Facebookは、今後はプライベートメッセージに注力する方針としており、このことはSNSマーケティングの将来を変えようとしています。マーケティング担当者への影響も必至といえるでしょう。
マーク・ザッカーバーグ氏は自身のFacebookに「SNSにおけるプライバシー重視に関するビジョン」という長い文章を投稿しました。この記事は、ブランドマーケティング担当者、そしてSNSの将来に関心の強いFacebook利用者にとっても見逃せない情報でした。進化するSNSにおいて、Facebookの最高経営責任者(CEO)が示すその展望は彼らにとって非常に興味深い点を含んでいたのです。
毎月232億人ものアクティブな利用者を抱えているSNSプラットフォームのCEOがそのマーケティングの焦点の変遷を予測したのですから、とても無視することはできません。
今回は、彼の文章のポイントとそこから私達が学ぶことのできることをご紹介していきたいと思います。
プライベートメッセージで人々の交流を進歩させる
マーク・ザッカーバーグ氏は、Facebookがこれまでと同様、興味や関心事を軸に人々のグローバルコミュニケーションをサポートするという設立・存在意義を認めています。利用者の関心と日々の習慣を1つのプラットフォーム(もしくはFacebookに関連するプラットフォーム)に統合することに成功すると、その成長傾向に気付き始めたと言います。しかし、利用者はパブリックメッセージをあらゆるネットワークで共有することに熱狂的である訳ではありません。むしろこれからは少数の人々の間でなされるプライベートなコミュニケーションがより重要になりつつあります。
彼の言及は以下のとおり:
「コミュニケーションの未来において必要なことは、暗号化サービスなどプライベートな環境において人々がお互いに安心して発言でき、送信したメッセージやコンテンツが永遠に残り続けてしまうようなことがないよう進化していくべきと考えています。」
つまり、彼が目指すのは「人々が取りたいプライベートなコミュニケーションを全て叶えるプラットフォームを構築すること」といえます。
WhatsAppにおける成功は、人々のプライベートで安全な対話を実現したことにあります。グループコミュニケーションにおいても参加人数に制限を設け、よりプライベートなメッセージングができることが重要となります。Facebookとマーク・ザッカーバーグ氏は、MessengerおよびWhatsApp双方ともプライベートなコミュニケーションの主要な方法であり続けることを確実にしたいと考えています。目標はメッセージの受発信におけるエンドツーエンド暗号化をはじめ、高速かつシンプル、プライベートで安全な状況に保つことです。
そして、友人やグループ、そして企業間のプライベートな交流を支援する方法を模索し続けているのです。
この動きはマーケティング担当者にどのような影響をもたらすでしょうか?まず、SNSマーケティング戦略の将来を考えるのであれば、変化するプライベートコミュニケーションの傾向を考慮することが必要です。また、SNSの公共性は現存するもののソーシャルページを超えたようなグループコミュニティもあります。最も関連性が高く、かつスマートな方法で目的の場所にアクセスすることを可能することで、ターゲット層のオーディエンスに訴えかける最適な方法を検討するべきです。
暗号化対応によるプライバシーの保護とリスク
最近、奇しくもプライバシーの侵害でFacebookが脚光を浴びるケースが多くなっています。マーク・ザッカーバーグ氏はついに「プライバシーと安全を確保するための正しい方法を見つけること」が重要事項であることの認識を示し、すべてのプライベート通信にエンドツーエンドの暗号化を適用しようとしています。
彼は以下のように補足しています:
「エンドツーエンドの暗号化は、プライバシー重視のSNS開発における重要ツールです。暗号化技術は分散しているため、私たちのようなサービス企業がそれらを使ったコンテンツを保護し、他人があなたの情報にアクセスすることの難易度は遙かに増します。銀行から医療業務に至るまで、暗号化は私達のオンラインライフの中でますます大きな部分を占める存在となっています。」
興味深いことに、彼はエンドツーエンド暗号化も場合によっては悪用に繋がる可能性があることも認めています。それをできるだけ防ぐためにFacebookサイドの担う責任は大きなものです。彼らのブランドイメージ改善に向けた大きな一歩であり、彼らが過去数年の間にフェイクニュースやストーリーがどのように広まってしまったのか、過去数年間における否定的なPRを行うものでした。
ここまでの経緯を踏まえ、プライバシーと安全性が改善されるだろうと安心するべきでしょうか?その確度はまだ分かりませんが、このメッセージを見る限りは安心に感じます。
