・ 強力な7T(テスラ) MRIを使用して、亡くなった女性の脳をスキャン
・100時間のスキャンプロセスで7.92テラバイトの生データを収集
・幅0.1㎜よりも小さな構造を見つけられるほどの精細な情報を画像化
磁気共鳴画像法(MRI)は、強力な磁場と電波を使用して、体内の臓器や組織細胞の詳細な情報を画像にする方法です。CTスキャンやPETスキャンとは異なり、MRIはX線や電離放射線を使用しません。
医学的診断や病期分類のために、世界中で約50,000台ものMRI装置が使用されています。米国が最大のマーケットとして知られており、欧州と日本が米国に続くマーケットとなっています。
MR画像の品質は、画像のコントラスト、空間解像度、信号対雑音比、搬送波対雑音比などのさまざまな要因に関連し、最新の高磁場スキャナーは、約1㎜の大きさの物体を見つけることができます。
マサチューセッツ総合病院の研究チームが、より強力な7T MRIで人間の脳全体をスキャンしました。このMRI装置によって生成される磁場は70,000ガウスで、かつてないほどの高解像度画像の生成に成功したのです。
前例のない脳データ
研究チームは、脳を100時間以上スキャンし、100 µmの等方性分解能でシングルエコーマルチフリップ高速ローアングルショット(FLASH)データを取得しました。
幅0.1㎜より小さな細胞構造を見つけるのほどの高解像度画像で、扁桃体のような脳の小さな細胞部分を鮮明に画像化することができます。
この高解像度画像によって、記憶・意思決定・感情的反応における微妙な変化を判定し、昏睡状態・うつ病・不安障害・その他の精神疾患に関係する脳の異常を特定することができるようになりました。
これらの結果は、ICUで死亡した58歳女性の精神疾患や神経疾患の病歴がない脳を2年以上保存し研究することによって判明しました。
研究チームは、気泡を組織細胞の空洞から逃がすため、カスタムスフェロイドケースに脳を閉じ込め、7T MRIでおよそ5日間にわたり脳をスキャンしました。
ローカライザー、調整スキャン、および品質保証スキャンを考慮すると、合計100時間8分にもわたるスキャンによって、7.92テラバイトの生データを収集したのです。
生きている脳はどうなのか?
FDAは2017年に臨床画像診断用も初めて7Tスキャンを承認しましたが、(少なくとも現在の技術では)生きている人間の脳で同じような解像度画像を得ることは不可能です。
理由として第一に、患者は5日間という長時間にわたるMRIスキャンに耐えることができません。そして、血液の流れや呼吸のような小さな動きでさえ、画像を歪めてしまいます。このような理由があり、生きている脳では、前述のような生データを収集できないのです。
研究チームは、ビデオと基礎データを公開しました。公開したビデオや基礎データに臨床的、教育的、研究的にあらゆる適用性があると考え、健康と病気における脳解剖学において、今後さらなる発展を促進すると考えているのです。