暖かいスープをテーブルに置いておくとどうなるでしょうか?周囲の空気に熱が失われ、しばらくすると冷たくなります。この熱の伝導を対流と呼んでいます。
熱伝導には、熱放射、熱伝導、対流の3つの種類があります。放射では、熱は電磁波の状態で伝達されます。伝導では、熱は物理的に接触した物と物質間を伝わります。
しかし対流では、液体や気体などの流体中の分子のバルク移動を伴うため最も複雑な形式の熱伝導です。簡単に言うと、対流は液体と気体でのみ発生します。
対流熱と物質移動(流体内)は次の2つのメカニズムを介して行われます。
1.拡散:高濃度の領域から低濃度の領域への分子の移動
2.移流:流体内の電流のバルク運動による物体や熱の伝達
どちらも硬い固体では発生しません。しかし、対流熱は固体粒子がある位置から別の位置へ移動できる柔らかい固体や混合物で発生する可能性はあります。
対流熱伝達は、自然対流と強制対流の2つのカテゴリーに分類できます。
自然対流では、電流は流体の温度による密度差によってのみ発生します。一方、強制対流では、電流はファンやポンプのような外部要因によって発生します。流体の移動が速いほど、対流の速度が速くなります。
対流とは一体何なのか一般的なアイデアを学んだので、次は対流の様々な例と応用を見てみましょう。以下に、日常生活で見られる対流熱伝達の例を挙げています。
14.水の沸騰
タイプ:強制対流
やかんをストーブに置くと、底から水が温まります。底部近くの分子は運動エネルギーを得て密度が低くなります。底の温水は上部の冷たい水よりも密度が低いため、冷たい水は下に沈み、温水は上へ上昇し始めます。
底の冷たい水は、その上の水よりも温かくなり、密度が低くなるため水面に上がります。このプロセスは何度も繰り返されます。やかん内の下部と上部間の温度差が原因で起こります。水分子の動きは対流です。
13.ヒートシンク
タイプ:強制対流
ヒートシンクは対流熱伝導率を向上させるパッシブ熱変換器です。電子機器に広く使用されています。例えば、往来のCPU/GPUは、ヒートシンクとファンを組み合わせて使用して、動作温度を許容範囲に維持します。
一般的に、ヒートシンクは外側に伸びるベースとフィンで構成されています。その性能は空気流速度、フィンの設計、そしてヒートシンクの製造に使用される材料などのさまざまな要因の影響を受けます。
12.陸風と海風
タイプ: 自然対流
陸風と海風の形成は古典的な対流の一例です。太陽は日中、陸と海の両方の表面を温めます。しかし陸は海よりも吸熱能力が低いため、表面温度が上昇し、周囲の空気が温められます。温かい(密度の低い)空気は上昇し始め、低気圧が発生します。
同時に、高圧領域が海の上面に(冷たく、密度の高い空気で)発達します。気圧差により、空気が海から陸に流れ、そこから来る冷たい空気は海風と呼ばれます。
プロセスは夜になると逆転します。陸は海よりも早く冷え、周りの気温が下がり、高圧状態になります。こうして冷たい空気が陸から海に流れ、陸風と呼ばれています。
どちらも、熱は空気分子を介して伝達されます。
11.煙突効果
タイプ:強制対流
浮力によって空気が建物や煙道の煙突などの構造物に出入りすることを煙突効果と呼びます。これは屋内と屋外の温度/湿度の違いが原因で発生します。高密度で冷たい空気は常に低密度の温かい気体を押し上げます。
高い構造で、熱さが高い程、浮力が大きくなり、煙突効果が大きくなります。多くの超高層ビルや冷却塔は、自然換気と湿潤を実現するために同じ原理を用いています。
10.コンベクションオーブン
タイプ:強制対流
コンベクションオーブンは対流のメカニズムを利用して、往来のオーブンよりも速く食品を調理します。食品の周りの熱い空気を循環させるファンがあり、低温度、短時間でより均一に調理することができます。産業用コンベクションオーブンは、非食品を含む多くの製品の製造に使用されています。
9.氷の融解
タイプ:自然対流
対流は、氷が薄くなるプロセスに大きく関わっています。温かい空気が氷の表面に吹き付けられると、氷の外層の温度が上昇します。空気が熱く、速く吹くほど、氷が溶けるまでの時間が短くなります。
