中国国家航天局(CNSA)は世界中で歴史の古いものでなければ最大の宇宙ステーションでもありません。しかしその成果は歴史上まだあまり達成されていないような内容を報告しています、完全に機能するグローバルナビゲーション衛星システムかGNSSの確立というものです。
GNSSはシンプルな衛星ナビゲーションシステムで、様々な地理空間のサービスをグローバル規模で提供してくれます。現状ではアメリカのGPSとロシアの GLONASSが唯一の使用できるシステムです。
ほとんどの読者はGPSや全地球測位システムについてとてもよく知っているかと思いますが、ベイドゥやGLONASSよりも知名度が低いですよね。ベイドゥは中国の主要な衛星ナビゲーションシステムで、CNSAによってのみ操作されているものです。
このような広範囲におよぶシステムは、1980年代に中国政府によって考案されたもので、アメリカの軍事航空技術の進歩に追いつこうとしたものです。BeiDou (BDS)はおおくま座のグループの中の明るい星である北斗七星より名前をとっています。
GPSやGLONASS、Galileo、他の最近開発されたナビゲーションシステムのように、ベイドゥの最大のゴールは、他のGNSSと比較してより正確さをもった状態でグローバル展開することです。
そのゴールを達成する為に、プロジェクト全体は3つのフェーズを設定されました。最初のフェーズ(ベイドゥ1)は、2000年に開始され、セカンドステージは2007年に、サードステージは2015年に開始されました。BeiDou (BDS)測位衛星システムは2020年にはグローバル展開することを期待されています。
簡単に説明すると、BeiDou (BDS)は中国版のGPSです、しかしそれは中国のみでの使用です。アジアにおいて2つ目の局地的なナビゲーションシステムで、もう1つのシステムはNAVICというインドのものです。もしうまくいくと、中国のベイドゥはグローバルレベルでGLONASSやGPSと匹敵するレベルになるでしょう。
最初のフェーズでベイドゥナビゲーションは、ベイドゥ1A衛星とともに2000年の10月30日に実地で使用されました。さらに、2000年11月20日にベイドゥ1B、2003年5月25日にベイドゥ1Cが続いて打ち上げられました。
この3つの衛星の打ち上げ成功は、ベイドゥにとって最初の成功プロジェクトとなりました。そしてそれらのバックアップ衛星であるベイドゥ4Dは緊急事態に備えて打ち上げられました。
そしてそれらの4つのベイドゥ衛星はすべて静止軌道(GEO)に配置され、中地球軌道(MEO)には配置されてない点は特筆すべき内容です。
静止軌道(GEO)で使用されることによって、ベイドゥ1衛星は多数衛星を用いることを不要にしました。しかし最大で地球での範囲に限られています。東緯70から140の間、北緯5から55の間の範囲が機能するエリアです。ベイドゥ1のプロジェクトは2012年には完全に終了しました。
さらに違う点で特筆すべき内容としては、2008年ベイドゥ1一機に対して2929ドル、当時のGPSの10倍に近い金額を設定したという点です。金額は極めて高額でしたが、噂によると輸入品のマイクロチップが高額であることによるものだそうです。一旦それらのマイクロチップが国内でも製造できるようになったら、全体の金額は下がるでしょうが。
ベイドゥナビゲーションシステムの第2段階として、COMPASSとして知られているベイドゥ2は前回のものよりアップグレードしたシステムとして2007年に発表されました。2008年までは、中国のナビゲーションシステムは軍事的用途か中国政府に関係するものでしか使用されていませんでした。しかし、一般利用や商用に入手できるようになりました。
この段階で、全19の衛星(うち2機は引退済)が展開されており、そのうちの1つの打ち上げ予定は2019年に予定されています。最初の段階の間、COMPASS は25mの決められた位置に配置することを実施しました、しかしそれ以降開発された衛星は実質、より精度が高くなっています。
新しいシステムは2011年の11月に十分に使えるように開発されており、2012年の終わり頃までにはアジア・環太平洋地域にこのシステムを輸出するようになりました。現在ベイドゥシステムでカバーできる範囲は東緯55度から180度、南緯55度から北緯55度の間です。
正確さと頻度
GPSとGalileoのようにベイドゥは2つのレベルで各自のサービスを展開しています。市民用に開発された無料でアクセスできるものと軍事用に開発されたものがあります。市民用のサービスは、10m以内の場所追跡の正確さを備えており、また10ナノ秒単位の時間の正確も備えています。
また販売先を限定した、10㎝単位の正確さとデータ送信の機能を備えた衛星もあります。ベイドゥのチャンネルにアクセスするには、これまでのところ中国とパキスタンの軍隊にのみ許可されています。ベイドゥのアラームシグナルはCDMA法がベースとなっています。
ベイドゥ2は4つの周波数の幅(E1、E2、E6、E5B)を持っています。上記の図でいう赤色の部分です。4つの全ての幅はGalileoのものと重なっています。これらの重なりは、受信機または接地端子の設計に関連する問題を整理するという点で有益ですが、シグナル妨害を起こすという点で問題があります。
両方のナビゲーションシステムが同時に特定の状況になったときにはE1かE2の幅(Galileo’の公共サービスに割り当てられている)でシグナル妨害が発生しているということが言えるでしょう。
