宇宙ビジネスがブームになっています。最近では、2013年に設立されたスタートアップ企業、Oxford Space Systems【オックスフォード・スペース・システムズ】が、新しい宇宙時代の課題に対応するべく、拡張可能な巨大アンテナや革新的な構造物を開発していることを発表しました。
オックスフォード・スペース・システムズ社【以下、OSSと表記】は、「アジャイル開発・検証」アプローチと「速くて無駄のない」戦略を独自の素材と組み合わせて、より速いペースと低コストでソリューションを提供することにこだわっています。また、質量、複雑さ、リードタイム【製品の企画から生産開始までに要する時間】を削減することで、他社との差別化を図っています。
OSSのプロジェクトの多くは秘密保持契約に基づいて開発されているため、この記事では公開されている主要な開発案件についてのみ紹介します。
1. 展開可能な反射鏡アンテナ
OSSは現在、Ka帯【静止衛星が主に使う周波数帯のひとつ】による帯域幅の拡大という現在の需要に対応するため、展開可能なメッシュ反射鏡アンテナの開発に取り組んでいます。これは、軽量でコンパクトでありながら大容量の衛星で、小さなスポットビームを作り、周波数の再利用を最大化することができます。
これは、新しい反射鏡表面、3重の冗長駆動、比較的簡素であること、拡張性の高いアーキテクチャ(2〜15m)を特徴としています。室温硬化型シリコーンエラストマーS690と3軸に織られた炭素繊維織物の2つの材料からなる炭素繊維強化シリコーン反射面を備えています。さらに、国際武器取引規制(ITAR)が適用されません。
ユーザーミッションのために高いアンテナ利得を必要とする放送システムや衛星通信に比類ない性能を提供します。これらの低コストアンテナは、地球観測、データ中継システム(DRS)、電気通信など幅広い用途に利用されています。
OSSは、英国の国家航空宇宙技術プログラムからの資金提供のもと、主要2機関と共同でこのプロジェクトに取り組んでいます。
2. AstroTubeブーム
AstroTubeは、様々なキューブサット【小型人工衛星】やマイクロサット【超小型衛星】のアプリケーションをサポートするために開発された、安価で柔軟性の高いブーム【棒】です。0.3mから3mの範囲で伸縮が可能です。展開精度は1ミリメートル、収納効率は0.5U以下です。
ブームは、アンテナシステム、観測機器の配置や格納、太陽帆、軌道上放出物などに使用できます。
欧州宇宙機関のNEOSATプログラムへのOSSの関与は終了しましたが、このプロジェクトで達成された作業は、AISat-Nanoブーム開発の下支えとなりました。2016年11月、AstroTubeは軌道上で検証されました(AISat-Nano 3U cubesatプログラム)。
3. AstroTube Max伸縮式ブーム
OSSは、中・大容量の観測機器を搭載するために、最大15mまで拡張可能な伸縮式ブームを開発しました。AstroTube Maxは、ハーウェル・ローンチパッド計画のもと、すでに2.5mのブームの認定試験を終えています。
このブームは、曲げ、低密度、ねじれ剛性など、高度に設定可能な特性を備えています。ブームと機構配置を合わせた全重量は約300gです。ブームは1Uの半分以下の収納容積で最大2mまで伸展可能です。
低質量、高い収納効率、汎用性から、AstroTube Maxは電気推進の配置、LDAや高質量の展開など、様々な用途に使用することが可能です。
OSSは現在、Thales Alenia Space社(英国)およびAirbus Defence & Space社【エアバスの子会社】と共同で、ブーム設計のさらなる改良に取り組んでいます。
4. Astrohingeの拡張性のあるパネルアレイ
OSSでは、同期型の拡張性のあるパネルアレイも開発しています。現在、地球低軌道のマイクロサット用に操舵可能なバージョンを開発中です。
目的は、より簡素で、質量効率とコスト競争力のある、従来型とモーター駆動のスプリング展開システムを構築することです。パッチアンテナアレイ、熱放射体、SAR、太陽電池などとして使用できます。