・ICTグローバル排出量レポートによると、スマートフォンによる炭素排出量は過去10年間で3倍になっています。
・iPhone 6sの二酸化炭素発生量は、iPhone 4sに比べて57%増加しました。
・2020年には、スマートフォンだけで、ICTの総排出量の45%を占めるようになると言われています。
ここ数十年の間に、ICT(情報通信技術、Information and Communication Technologyの略)機器やサービスは飛躍的に成長しました。実際、ICTは私たちのコミュニケーション、仕事、映画鑑賞、ゲームなどの方法を大きく変えました。
直近50年間の人口増加は2倍でしたが、電子機器の使用はほぼ6倍にまで増加しています。スタティスタ社のレポートによると、2019年のスマートフォンのユーザー数は25億人以上になると予想されています。世界のスマートフォン普及率も同様に増加しています。さらに、携帯電話のユーザー数は、2019年には50億人を超え、2020年には60億人になると言われています。
2018年3月、マクマスター大学【カナダ】の研究者たちは、スマートフォン、デスクトップPC、ラップトップPC、モニター、サーバーといった、ICT産業が生み出す炭素の影響を示すICTグローバル排出量レポートを発表しました。その情報は、私たちが考えていたものよりもさらに悪いものでした。
ICTによる炭素排出量が過去10年間で3倍に増加
かさばるPCから軽い携帯電話へと移行しつつある一方で、テクノロジーがもたらす全体的な影響は悪化の一途をたどっています。ICT産業の暗い側面を考えると、これらの機器のエネルギー消費量は急激に増加しているのです。
現在、すべてのICT機器の構築と運用に必要なエネルギーの生産は、温室効果ガスの主な要因である大気中の二酸化炭素の増加に著しく貢献しています。
2007年当時、PC、ネットワーク機器、データセンター、スマートフォンのエネルギー消費量は、カーボンフットプリント【炭素の足跡、二酸化炭素排出量】の約1%を占めていました。そして今、この数字は3倍になっています。このままのペースで進むと、2040年には14%を超えることになります。これは、運輸業界(27%)や発電業界(29%)全体の二酸化炭素排出量の半分以上に相当します。
出典:電子ジャーナル「ScienceDirect」第177巻、2018年3月10日、448~463ページ
新しいスマートフォンはより多くの二酸化炭素を生み出す
画像提供:Consumerreports.org
通常、スマートフォンの平均的なライフサイクルは2〜3年で、事実上使い捨てのような性質を持っています。主な問題は、新しいスマートフォンにあります。新しいスマートフォンを開発したり、スマートフォンに適合する独自の素材を採掘したりすることで、スマートフォンの2年間の総二酸化炭素排出量の約90%を占めるのです。
つまり、新しいスマートフォンを購入するにあたっては、携帯電話の操作と充電を10年間行うのと同じくらいのエネルギーが必要になっています。
最近では携帯電話の購入頻度が減っているため、メーカーは画面サイズがより大きいスタイリッシュなスマートフォンを販売することで、利益の減少を補おうとしています。これらの大きな画面は、従来のものよりもはるかに多くのカーボンフットプリントをもたらします。
Apple社は、iPhone 7 Plusを製造すると、iPhone 6sよりも二酸化炭素が約10%多く発生することを公表しています。それでも、iPhone 7を製造すると、6sモデルよりも二酸化炭素の発生量が約10%少なくなります。
2015年に行われた調査では、iPhone 6sはモデル4sに比べて57%も多くの二酸化炭素を発生させました。Apple社をはじめとする大手テクノロジー企業がリサイクルプログラムを実施していても、当時は機器の1%未満しかリサイクルされていませんでした。
サーバーとデータセンター:最大の原因となるもの
ICTのカテゴリーごとの相対的な貢献度
スマートフォン以外では、サーバーとデータセンターが地球を汚染する上で重要な役割を果たしています。2020年には、サーバーとデータセンターがICTの総排出量の45%を占めるようになる、と予想されています。
というのも、何かをツイートしたり、Facebookのタイムラインを更新したり、Google検索をしたりするたびに、クラウド上でバックグラウンド計算を行うハードウェアが必要になるからです。また、今後、暗号通貨の人気が高まれば、状況はさらに悪化する可能性があります。
研究者たちは、スマートフォンがクラウドを大量に使用する原因のひとつであると指摘しています。なぜなら、ほとんどの人気アプリは膨大なサーバーリソースを使用するからです。つまり、スマートフォンの台数が増えれば、それだけ多くのサーバーが必要になるということです。
正しい方向へ進むためには
ひとつだけはっきりしていることは、私たちが携帯電話の購入や使用をやめることはないということです。しかしながら、少なくとも携帯電話を買う頻度を減らすことはできます。
Apple、Google、Facebookなどの企業は、現在、太陽エネルギーに投資しています。実際、AppleやFacebookのサーバーは現在、100%クリーンで再生可能なエネルギーで稼働しています。
現時点で非常に重要なのは、二酸化炭素排出量の削減目標を損なわずに、ICT産業において増加し続ける需要を満たすことができるような、より革新的なソリューションを模索することです。