・社会経済的に低い地位での生活は、健康に長期的な影響を与えます。
・生物学的に埋め込まれ、ヒトゲノム中の遺伝子の約10%に影響を与えます。
人生で社会経済的地位(SES)が健康にどのような影響を与えるかを理解することは、理論的および臨床的に重要なことです。最近のいくつかの研究では、SESが生物学的に埋め込まれていくプロセスを探ることに焦点が当てられています。
これまでの研究では、すでにSESが人間の健康に大きな影響を与えることが示されており、社会的な不平等がストレスの理由の1つである可能性があるとされています。低いSESおよび低学歴は、さまざまな種類の癌、心臓病、および感染症に関連しているとされ、また、コルチゾール調節不全および慢性炎症を含む多くの疾患の原因となる生理学的過程にも影響を与えると示されています。
ノースウェスタン大学の研究では、貧困が1,537遺伝子にわたる2,546のDNAメチル化レベル(遺伝子発現形状を変えることができるエピジェネティックマーク)と関連していることが発見されました。SESが低いとゲノム内の遺伝子のほぼ10%にマークが付きます。
DNAメチル化のプロファイル
研究チームは、若年成人におけるDNAメチル化が、幼児期および成人早期にSESによって予測できるものかどうかを調査しました。フィリピンでの出生コホート研究(36年間)から幼児期から始まるSESの測定値データを収集しました。
このデータを、参加者が21歳近くになったときに収集された無色の白血球細胞(体液中を循環し、感染症や病気と闘うのに役立つ)で測定されたゲノムワイドなDNAメチル化と組み合わせ、次に、特異的にメチル化された部分の機能的濃縮分析を行った結果、高い基準のSESと低いSESの人々で異なるパターンのDNAメチル化があることを見出しました。
前向き研究、多次元にわたるSES評価、およびDNAメチル化のゲノムワイドの特徴もこの分析を裏付けするもので、遺伝的変異の主成分も合います。
この研究は2つの理由で重要とされます。
1. 私たちは長い間、貧困が健康に影響を与えることを理解はしていましたが、貧困がどのように影響を与え、私たちの体がどのようにこれらの経験を「覚えていく」かは、よくわかっていないということの確認。
2. 長期間にわたる貧困という経験は、ゲノム全体に埋め込まれ、その構造と機能を形作るということの発見。
このプロセスに関係するいくつかの免疫遺伝子は、感染と神経系の発達に反応します。この先の研究では、研究者らはこの研究で特定された部位での特異的メチル化の健康への影響を、詳細に理解して説明していくでしょう。
身体に長期的な影響を与えるSESでのDNAメチル化で、人生の後半でどのような健康被害が出るかに焦点を当てていくと思われます。