インド宇宙研究機関(ISRO)は、1969年の設立以来、数々の目覚ましい成果を上げています。ISROの主なビジョンは、「宇宙科学研究と惑星探査を進めながら、宇宙技術を国家の発展に役立てる」ことです。
ISROは、そのビジョンを完全に守ることを何度も証明しており、最近の成果は他の宇宙機関にとっても卓越した基準となっています。
ISROは、費用対効果の高いミッションでよく知られています。プロジェクトの大部分は、惑星間プロジェクト、月面ミッション、地球衛星を中心に展開しています。
ISROの長期計画では、2020年までに50以上のミッションを実施し、500以上の通信衛星のトランスポンダ【応答装置】を配備することになっています。この記事では、インドの宇宙機関を新たな高みへと導く可能性のある、将来のミッションをいくつかご紹介します。
9. RLV-TD
RLV-TD【Reusable Launch Vehicle-Technology Demonstrator:再使用型ロケット技術実証機】プロジェクトは、二段式宇宙輸送機の再使用型ロケットを実現するための第一段階です。空気吸入式の推進力を用いた自律着陸、動力巡航飛行、極超音速飛行などの技術を評価するための飛行体として機能します。
このロケットには、頭部キャップ、胴体、ダブルデルタ翼、双垂直尾翼、エレボンとラダーと呼ばれる左右対称の能動的操縦翼面が搭載されています。このような技術を使えば、打ち上げコストを10分の1にすることができます。
しかし、特殊な合金や複合材などの素材を選び、その部品を作るのは非常に複雑なプロセスであり、高度な技術を必要とします。
8. RISAT 1A
RISAT【Radar Imaging Satellite】1Aは、ISROが開発しているRISAT衛星シリーズの3番目のリモート・センシング【遠隔探査】衛星です。地形のマッピングや、海・陸・水面の土壌水分の分析を行う陸上ミッションになります。
合成開口レーダーを搭載しており、光の状態や天候に左右されずに地球を観測することができます。Cバンドの5.35GHzで運用されます。この衛星は、2019年にPSLV【極軌道打ち上げロケット】で打ち上げられる予定です。
7. GSAT 11
GSAT 11は、新型のI-6Kバスをベースにした静止通信衛星で、Kuバンド【12GHz~18GHz】とKaバンド【27GHz~40GHz】の周波数で40個のトランスポンダを搭載しています。既存のインドの通信衛星に比べて3〜6倍の性能を持ち、毎秒12Gbitの処理能力を実現します。
重量は5.7トンで、現在軌道上にある最大のインドの衛星の2倍以上の大きさです。このプロジェクト全体には7,700万ドルの予算が割り当てられており、衛星は2018年初頭にGSLV Mk3ロケットで打ち上げられる予定です。
実験観測機器には40個の高出力Ku、Kaバンドのトランスポンダが搭載され、アンダマン・ニコバル諸島を含むインド全土をカバーすることになっています。さらに、この衛星には、11KWの電力を生成する2面の大型太陽電池パネルが搭載されます。
6. GSLV III
GSLV-III(Geosynchronous Satellite Launch Vehicle Mark III)は静止軌道に衛星を打ち上げるために設計された衛星打ち上げロケットです。第3段が低温であることが特徴で、GSLV IIよりも高い最大積載量を備えています。ISROは2017年2月19日、CE-20エンジンの試験に成功しました。
C25の第1段は、2017年5月下旬の打ち上げでGSLV III D-1に使用され、通信衛星GSAT 19Eを軌道に乗せました。さらに、初の有人飛行は2020年以降に行われます。
静止トランスファー軌道【人工衛星を静止軌道にのせる際、一時的に投入される軌道】への最大積載量を6トンに引き上げるために、GSLV IIIにSCE-200(液体燃料ロケットエンジン)を搭載する案があります。
5. Avatar
Avatar(Aerobic Vehicle for Transatmopheric Hypersonic Aerospace TrAanspoRtation)は、水平離着陸が可能な1段式の再利用可能な宇宙船の概念です。低コストの商用・軍用の衛星スペースランチャーや、宇宙旅行を目的として開発されています。
重量は25トンで、そのうちの60%が液体水素燃料です。1年前に最初の小型化テストが行われ、Avatarの最初の有人宇宙飛行は2025年に予定されています。
このロケットのデザインは、すでにインドで特許を取得しており、中国、ドイツ、ロシア、アメリカの特許庁にもデザインの登録を申請しています。
4. Aditya
Adityaは、2019-20年までに太陽を調査することを目的とした衛星です。インド初の太陽コロナグラフ【観測装置】を搭載し、コロナ質量放出、コロナ磁場構造、コロナ磁場の進化などを調査します。また、コロナ内部の速度場とその変動性についても新たな情報を提供することになります。
2016-17年度の実験予算として約50万ドルが計上されました。プロジェクトの範囲は強化され、現在ではラグランジュ点【天体と天体の重力で釣り合いが取れる「宇宙の中で安定するポイント」】L1に配置される包括的な宇宙環境観測所となることが計画されています。現時点でL1点に衛星を配置することに成功しているのはESA【欧州宇宙機関】とNASA【米航空宇宙局】のみです。
3. Venusian Orbiterミッション
Venusian Orbiterは、金星の大気を研究するために提案されている金星への周回探査機です。資金が調達できれば、2020年までに打ち上げられる予定です。アルン・ジェートリー財務大臣【当時】は、104機の衛星を一度に打ち上げた後、宇宙機関の予算を23%増額しました。この予算には、「金星探査」の予算も含まれています。
NASAのジェット推進研究所のマイケル・ワトキンス所長は、金星についてはほとんど知られていないため、金星探査は価値があると述べています。NASAは、インドの金星への初飛行に協力することに興味を持っています。ISROとNASAは、このプロジェクトの動力源として電気推進力を使用するための研究を開始しました。
2. チャンドラヤーン2号
チャンドラヤーン2は、2019年7月に打ち上げられたインドの2回目の月探査ミッションです。軌道船と着陸船・惑星探査機モジュールを搭載し、岩石や土壌のサンプルを採取してその場で化学分析を行い、データは軌道船を経由して地球に中継されます。この探査機はスリハリコタ島からGSLV Mk II(地球同期衛星打ち上げロケット)で打ち上げられます。
チャンドラヤーン2号には1億4100万ドルの予算が割り当てられており、重量制限があるため、ロケットには他国の実験観測機器は搭載されません。打ち上げ時の質量の目安は3,250kgです。
1. NISAR
NISAR(NASA-ISRO Synthetic Aperture Radar)は、ISROとNASAが協力して二周波合成開口レーダー衛星を開発し、打ち上げるという、おそらく最大のプロジェクトです。NISARは、世界で初めて二周波を使用する衛星となります。
このミッションの目的は、氷床の崩壊、生態系の乱れ、火山、地滑り、地震、津波などの自然災害を分析することです。
このプロジェクトには10億ドル以上が割り当てられています。ISROは、ランチャー、Sバンド合成開口レーダー(SAR)実験観測機器、宇宙船バス、および関連サービスを提供します。一方、NASAはこのプロジェクトのLバンドSAR、ペイロードデータサブシステム、半導体レコーダ実験装置、GPS受信機を提供します。3軸安定化衛星の重量は2,600kgで、2020年中頃にインドから打ち上げられる予定です。