ストーリー機能でエンゲージメントをより強化
SNSのもう1つの成長傾向は、ストーリーの台頭です。Snapchatは一時的に類似コンテンツを発表しましたが、Instagram ストーリーがこの新種コンテンツを使い続けることを可能にしました。
Facebookはこのトレンドにいち早く乗り、独自のFacebookストーリーを導入しました。マーク・ザッカーバーグ氏は、コンテンツがいつまでも自分のソーシャルプロフィールに保存されるのは時として望ましくないということを認知しています。これはプライベートメッセージングをめぐる彼ら計画にとって興味深い傾向でさえあるかもしれません。
マーク・ザッカーバーグ氏によると、
「SNSツール構築における課題の一つは「永続性」です。私たちは大容量のメッセージや写真コレクションを時間の経過とともに積み重ねていくことで、それらは資産としてだけでなく責任とも言えるものとなります。
コンテンツが期限に基づき消去、アーカイブされたりするなど、プライベート通信のプラットフォームにおける新標準を設定する機会にきているといえます。ストーリーはアーカイブしない限り、24時間後に期限切れとなります。それは私達にとってより自然なコミュニケーションとなり、快適さを与えます。このことはすべての個人的コンテンツに適用することのできる哲学です。
例えばメッセージはデフォルトで1か月または1年後に削除されるなどのことが挙げられます。これにより、過去のメッセージが再度取り上げられ厄介になるリスクを軽減することができます。もちろん時間間隔を変更したり、必要に応じて自動削除をOFFにしたりすることも考えられます。また、必要に応じて、数秒または数分で個々のメッセージを期限切れにするように設定することも考えられます。」
マーケティング担当者の視点では、一時的なコンテンツとインタラクティブな体験についてもっと実験をしていく必要があるということです。例えば24時間のみの期限を設けるのであれば、ブランドの認知度をあらかじめ高めておくことを同時に検討しなければなりません。そしてInstagram ストーリーにより既に示されていることとして、ニュースフィードに残存するコンテンツよりもストーリーの方がエンゲージメント強化に期待が持てるという衆知の事実があります。
関連アプリのメッセージング機能統合で更なる交流の選択肢を
マーク・ザッカーバーグ氏の文章におけるもう1つの興味深い点は、相互運用性におけるアイデアです。Facebookのプラットフォームにおける現在の課題は、メッセンジャーやWhatsApp、Instagram各々がメッセージング機能を有していることと、異なるプラットフォーム間でのメッセージのやり取りは難しいということです。
従って、Facebookは
「どのアプリからでもネットワークを介して友達にメッセージングできるような選択肢をもたらします。私達はあらゆるサービスのどれかを使いあなたが自分自身にメッセージを送信可能にすることから着手し、その相互運用性をSMSにも拡張することを計画しています」
このアイデアには利便性、プライバシー、セキュリティ向上の観点からオプトインの選択肢があります。
この決定は最近ささやかれている噂であり、プラットフォーム間データを統合すること、あるいはFacebookただ一つのメッセージングプラットフォームで成り立つ未来を想像することさえ可能です。そして、プライバシーとセキュリティはこの手の決定にとって間違いなく重要な要素であり、私たち全員がそのような統合の意味とこれが私たちのプライバシーと現在の通信にとって何を意味するかを意識しておく必要があります。
Facebookの進歩はSNSプラットフォーム自体に影響する
私達が皆知っているように、今回の記事はFacebookの終わりを示すものではありません。そして述べたような変化は一晩で起きるものでもありません。最近Wired社がマーク・ザッカーバーグ氏に行ったインタビューによると、ニュースフィードはまだ残存するでしょう。
実のところ、FacebookとInstagramは今後更なる重要度を増すかもしれません。
変化していることとして、Facebookネットワークをただ1つの主要なプラットフォームとし、人々がよりプライベートなコミュニケーションに移行するにつれ、SNSの公共性により焦点を当てるという視点です。
Facebookは、プライベートコミュニケーションが彼らのコアビジネスの一部になり得るかを判断するための調査として適切な時期を選んだと言えます。そしてそれは確かにすべてのSNSプラットフォームに影響する変化です。
大きな変化が今後数カ月の間に突如発生するとは言えませんが、マーケティング戦略の将来とその保証のために、これらトレンドの移り変わりに注目することが重要です。