・新しい音響泳動印刷は、音波を使って様々な液体から正確にしずくを作り出します。
・液体の粘度や組成に依存しないで作り出すことができます。
・音波の振幅が小さくなればなるほど、しずくの大きさは大きくなります。
・いくつかの新しいバイオ医薬品や化粧品の製造に使用することができます。
家庭用印刷技術の起源は1930年代にさかのぼります。今日では、高速で管理しやすく、エネルギー効率の良い液体インクジェット・プリンターやレーザー・プリンターが開発されています。低コストで、鮮やかな色彩の高品質出力が可能になっています。
今の所、しずくを精密に生成しパターン化する方法は、インクジェット印刷が最も一般的です。しかし、この方法は水の10倍以上の粘度を持つ液体でしか使えません。
レーザー誘起前進転写やバルブ式の印刷もありますが、これらの技術では、体積転写率はノズルサイズ、ソース-基板間距離、材料粘度によって変わります。インク組成ごとにこれらのパラメーターを調整する必要があるので、温度や時間によって特性が変化する材料にとっては非常に難しい作業です。
バイオプリンティングやバイオ医薬品にとって重要な液体の多くは、少なくとも水の100倍以上の粘度を持っています。実際、糖に関連するバイオポリマーの中には、水の25,000倍近い粘性を持つ蜂蜜と同程度の粘性を持つものもあります。
こうした限界を克服するため、ハーバード大学の研究者たちは、音波を利用して液体から正確にしずくを作り出す新しい技術を構築しました。これは液体の粘度や組成に影響を受けません。基本的に、音波の力を利用して、ドロップオンデマンド方式でさまざまな材料を印刷することができます。
どのように動くのか?
どんな液体でも重力があればしずくが垂れるが、重力だけで滴の大きさや滴下速度をコントロールすることはできません。例えば、蛇口から水が数秒で落ちるのに対し、水の2000億倍の粘性を持つピッチは10年で1滴しか垂れません。
実験チームは、音波を使ってしずくの形成を制御しました。このような圧力波は、重力に逆らう音響浮揚など、多くの実験でテストされてきました。現在、それは重力を補助するために使われています。この新技術は音響泳動印刷と呼ばれています。
画像元: Daniele Foresti/Jennifer A. Lewis/ハーバード大学
これを使うとサブ波長音響共振器を設計し、ノズル先端に重力(1G)の100倍の吸引力がある、極めて限定された音響場を作り出すことができます。これは太陽の重力の4倍です。
しずくが特定のサイズに達すると、音場でしずくがノズルから引き離され、目標位置に向けて放出します。音波の振幅は、流体の粘度に関係なく、しずくの大きさを左右します。
実験と応用
液体金属を使った音響泳動印刷でしずくを重ねる | 画像元: Daniele Foresti/Jennifer A. Lewis/ハーバード大学
研究チームは、バイオポリマー、蜂蜜、光学樹脂、幹細胞インク、液体金属など、いくつかの材料でこの技術をテストしました。音波はしずくを通過しないので、この技術はタンパク質や生きた細胞のような敏感な生体分子にも使用できるほど安全です。
研究者たちは、最終的にこの方法がいくつかの新しい化粧品、バイオ医薬品、食品の製造に使用され、導電性材料や光学材料の可能性を広げることができると考えています。