8.放熱器
タイプ:強制対流
放熱器はある媒体から別の媒体へ熱エネルギーを伝達します。名前に反して、ほとんどの放熱器は熱の大部分を伝達するために(熱放射の代わりに)対流を使用します。
例えば、室内暖房システムでは、温水や場合によっては蒸気が内部コイルで生成されます。水がコイルを温めると、放熱器の隣の空気が温まり上昇します。温められた空気が上昇すると、冷気が下から放熱器に引き込まれ、放熱器を通過します。この空気の移動は、部屋全体に温かい空気を拡散する垂直電流を生成します。
7.冷蔵庫
タイプ:強制対流
冷蔵庫には断熱されたコンパートメントと、冷蔵庫の内部から外部環境に熱を移動させるヒートポンプがあります。冷蔵庫は対流を使用して、食品のまわりの冷たい空気を循環させています。
冷凍室は上部の空気を冷却します。空気が沈むと下から上昇する温かい空気に置き換わります。この循環する空気は冷蔵庫内のすべての食品から熱を遠ざけます。
6.積雲と積乱雲
タイプ:自然対流
積雲と積乱雲は対流によって形成される2つの異なるタイプの雲です。これらは強力な上向きの気流によって運ばれる水蒸気から形成されます。
対流雲は上昇する積雲で急速に形成される傾向があるので、光学的に高密度です。これらの雲の中の小さな水滴の表面は、より少ない、あるいはより大きな水滴を含む雲よりも太陽の光を散乱させます。これが、雲が太陽から離れた側では濃い灰色に見え、太陽に面した側は明るい白い色に見えることが多い理由です。
5.血液循環
タイプ:強制対流
人間や他の哺乳類は対流を利用して体温を調節しています。心臓は毎分5リットルの平均速度で血液を全身に送り、体細胞によって生成された熱は皮膚上を流れる空気(または水)に伝達されます。
もし皮膚の温度が周りの気温よりも低いと、体は対流と伝導から熱を得ます。しかし、皮膚の温度が高い場合、体は対流と伝導によって熱を失います。血液循環の速度が速い表面組織では、熱伝達は主に対流です。
4.マランゴニ効果
タイプ:自然対流
マランゴニ効果は、表面張力勾配による流体の対流です。表面張力は物質の温度や組成に依存します。前者の場合、その効果は熱毛管対流と呼ばれます。
表面張力に勾配が存在すると、液体は自然に表面張力の低い領域から流れ出します。これは、表面張力が高い液体が、表面張力の低い液体よりも近くの液体を強く引っ張るために発生します。
3.地球のマントルの動き
タイプ:自然対流
地球の固体ケイ酸塩マントルの動きは、内部から地球の表面に熱を運ぶ対流に起因しており、これはマントル対流説と呼ばれます。
より詳しく説明すると、マントル対流は3つの基本的なプロセスによって駆動します。
●核からの熱損失(20%)
●放射線崩壊による内部発熱(80%)
●上部からの冷却(リソスフェアのスラブの沈下)
これは、リソスフェア(プレート)の動き、地表の火山活動、マグマ、地震、そして地殻に現れるほとんどの構造的および地質学的プロセスを引き起こします。熱の発生率が低下すると、地球は冷え、最終的には対流が遅くなるか、完全に止まります。
2.星の対流層
タイプ:自然対流
星の内部で発生するさまざまな乱流活動により、エネルギーが外側に移動します。ガス(星の奥深くからのエネルギーフラックスのために)が周囲のガスよりも高い温度まで熱くなると、ガスは上昇し、膨張し、冷却します。それらが熱化すると、上昇は止まります。
一般的に、低質量の星は放射コアと対流エンベロープを持っており、一方で高質量の星は対流コアと放射エンベロープを持っています。例えば太陽の対流層は内部の最外層であり、200,000kmの深さから目に見える表面まで広がっています。これは、エネルギーがこの領域の対流によって伝達されることを意味します。
1.ブラックホールの降着円盤
タイプ:自然対流
これは非常に珍しい例ですが、研究とシミュレーションによると、塵とガスの対流は光の速さに近い速度でブラックホールの降着円盤で発生します。結合運動は、降着流における強力な重力と回転エネルギーの散逸によって発生します。