・これまで知られていなかった超大質量ブラックホールによるクエーサー【恒星状天体】83個が発見された。
・これらのクエーサーは地球から約130億光年の距離にある。
・観測の結果、1立方ギガ光年ごとに超大質量ブラックホールが存在することが判明。
ほとんどの大きな銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在します。超大質量ブラックホールに物質が注入されると、非常に高温の領域が形成され、そこから膨大な量の放射線が放出され、クエーサーの動力源になるという理論があります。簡単に言えば、クエーサーは非常に明るい活動銀河核です。
クエーサーは1960年代初頭に電波望遠鏡によって初めて観測されましたが、物理学者たちは1980年代まで、この小さくて信じられないほど明るい天体を説明することができませんでした。2017年現在、最も遠いクエーサーはULAS J1342+0928と名付けられたもので、地球から293億6千万光年の距離にあります。
最近、天文学者の国際チームが、遥か彼方の宇宙にある83個の新しいクエーサーを報告しました。これらのクエーサーは地球から約130億光年離れており、ビッグバンからわずか8億年後(138億年前)に形成された超大質量ブラックホールであることを意味しています。
この発見は、ブラックホールが宇宙の最初の10億年間にガスの物理的状態にどのような影響を与えたかについて新たな洞察を与えるものです。超大質量ブラックホールが宇宙初期にどれほど一般的であるかを教えてくれるのです。すべての観測結果は、2つの異なる学術誌に掲載された5つの論文で報告されています。
より暗いクエーサーの発見
最も大質量のブラックホールによって駆動される最も明るいクエーサーだけを説明するこれまでの研究とは異なり、今回の新しい研究では、遥か彼方の宇宙にある、より暗いクエーサーをいくつか調査しています。
クエーサーのイメージ図
出典:松岡良樹
研究チームは、すばる望遠鏡の広視野カメラHyper Suprime-Camが捉えたデータを解析しました。このカメラは8億7千万画素の可視光カメラで、満月の7倍の面積をカバーできる広い視野を備えています。
この調査データから、研究チームは遠方のクエーサー候補を選び出し、さらに綿密な観測キャンペーンを行い、選ばれた候補のスペクトルを作成しました。
その結果、地球から約130億光年離れた場所にある17の既知のクエーサーと83の未知のクエーサーが明らかになりました。これは、130億年前に存在したこれらのクエーサーを現在観測している、ということを意味します。
すばる望遠鏡が検出した100個のクエーサー
そのうち83個 (上段7列) は新しく発見されたもので、17個 (下段2列) はこれまで知られていたクエーサー。宇宙膨張と銀河間空間での光吸収のため、これらのクエーサーは暗い赤色に見える。
出典:国立天文台(日本)
研究チームは他にも、興味深いことを発見しました。1立法ギガ光年ごとに、超大質量ブラックホールが存在するということです。これをうまく説明するために、チームは宇宙を架空の立方体(一辺の長さは10億光年)に分割しました。調査データによれば、それぞれの立方体に超大質量ブラックホールが1つずつ存在します。
クエーサーは再電離を起こさなかった
宇宙の水素はかつて電荷を持たず(中性)、後に「再電離」(電子と陽子に分解される)しました。この再電離のプロセスは、第一世代の超大質量ブラックホール、銀河、星が誕生したとき、つまり宇宙誕生から数億年後に起こりました。
これまでの仮説とは対照的に、今回の研究では、観測されたクエーサーの数は、再電離に十分なエネルギーを供給できるほど多くないことが示唆されています。したがって、宇宙初期に形成され始めた多数の銀河によって、再電離が引き起こされたのかもしれません。