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【ベンタブラック】光を99.965%吸収する世界で最も黒に近いと言われた漆黒の色

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本記事は、Vantablack: 11 Facts About One Of The World’s Darkest Materials
翻訳・再構成したものです。
配信元または著者の許可を得て配信しています。

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読了時間 : 約3分35秒

ベンタブラックはイギリスのサリーナノシステムズ社が開発した魅力的な物質です。可視光の99.965%を吸収し(光が垂直に物質の表面に当たった場合) 、世界で知られている物質の中で最も黒いとされています。VANTABLACKという名前はMarvelシリーズのキャラクターのようにも聞こえますが、Vertically Aligned NanoTube Arrays(垂直に並べられたナノチューブの配列)の頭文字を並べたものです。

 

そのユニークな性質と便利な機能とは裏腹に、ジオポリマーやシリコーンなどの他の合成素材と比べてあまり人気がありません。以下は開発、作用、有用性の観点からベンタブラックについての理解を深められるよう興味深い事実をリスト化しました。

 

 

1. 塗料ではありません

色は人間の視覚特性です。光が物体に当たると表面は光の一部を反射し残りを吸収し、私たちは反射した光のみを感知します。ベンタブラックは色ではなく物質です。人間の毛の直径50,000分の1程の小さなカーボンナノチューブを配列したものです。表面積1㎠あたり約10億本のナノチューブから構成されています。ナノチューブに光が当たるとほんのわずかな光のみが反射し視覚へ届きます。したがって、ベンタブラックは色ではなのです。

 

 

2. 色はどこへ?

化学気相成長法によりカーボンナノチューブを成長させることでベンタブラックは作られています。入射光はチューブ内を何度も屈折し、最終的には吸収されて熱として放散されます。

 

 

3. ベンタブラックを作るには

似たような色を吸収する物質は2010年代初期に多く開発されてきましたが、ベンタブラックが他と比べて面白いのは400度で形成される点です。NASAでも同じような物質が開発されましたが、750度で物質が形成されるため耐熱性が高い物質にのみ使用が限られています。

 

 

4. 高温での安定性が高い

2010年代初期に開発された似たような物質に比べ、ベンタブラックは放射性粒子の降下やガス放出が極めて低く耐熱性や振動耐性にも優れています。また、不溶解性で1平方メートルあたりの重さは2.5g、融点は3000度です。

 

 

5.見た目とは違う手触り

入射光の99.965% を吸収し、一見柔らかいビロードのような手触りのような素材に見えますが、実際に触れると凹凸のないなめらかな感触です。

 

 

6. ダメージを受けやすい

垂直配向のカーボンナノチューブ・アレイは直径の割に長く、まっすぐな形状です。しかし、圧力をかけられると簡単に壊れてしまい、保護されていない表面への塗装は向いていません。接触への耐性はありませんが、振動などへの耐性はあります。これはカーボンナノチューブには質量がないため加速した際に力が加えられない特性によるもので、それゆえベンタブラックは宇宙線などの激しく揺れる乗り物などに適しているのです。

 

 

7. 世界一黒い物質ではない

2019年、マサチュー工科大学の研究者たちはベンタブラックより10倍黒く、光を99.995%吸収する世界一黒い物質を偶然発見しました。記録上、最も黒い物質とされています。

 

 

8. 商用製品

ベンタブラックはイギリス国立物理学研究所によって開発されましたが、サリーナノシステムズ社がベンタブラックという名前で商標を登録しており、垂直配向のカーボンナノチューブ・アレイはBarbara Infrared社やNanoLab社などの世界中の企業により販売されています。最初にベンタブラックが商品として誕生したのは2014年で、2015年には防衛や宇宙部門のバイヤーの条件に見合うまでに成長しました。

 

 

9. 3つのバリエーション

垂直配向のカーボンチューブは加工方法によって、3つのバージョンがあります。

 

Vantablack S-VIS:可視化できる光源を吸収するランダム配列されたカーボンナノチューブを使用。

Vantablack S-IR: 赤外線吸収作用により優れたランダムに配列されたカーボンナノチューブを使用。

Vantablack VBx: 前者に比べて簡単に塗装が行え、ノンナノチューブのスプレー塗装です。

 

 

 

10. 塗装

合成された物質の中で最も黒く、宇宙配備赤外線システムのパフォーマンス向上から望遠鏡の逆光防止まで様々な用途が期待できます。

 

宇宙技術: ベンタブラックのコーティングは赤外線カメラシステムの黒体キャリブレーションや光学システムの逆光を防ぐために使用されます。紫外線からTHz領域まで対応しています。

光学&レンズシステム: ベンタブラックS-VISはモダンレンズを組み立てるのに使用され、コーティングは露出過度、逆光によるゴーストフレアやベーリングフレアを減らします。これによりコントラストのレンダリング効果、クオリティの高い写真を可能にします。

自動車: ベンタブラックのコーティングは自動車の光学センサーやディスプレイに使用され、これにより、暗がりでのシステム信頼性の向上にもなります。

 

グレアシールドやカメラハウジングに施された漆黒のコーティングは事実上センサーのバインディングを消去し、不要な光、ピクセルのウォッシュアウトを取り除きます。LiDARなどの光センサー技術にも用いられています。

 

 

2019年BMWはベンタブラックを纏った新型X6を発表しました。光や色を反射させない塗料は他の多くのSUVと一線を画しています。最近では、催眠効果をもつ黒色はアーティストやデザイナーによって物を飾ったり、目の錯覚を起こすのに利用されています。事実、ベンタブラックはアルミホイルなどの3D素材に塗装されると黒すぎるがゆえに立体感がなくなり二次元に見えてしまいます。

 

 

 

11.簡単には購入できません

ベンタブロックの生産過程は込み入っており、サリーナノシムテム社で複雑な機械を用いて生産されます。全ての生産過程が終了するまで2日程かかり、金やダイヤよりも高価で、手軽に購入し私用で使うことはできません。もし研究のためにベンタブラックが必要であれば、企業に必要な情報を提供しましょう。

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