・インドの科学者らがユニークな特性を持つ新物質ブラック・ゴールドを開発。
・ナノ・ヒーターや海水淡水化から太陽エネルギーの採取まで、様々な用途に使える。
汚染は世界最大の死因のひとつとなっており、1億人以上が影響を受けています。これはHIVやマラリアといった主要な病気に匹敵します。
国際エネルギー機関によると、(燃料消費による)世界の炭素排出量の50%近くは、米国、中国、インドから排出されています。また、天然資源は驚くべき速さで枯渇しているため、この問題は年々深刻さを増しています。
幸いなことに、インドの研究者たちはすでにこの現在進行中の問題に取り組み始めており、それはほとんどの家庭や銀行の貸金庫にある貴金属に関連するもの、つまり「ゴールド」です。
タタ基礎研究所(Tata Institute of Fundamental Research)の研究チームは、この元素の化学的性質をわずかに変化させ、「ブラック・ゴールド」に変えました。研究チームは、金ナノ粒子間の隙間を再配列し、ユニークな特性を持つ新物質に変身させたのです。
従来の金属元素ゴールドとは異なり、この新物質は光と二酸化炭素を吸収することができ、ナノ・ヒーターや海水淡水化から太陽エネルギーの採取まで、様々な用途に使用することができます。
特筆すべきは、研究チームが他の物質を一切加えていないことです。つまり、核生成成長ステップを最適化するサイクルごとの成長アプローチを用いて、各金ナノ粒子間の距離を変化させたのです。
これを実行するために、ナノシリカの繊維を金ナノ粒子の堆積場所として使用しました。これらのナノ粒子はナノシリカ繊維上によく分散し、均一に分布しました。出来上がった物質が黒く見えるため、研究チームはこれを「ブラック・ゴールド」と呼んでいます。
出典:研究チーム
ナノシリカ繊維のユニークな円錐形の流路は、金の活性部位へのアクセスが良く、酵素触媒において重要な役割を果たす基質と生成物の効率的な拡散が可能です。これらはペルオキシダーゼ様活性の大幅な改善を示す可能性があります。
どのように役立つのか?
ナノ粒子サイズの不均一性と粒子間のプラズモニック結合により、ブラック・ゴールドは太陽光の可視領域と近赤外領域の両方を吸収することができます。また、太陽光を利用して、大気中の温度と圧力で二酸化炭素をメタンに変えることもできます。
ブラック・ゴールドで作られた人工の葉は、二酸化炭素を効率的に捕捉し、燃料やその他の貴重な化学物質に変換することができます。言い換えれば、このような人工葉は人工光合成を行うことができ、その効率は将来さらに向上する可能性があるのです。
さらに、ブラック・ゴールドはナノ・ヒーターとして使用することができ、海水を効率的に飲料水に変えることができます。高い活性と安定性に目を向けると、ブラック・ゴールドは臨床生化学や酵素免疫測定などの分析用途にも使用できる可能性があります。
「この成果は、大気温度と圧力の下で太陽エネルギーを利用した蒸気発生により、海水を飲料水に浄化する新物質の応用の可能性を示唆している」 – 研究チーム
この研究は、わずかな労力や資金を投入するだけで、二酸化炭素排出量を削減するのに役立つことになります。しかしながら、研究チームが将来、このコロイドソーム【コロイド粒子集積構造】の合成をスケールアップするのは容易ではないでしょう。