・半導体レーザーを介して情報を送受信することに成功した。
・この研究により、ハイブリッド電子フォトニック機器や超高速Wi-Fiの開発が期待される。
半導体レーザーのようなコヒーレント光源【レーザーを代表とするコヒーレント光を発生する光源】は、等間隔で離散的な周波数の線を含むスペクトルを作ることができます。計測や分光を含む多くの光周波数コム【等間隔の線から成る光スペクトル】アプリケーションは、これらのレーザーの出力を直接利用しています。マイクロ波フォトニクスでは、光周波数コムの出力は高速光検出器に伝送され、マイクロ波の発生に使用されます。
2017年、ハーバード大学の研究チームは、量子カスケードレーザー【遠赤外線を発する半導体レーザー】の赤外線周波数コムを介してテラヘルツ周波数が生成されることを発見しました。2018年には、これらの光周波数コムは、データを効率的に符号化するための統合受信機または送信機としても機能することを発見しました。
そして今回、量子カスケードレーザーの光周波数コムから無線信号を取り出して送信できる方法を発見しました。この研究では、マイクロ波を無線で放出・変調し、無線周波数の信号を受信できるレーザーを実証することができました。今回の成果は、超高速Wi-Fiだけでなく、ハイブリッド電子フォトニック機器の開発にも役立つと考えられます。
どのように機能するのか?
従来のレーザーは同じ周波数の光を照射していましたが、レーザー光周波数コムは複数の周波数を同時に照射することが可能です。これらの周波数は、櫛の歯のように等間隔に配置されます。
レーザー内では、異なる周波数がうなり合って、マイクロ波が発生します。レーザー共振器内の光は、通信スペクトル内にある周波数で電子を発振させます。
研究チームは、マイクロ波信号にデータを入れて無線で送信できる新しい機器を開発しました。これのために、機器の上部電極に隙間をエッチングして、ダイポールアンテナ【使用電波の波長の2分の1より短い直線状の導体を、左右対称に配したアンテナ】を作成しました。
光周波数コムを用いて、マイクロ波を無線で放射・変調する装置。
レーザーから射出される「ビート」は、まるで絵画(右)のようだ。
画像出典:Marco Piccardo / Harvard SEAS
マイクロ波放射にデータを符号化するため、研究チームは光周波数コムを変調させました。放射は、ダイポールアンテナを通して装置から送り出されます。その後、ホーンアンテナ【マイクロ波を伝送する導波管の切口をラッパ状に開いた形のもの】が無線信号を受信し、最終的にフィルタリングされてコンピュータに送信されます。
レーザー無線は、信号を受信することもできます。これを実証するために、研究チームは別の機器からの信号を使ってレーザーの動作をワイヤレスで制御しました。ある1曲【『Volare』】をワイヤレスで受信機に送信したのです。
全体として、この技術は将来のワイヤレス通信に非常に役立つ可能性があります。テラヘルツ無線通信の実現にはまだほど遠いものの、この研究は、そこに至る方法を説明する素晴らしい手引きとなります。