オフショア開発が進む国内IT・Web産業
国内のIT人材(特に開発者、プロジェクトマネージャなど)の不足状況は依然として解消の動きが見られませんし、ある転職サービス会社の調査によると、実際にITエンジニア職(IT・通信)の求人倍率は「3.29倍(求職者1人あたりに3.29社の割合)」。
(参考:ITエンジニアは相変わらずの「売り手市場」も、クリエイティブ人材の需要は縮小傾向?【2016年4月転職事情調査】)
確かにこれらの状況はITエンジニアにとって就・転職にとって「おいしい」状況とも考えられるのですが、一方でこんなデータもあるようです。
▼オフショア開発の実施状況(2013年)
(※IPA統計より)
オフショア開発は「開発業務を海外法人や海外の子会社に発注すること」ですが、その主要な発注先となっている中国・インド・ベトナム・フィリピンなどは新興国ということもあり、人件費を低く抑えられることが最大のメリットになります。
上図を見ても、全体では3割程度の実施状況ですが、従業員規模が大きくなればなるほどオフショア開発の実施率は上がり、「1,001人以上」の企業では実に「7割弱」の企業がなんらかの海外発注を行っていることになります。
また同統計によると、今後の企業側の意向も「57.7%」の企業が「今後案件の増加が見込まれる」と回答しており、オフショア開発に意欲的な姿勢が見られます。
さらに国内企業のオフショア開発をサポートするサービスを提供する動きも活発化が見られます。
例えば「株式会社エボラブルアジア」は、国内企業向けには「オフショアBPOサービス」としてWEBページ作成・Web更新業務、オークション入札監視業務、人事や総務の情報更新作業などのオペレーション業務、また不動産情報やお客様情報などのデータ入力業務などをベトナム法人にアウトソーシングできるサービスを提供。
さらに「デジタルマーケティングコンサルティングサービス」では、WEBサイトの制作、SEO対策、ソーシャルメディア運用代行、及び動画コンテンツ制作やデザイン受注など、ラボ型ワンストップサービスも提供しています。
http://offshore.evolableasia.com/
また株式会社Edge flowが運営する「BASE MAKE」では、低コストで優秀なエンジニアに依頼ができ、海外スタッフとの開発ではネックとなるミス・コミュニケーションをできるかぎり抑える開発環境の紹介事業を行っています。
今後すぐに日本のIT・WEBの開発環境が新興国に移転していくとは思えませんが、IT・Web制作は元請けがあり二次請けがあり三次請けまである一種の「製造業」。
人件費の安い海外に製造(開発)拠点が出て行くというのは日本の「製造業」の宿命と言えばそれまでですが、これが行き過ぎると「開発拠点の海外進出→国内人材の成長機会が減少→産業の空洞化」という状況も生まれかねません。
やや悲観が過ぎるかもしれませんが、国内エンジニアは開発スキル以上のバリューがないと生き残りが難しくなる未来がやってくる可能性もあるかもしれませんね。
少なくとも今のところ日本のIT人材の不足を補う選択肢は、「国内エンジニア人材の育成」と「海外オフショア開発」という二つの大きなベクトルで進んでいるようです。