しかしこのような衝突を避ける為にも、ITUは「早いもの勝ち」の内容である、最初に放映し始めた国にその特定の周波数の利用権はあるという国際法をつくっています。その次の順番となる利用国は最初に利用し始めた国から許可を取得する必要があります。それにより各自の放映を邪魔することがないように保証されています。
いまや、上記の内容を踏まえて、中国のベイドゥ2がGalileoよりも早く最初の取得権を獲得する為に動き出すことは確実です。
ベイドゥ3
CNSAは2015年3月30日に、四川省にあるBDS-3衛星を使用したベイドゥ3ナビゲーション衛星の第3段階を開始させました。全35の衛星はこの3段階目で使用されることを予定されており、そのうち19機はすでに配置されています。
ベイドゥ3はB1C/B1I/B1A, (1575.42 MHz), B2a/B2b (1191.795 MHz), B3I/B3Q/B3A (1268.52 MHz)、という新しい周波数幅を公表しています。
全35機の衛星のうち、27機はMEO衛星で5機はIGSO,3機はGEOです。これらの衛星はすでにGPSとGLONASSに似たSARとSBASを持っています。
ベイドゥの商業利用
ベイドゥのナビゲーション衛星は中国での商業利用に成功しています。チャイナデイリー紙によると、BDSは China Aerospace Science やIndustry Corp 、AutoNavi Holdings Ltdなどが2015年の歳入で310 億円を稼ぐのに役立っていると述べています。その記事では4000億元にまで2020年までにのぼるでしょうとのことです。
2013年までに中国の多くの携帯電話メーカーは、ベイドゥ衛星システムと互換性のあるように商品をつくりました。何百万という商業用の車や漁業船にはBDSが装備されており、あと数年で個人用にも発表されるはずです。
知っての通り、GPSとGLONASSシステムの位置サービスの技術内容はよりよく改良されており、その中にベイドゥが入るのはもうすぐと言えるでしょう。
GPSとどう異なるのか
ナビゲーション衛星システムはどの国でも持てる重要な技術のひとつであることは言うまでもありません。さらにアメリカとの地政学的、経済的スタンスを考慮すると中国にとってはとても重要なのです。
GPSの操作に関して、アメリカ軍は地球上のどの部分のGPSでも操作を非活性化することができるので、どの国も自国のGPSに似たシステムを構築したいと考えます。
GPSとベイドゥにおいて、正確さぐらいの違いしか今はない状態です。またGPSは全31機の衛星があり、ベイドゥは35機になる予定です。全機が配置されると、GPSよりもロケーションサービスが正確なものになると期待されています。
2016年に話を戻すと、中国の衛星システムはミリメートルレベルの正確さを要求されていましたが、それは、GPSの10倍レベルの精密さと言える内容でした。
アメリカ合衆国、カナダ、メキシコの範囲に渡って、GPSシステムが使用されているのはWide Area Augmentation または WASS system と言われ、北アメリカ大陸の領域で利用されているシステムです。
アメリカ合衆国のGPS公式情報サイトでは、アメリカの基礎システムはリアルタイム位置把握システムを㎜単位で提供でき、ハイエンド顧客やReal-Time kinematicsのような最新技術に応用される予定です。現在では、アメリカ空軍がGPSⅢと連携しており、GPS衛星の第7世代です。
一方で、GPSの縦断的な正確さは水平的なシステムよりも正確さに劣りますが、まだベイドゥのものよりかは正確です。(25mの水平線上、30mの縦線上)
しかしながら、航空術に関するチャイニーズジャーナルの記事によると、BDSは1㎝水平線上、3㎝縦線上で正確に関してGPSの最近の基準を上回ったようです。
他の衛星ナビゲーションシステム
ベイドゥの他にも、いくつか衛星ナビゲーションシステムが近年開発されたり発表されたりしています。その中でも最も知られているのはGalileoです。EUのGalileoは数10億ドルのプロジェクトで、地政学的な要素を踏まえながら高いレベルの正確さとヨーロッパ地域で独自に保有している位置システムを提供するものです。Galileoは26機の衛星を含み、さらに6機の衛星は次の10年で展開されます。
IRNSSやNAVICは4機の衛星からなる(さらに3機展開される予定)したナビゲーションシステムです。NAVICは独自に開発と運営をIndian Space Research Organizationによりされています。
IRNSSは、公に展開しているサービスでは10㎜単位、制限しているサービスでは10㎝単位での正確な位置サービスを提供しています。
GPSやGLONASSやGalileoとは異なり、the Indian navigation systemは早々にグローバル展開する予定はありません。
次は日本のQuasi-Zenith Satellite System ( QZSS)についてです。GPSの正確さをさらに増し日本や周辺地域で利用できるものです。近年では、4機の衛星を含むQZSSですが、2023年には7機まで増やす予定のようです。
4機のうちの3機は互いに約120°離れた高度に傾斜した静止軌道に配置されています。このような高度な傾斜はアナレンマとして知られていますが、日本中で利用されています。QZSS 衛星によって送られているシグナルは、GPSシグナル(L1C/A, L1C, L2C)と同一で、それによりアメリカのナビゲーションシステムと連携がとりやすくなっています。
私たちはGPSに経済面や政治面で頼りきる必要はありませんが、中国のベイドゥ衛星が将来的にアメリカやロシア、ヨーロッパの衛星とどう対峙するのか楽しみです。