マーケティング

マーケティング

PR

「スチレン」とは? 知っておきたい、その組成、物性、用途

RankRED

RankRed is a place where you can find a lot of interesting and inspiring stuff about science and technology, internet, programming tools and plugins, robots, machines and high tech gadgets, and much more.

本記事は、What is Styrene? Composition | Properties | Uses
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

7,852 views

読了時間 : 約5分44秒

スチレンは、重合能力が非常に高いことで知られる液体炭化水素です。重合とは、個々の分子が互いに反応して、大きな3次元ネットワークまたは重合体連鎖を形成する過程です。

 

スチレンは主に、ポリスチレンと呼ばれる熱可塑性重合体をはじめ、様々なプラスチックや合成ゴムの原料として使用されています。この軽量で安価な素材は、高品質な仕上がりの外観を提供し、カスタム形状にカットすることができます。

 

スチレンの物性

示性式:C6H5CH=CH2
分子量:104.15g/mol
融点:-30℃
沸点:145℃
密度:0.909g/cm3
水溶性:300 mg/L(25 ℃)

 

スチレンは、炭化水素であるビニル基(CH2=CH-)の一種であり、その分子は2つの炭素原子の間に二重結合を持っています。

 

この二重結合は、開始剤や触媒の影響を受けて、別のスチレン分子の炭素原子を結ぶ2つの単結合に分割されます。このようにして、何千ものスチレン化合物が炭素骨格に沿って結合したポリスチレンが形成されるのです。

 

物理的・化学的性質

スチレンは無色で油状の、蒸発しやすい液体です。古い見本では、わずかに黄色く見えることがあります。スチレンには甘い香りがありますが、他の化学物質によって鋭い不快な臭いがすることがあります。

 

スチレンは水にはあまり溶けませんが、エタノール、エーテル、アセトンにはよく溶け、四塩化炭素にはわずかに溶けます。また、ベンゼンとは均一な混合物を形成します。

 

液体スチレン

 

スチレンは水よりも密度が低いものの、その蒸気は空気よりも重く、目に刺激を与えます。また、密閉容器内で重合すると容器が破裂する恐れがあります。

 

粘度:0.696cP(25℃)
重合:室温で徐々に、65℃以上で容易に重合する

 

また、過酸化物や酸化剤、太陽光などの存在によっても重合が起こる可能性があります。これを防ぐために、スチレンには通常、阻害剤が混ぜられています。それでも、スチレンが銅や銅合金を腐食するのを防ぐことはできません。

 

スチレンの製造方法は?

天然のスチレンは、ごく少量ですが、コーヒー豆、ピーナッツ、シナモン、菩提樹など、一部の食品や植物に含まれています。また、コールタールにも含まれています。

 

しかし、大量のスチレンはエチルベンゼンから合成されます。実際、世界で製造されるエチルベンゼンの99%以上がスチレンの製造に使用されています。エチルベンゼンは、ゼオライトの存在下でエチレンとベンゼンをフリーデル・クラフツ反応させることで生成される、引火性の高い無色の液体です。

 

現在、エチルベンゼンからスチレンを製造するには2つの過程があります。

 

1. エチルベンゼンの脱水素反応

 

スチレンの約75%は、エチルベンゼン(C6H5CH2CH)から水素を除去することで製造されます。この過程では、エチルベンゼンを、触媒(通常は酸化鉄(III))の存在下で600℃まで加熱します。

 

この反応は、(外部環境からの)大量の熱を吸収し、可逆的に進行します。88~94%のスチレンが得られ、これを蒸留して精製します。

 

スチレンはこの過程で熱誘起重合を起こすことがあるため、この方式では継続的に阻害剤が添加されます。

 

2. エチルベンゼンを酸素で処理する

 

エチルベンゼンと酸素を反応させると、エチルベンゼンのヒドロペルオキシドが生成されます。この生成物をプロピレンで処理すると、プロピレンオキシドと1-フェニルエタノールが生成されます。最後に1-フェニルエタノールを脱水すると、スチレンが得られます。

 

より安価な方法

 

スチレンは、安価な原料であるメタノール(最も単純なアルコール)とトルエン(芳香族炭化水素)を使って製造することもできます。

これらの化合物を425℃でゼオライト系触媒の存在下で反応させると、スチレンとエチルベンゼンが9:1で混合されます。このスチレンの収率は60%以上です。

 

桂皮酸から

 

研究室では、白色の結晶性化合物である桂皮酸からカルボキシル基を除去して調製されます。スチレンはこの方法で初めて製造されました。

 

一般的な用途

スチレンは、食品容器、使い捨てカップ、プラスチック、ゴム、パイプ、グラスファイバー、自動車部品、各種化学製品などの原料として、年間数十億キログラムが工業的に製造されています。

 

スチレンは主にポリスチレンプラスチックや樹脂の製造に使用されますが、イオン交換樹脂に使用される化合物を合成する際の中間体としても使用されています。

 

