・新しい3Dプリント角膜で、角膜ドナーが不必要になります。
・この技術を使えば、角膜を10分以内にプリントすることができます。
・しかし、医師が実際の角膜に置き換えることに成功するまでには、数年かかると予想されています。
世界保健機関(WHO)は、トラコーマ(角膜失明を引き起こす伝染性細菌感染症)の予防のため、世界中で1000万人以上が手術を必要としていると発表しています。また、約500万人が角膜瘢痕による全盲に苦しんでいます。
角膜ドナーの数は相当数いますが、移植可能な角膜の需要と供給には大きな差があります。そこで、科学者はここ数年、人工角膜の開発に取り組んでいます。
ニューカッスル大学の研究者は、特殊な溶液「バイオインク」を使って人工角膜を3Dプリントにしました。この技術は、将来的に角膜提供の数を減らし、視力喪失とともに生きる患者や家族に良い影響があることが期待されます。
角膜は眼球の一番外側(保護層)にあり、視力を集中させるのに重要な役割を果たしています。その表面は眼球の全屈折力の80%近くを占めています。機能的な角膜代替物の工学的枠組みを開発するためには、光学的屈折力を提供する回転曲率を注意深く設計することが重要です。
どのように作られたのか?
科学者たちは、ヒト角膜間質細胞(健康なドナーから入手)とアルギン酸ナトリウムおよびメタクリル化I型コラーゲンを混合し、3Dプリント可能なユニークなゲル(「バイオインク」と呼ばれるもの)を作製しました。
このゲルを安価な3Dバイオプリンターに入れ、バイオインクを同心円状に吐出して角膜のような形状を作り出しました。角膜全体を印刷するのにかかった時間はわずか10分でした。
バイオインク
コラーゲンとアルギン酸の混合物は、室温で幹細胞を生かしながら、幹細胞の形状を保持するのに十分な強度を持つ溶液を作ります。プリンターのノズルから絞り出すので、溶液はあまり硬くなりません。
バイオインクを使えば、ユーザーは細胞の増殖を心配することなく組織をプリントすることができます。角膜の形状を患者に合わせて設定することもできます。もっと作業を簡略するために、患者の眼球をスキャンして角膜から組織の寸法を抽出することもできます。
これらのスキャンは任意のGコードの形で表現され、特定の解像度で3Dプリントソフトウェアによって自動的に測定されます。アンダーカット、凹み、複雑なパターンなどを再現する能力は、円、線、点などの3D図形の複雑さの関数です。
最終段階では、適切な構造的、機能的、生体力学的特性が生かされるように、適切な生理学的手がかりの存在下で、3Dプリントされた構築物のリモデリングされる事があります。
最後に、角膜コンストラクトの周辺部と中心部の厚みを定量化することにより、印刷精度が上がりました。さらに、印刷後1日目と7日目のカプセル化角膜角膜細胞の生存率も高まりました。
今後どうなる?
3Dプリンターで作られた角膜を手にする研究者たち
この人工角膜はまだ臨床段階ではありません。研究者は、この人工角膜をさらにテストし、副作用の有無を確認する予定です。具体的にいうと、間質細胞の表現型、3Dプリント角膜の生体適合性、上皮細胞の成長をサポートする能力などを調べます。
結論:医師が実際の角膜に置き換えることに成功するまでには、数年かかるでしょう。