・AIにより脳画像処理技術が強化され、アルツハイマー病診断の何年も前に病気の予測が可能となりました。
・この研究で開発された畳み込みニューラルネットワークは、アルツハイマー病につながるスキャンされた脳画像を(100%の感度で)識別することができます。
米国では500万人以上がアルツハイマー病に罹患しており、2050年には1,400万人に達すると予測されています。65秒ごとにアルツハイマー病が発症し、米国における死因の第6位となっています。
一般的に、すべての症状が現れたときにこの病気は診断されますが、その時には脳細胞の減少が著しく、治療するには遅すぎます。アルツハイマー型認知症の進行を止めたり元に戻したりする治療法はありませんが、早期に発見することにより、進行を遅らせたり症状を改善することは可能です。
このたび、カリフォルニア大学の研究者は、人工知能により脳の画像処理技術を向上させ、病気と診断される何年も前にアルツハイマー病を予測する方法を発表しました。この研究成果は、何百万人もの患者・介護者の方々に役立つことでしょう。
ディープラーニングで脳の代謝を解析
これまでの研究により、アルツハイマー病は脳の代謝が変化することが明らかになっています。(脳の糖代謝の低下が特徴的に見られます。)しかし、このような微妙な変化を認識することは、非常に困難な作業です。
本研究では、アルツハイマー病を予測する脳代謝の変化を検出するために、深層学習法を適用しました。研究チームは、陽電子放出断層撮影(PET)と呼ばれる核医学の機能イメージング技術から得られた数千枚の画像を用いて、この手法を学習させました。
ADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiativeの略)という、アルツハイマー病の予防と治療を目的とした大規模なマルチサイトプロジェクトのデータにアクセスしました。
このデータセットには、1,000人以上の患者の2,100枚以上のPET脳スキャン画像が含まれています。彼らはこのデータセットの90%をAIの深層学習法のために、残りの10%をテスト用として使用しました。
さらに、これまでアルゴリズムが検証したことのない40人の患者の40枚の画像を使って、この手法を検証しました。その結果、最終診断の6年前(平均)に、40枚のPETスキャン画像すべてから、アルツハイマー病を検出することができました。
研究者たちは,NVIDIA TITAN Xp GPU と CUDA Deep Neural Network ライブラリーを用いて,畳み込みニューラルネットワークを学習させました.その結果、アルツハイマー病につながるすべてのスキャン画像から(100%の感度で)病気を予測することができました。
次の展開は?
この結果は非常に印象的なものですが、研究者たちは、アルゴリズムを完全に信頼できるものにするには、検証セットが十分ではなかったと注意喚起しています。このAIツールをより成熟させるためには、さらに多くのデータが必要だといいます。
現状、当ツールは、さまざまな画像処理や生化学的検査を行う放射線科医の仕事を補完するために使用することができます。今後、複数施設のデータを用いた大規模な外部検証やモデル較正を行うことで、このツールを臨床ワークフローに組み込み、医師が病気を早期に予測できるようになるかもしれません。
研究チームは、さらにニューラルネットワークに学習させ、タンパク質の塊であるベータアミロイド・タウタンパク質の異常蓄積に関連するパターンや、アルツハイマー病特有のマーカーを認識させることを計画しています。