなく、最も大きい企業はService Corporation Internationalで葬儀場の数でほぼ11%の市場シェア、収益では16%の市場シェアを誇ります。
他の2社としては、Stonemor Partners LP(火葬に特化)とCarriage Services社(埋葬に特化)が市場を支配しています。 両社は葬儀場数において市場の1%のシェアを持ち、収益の面では2%の市場シェアとなっています。
・音楽産業
寡占企業:Sony Music, Universal Music Group, and Warner Music Group
音楽市場の大部分は、日本資本であるSony Music、フランスの Universal Music Group、アメリカのWarner Music Groupの主要企業3社によって支配されています。
Sony Musicはこれら3強の中で最大で、72.7億ドルを超える年間収益を得ています。 Universal Music Groupは、世界中の400を超えるプラットフォームとライセンス契約を結んでいる、最も革新的な音楽会社の1つです。 Warner Music Groupは従業員3,500人以上を雇用し、年間収益は44億ドルを超えています。
音楽業界は2011年以来大きく変化を遂げています。ストリーミングサービスは大幅な成長を見せており、ダウンロードコンテンツに比べ多大な収益を生み出しています。オンラインデジタルストリーミングを先導しているのは AppleとSpotifyです。
・コンピュータのオペレーティングシステム
寡占企業(ブランド):Android、Windows、iOS、OS X
オペレーティングシステム(OS)は、スマートフォン、ラップトップ、デスクトップなどのデジタルデバイスにインストールされる制御ソフトウェアであり、さまざまな目的と役割を果たすものです。 PC、サーバー、携帯電話など、世界中で70億を超えるコンピューティングデバイスが使われています。
ラップトップおよびデスクトップマシンの分野では、Microsoft Windowsが最もインストールされているOSであり、世界市場シェアの80%以上を占めています。 Appleのmac OSが10〜12%を占めており、ついでGoogle Chrome OS(4%)とLinux(2%)と続いています。
スマートフォンとスマートウォッチの分野では、GoogleのAndroidが25億人以上のユーザーを占めています。 近年のスマートフォンの台頭により、AndroidはWindowsよりも人気となっています。 iOSはアメリカでは非常に人気が高いですが、世界規模では、Androidの半分のシェア率ですら達成したことはありません。
・航空業
寡占企業:American Airlines, Delta Air Lines, Southwest Airlines, United Airlines
航空輸送産業は栄えている分野であり、何百万人もの人々を世界中に連れて行きます。 2009年から2019年の間、世界の航空業界の収益は5.3%のCAGRで成長し、2019年には8,380億ドルに達しました。
2018年の時点でアメリカには58の航空会社があり、そのうち17社は年間収益が10億ドルを超えています。 しかしアメリカの航空会社の収益の55%近くは上位4社の航空会社のものです。American Airlinesは、売上高において世界第2位の航空会社であり、2019年の売上高は449億ドルに達しています。1日5,400便以上のフライトを誇るDelta Air Linesは全米で2位の航空会社です。
Southwest Airlinesは世界最大の格安航空会社であり、年間収益は210億ドルを超えています。 またUnited Airlinesは6大陸にまたがる大規模な国内および国際航空網を包括しています。
・セルラー(移動体通信)ネットワーク
寡占企業:Verizon Wireless、T-Mobile US、AT&T Mobility
アメリカの通信産業を代表する教会であるCellular Telecommunication and Internet Associationによると、アメリカには自前の施設を持っているワイヤレス通信サービスプロバイダだけでも30社存在しています。 そのうち上位3社はセルラーネットワークの市場シェアの80%以上を占めています。
2020年の時点で、Verizon Wirelessの加入者数は1億1,990万人、T-Mobile USの加入者数は9,830万人、AT&Tの加入者数は9,290万人です。ここではすべての実際に利用されているSIMカードについて調査した結果となっています。
AT&Tは現在営業利益の面ではアメリカにおける最大の電気通信会社です。 2019年には合計で1811.9億ドルを超える収益を上げており、第四位につけたVerizon社の収益よりも500億ドル近く多い金額です。