具体的には、スチレンは以下の製品の製造に使用されています。

 

固形ポリスチレン:食品用硬質容器、厨房機器、玩具、医療・光学機器などに使用される

 

繊維強化ポリマー複合材:耐腐食性のパイプやタンク、スポーツ用品、風力発電機の部品、軍用・民間航空機、自動車部品などに使用される

 

ポリスチレンフォームおよびフィルム:食品用容器、軽量保護パッケージ、ラミネートおよび印刷用途に使用される

 

スチレン系素材の代表的なものとしては、以下の用途が挙げられます。

 

・ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)プラスチック:家庭用小物、玩具、冷蔵庫のライナーなどに使用される

 

・SBL(スチレン・ブタジエン・ラテックス):高い光沢と良好な印刷性を実現するために、雑誌やカタログなどの紙製品のコーティング剤として使用される

 

・SAN(スチレン・アクリロニトリル)プラスチック:浴室用金具、光ファイバー、食品容器などに使用される

 

・SBR(スチレン・ブタジエンゴム):タイヤ、コンベヤベルト、ガスケットなどに使われる汎用ゴム

 

毒性

スチレンは、32℃以上で保管すると危険です。(加熱により)分解されると、刺激性のある煙やガスを放出します。

 

スチレンの蒸気は、喉、鼻、目、肺にかなりの刺激を与えます。高濃度のスチレン蒸気にさらされた作業者は、神経系の変性障害を起こす可能性があります。

 

さらされる期間が長いと、疲労感、難聴、色覚の低下、集中力の低下、反応速度の低下、精神的な問題が生じる可能性があります。また、喘息、アレルギー性皮膚反応、免疫機能の変化、さらには血液凝固などを経験した作業者もいます。

 

米国保健社会福祉省はスチレンを発がん性物質(がんを引き起こす可能性のある物質)に分類し、国際がん研究機関はスチレンを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」としています。

 

市場規模の推移

2019年、世界のスチレン市場は480億ドルになりました。この数字は、2020年から2026年までの複合年間成長率(CAGR)4.6%で、2026年には700億ドルに達すると予測されています。

 

イランのスチレン製造工場

 

電子機器や自動車部品の需要が増え続けていることは、この市場の成長を促す大きな要因の一つです。たとえば、自動車産業はSBRの主要なエンドユーザーとなっています(スチレン・ブタジエンゴムは主にタイヤの製造に使用されています)。

 

しかしながら、スチレンの使用による健康や環境への懸念の高まりが、市場の成長を妨げる要因となっています。過去10年間に様々な産業事故が報告されています。最近では、2020年5月にインドのビシャーカパトナム【インドの東海岸にある都市】にあるLG Chemの工場でスチレンのガス漏れが発生し、13人の作業員が死亡しました。

 

悪影響があるにもかかわらず、スチレンはポリスチレンの用途のために大きな需要があります。予測期間中、アジア諸国が引き続き市場を支配するでしょう。

 

中国では、特に、食品分野におけるパッケージ商品の需要が高まっているため、今後数年間は安定した成長が見込まれています。

 

スチレンの次の2大市場は、ヨーロッパと北米です。この地域の成熟した市場では、発泡ポリスチレン(EPS)やアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)の需要は高いものの、ポリスチレンの需要は低くなっています。

よくある質問

人はどのようにスチレンにさらされるのか?

スチレンは、呼吸(蒸気の形で)または皮膚への直接接触によって体内に入る可能性があります。一般の人々は、水を飲んだり、食物を摂取したり、タバコを吸ったり、室内の空気を吸ったり、スチレンを含む消費者製品を使用したりすることで、さらされる可能性があります。

 

スチレンは環境中に放出されると、水面や湿った土壌から空気中に移動します。空気を吸う生物(海鳥、肉食動物、人間)と水を吸う生物(捕食魚)の両方から少量のスチレンが検出されています。

 

スチレンの危険性は?

スチレンオキシド【スチレンのエポキシ誘導体】は、人と動物の両方に発がん性があります。動物では肝臓がんを引き起こします。このガスへの安全な暴露レベルはないかもしれません。どのような形であれ、接触は可能な限り少なくする必要があります。

 

スチレンはどのくらいの速さで体内に入るのか?

多くの対照研究では、スチレンの肺への滞留は吸入量の70%に達することが分かっています。また、大気中では、呼吸器で吸収される量の4%が皮膚から吸収されます。さらに、液体のスチレンは、1分間に 1 µg/m2 の速度で皮膚を透過します。

 

スチレンガスから身を守るには?

作業者は、保護具を使用し、緊急時の手順に従って安全を確保することができます。これには、十分な換気を行い、工場内のすべての着火源を取り除くことが含まれます。

 

狭い場所に蒸気がたまらないようにし、あらゆる種類の漏れやこぼれを防ぎます。また、製品が環境中に排出されることも避けなければなりません。

おすすめ新着記事

おすすめタグ