民間航空は、長い道のりを歩んできました。第一次世界大戦中には数機の軍用機が旅客を乗せて比較的短い距離を移動していただけでしたが、現代では多数の民間および公共の航空会社が複雑な飛行経路とプロトコルのネットワークの中で運行するようになっています。
航空輸送は、時間と安全性の面で、最も便利な移動手段として徐々に発展してきました。世界銀行の公開データによると、2019年に航空輸送で運ばれた旅客数は43億人と過去最高を記録し、フライトの離陸回数は3,890万回に達しました。
旅客が飛行機に乗り降りする場所を「空港」または「飛行場」と呼びます。空港には、少なくとも1本の滑走路、1基の管制塔、複数の格納庫、塔があります。大規模な空港では、施設が拡張され、航空機の着陸エリア、誘導路、より洗練された航空管制塔、ラウンジ、レストラン、ショップなどの旅客サービス施設があります。
以下では、世界で最も旅客数の多い17の空港について、総旅客数をまとめています。この数字の出典は、国際空港評議会です。
注:2019年と比較して、2020年の世界で最も忙しい空港のリストには急激な変化がみられました。これは、2020年初頭に勃発したCOVIDパンデミックにより、航空業界全体が混乱したためです。リストを見ると、旅客数レベルでは、欧米諸国から中国に急激にシフトしていることがわかります。今回紹介する最も忙しい空港17のうち、中国にある空港は10か所にのぼっています(前年は、香港国際空港を含む4か所のみでした)。
17. 杭州蕭山(こうしゅうしょうざん)国際空港
杭州蕭山国際空港|画像提供:Wikimedia Commons
所在地:中国、浙江省杭州市蕭山区
取扱旅客数:2,820万人
中国の杭州蕭山国際空港は現在、世界で17番目に忙しい空港であり、20年の歴史の中で初めてその地位を確立しました。現地の報告によると、2017年の旅客取扱数は3,500万人を超えており、国内では10位にランクインしています。
この空港には、国内線2つ、国際線1つの計3つのターミナルと、2本の滑走路があります。国際線ターミナルのゲートの1つは、世界最大の旅客機であるエアバスA380の取り扱いが可能です。
16. インディラ・ガンディー国際空港
IGI空港ターミナル3の内部|画像提供:Wikimedia Commons/Harata H.S
所在地:インド、ニューデリー
取扱旅客数:2,850万人
インディラ・ガンディー国際空港(IGI)は、インドで最大かつ最も利用者の多い空港であり、おそらく世界的に最も急速に成長している空港です。開港から10年が経過した2016年には、5,500万人以上の旅客を取り扱っており、2017年末には6,300万人と年率14%の飛躍を遂げました。2018年には、旅客輸送量が10.2%増(繁忙度上位20空港の中で最も高い)を記録しました。
この空港のターミナル1と2は、主に国内線で使用されており、多くの地域航空会社のハブ【拠点】としても機能しています。国際線の大半はターミナル3が取り扱っています。新しいターミナル4の建設が計画されています。現在、3本の滑走路があり、最長の滑走路は14,534フィート【約4.4㎞】です。
15. ロサンゼルス国際空港
ロサンゼルス国際空港のチェックイン・ホール
所在地:アメリカ、カリフォルニア州、ロサンゼルス
取扱旅客数:2,850万人
ロサンゼルス国際空港(通称LAX)は、ロサンゼルスのウェストチェスター地区に位置し、現在、世界で15番目に利用客の多い空港です。この空港は、アメリカン航空、デルタ航空、アラスカ航空、ユナイテッド航空の4大航空会社の主要ハブ空港として機能している唯一の空港です。
LAXはアメリカの4大国際ゲートウェイの1つであり、米国西海岸では最も重要な空港です。ほとんどの旅行者は、乗り継ぎ空港としてではなく、旅の出発地あるいは目的地として利用するため、最も混雑します。
この空港には9つのターミナルがあり、合計133のゲートと4つの滑走路があります。
14. 上海浦東(シャンハイプードン)国際空港
浦東国際空港第2ターミナルのチェックインエリア|画像提供:Wikimedia Commons
所在地:中国、上海市浦東区
取扱旅客数:3,040万人
上海浦東国際空港は、中国では9番目、アジアでは10番目に利用客の多い空港です。上海市とその周辺地域を管轄する2つの国際空港のうちの1つです。
この空港には、第1ターミナルと第2ターミナルがあり、4本の滑走路が稼動しています。第2ターミナルは年間約6,000万人の旅客に対応できると言われています。また、面積622,000㎡の世界最大のサテライトコンコースがあります。これは、第2ターミナルよりも大きい、独立したコンコースです。
浦東国際空港は、中国最大の航空会社でありフラッグキャリアである中国国際航空の副次的なハブ空港として機能しています。また、中国第2位の航空会社である中国東方航空や上海航空の主要ハブにもなっています。
13. シカゴ・オヘア国際空港
シカゴ・オヘア国際空港第3ターミナルのメインホール|画像提供: Flickr
所在地:アメリカ、イリノイ州、シカゴ
取扱旅客数:3,080万人
シカゴ・オヘア国際空港の起源は、第二次世界大戦中に軍事作戦を行うために開発された1930年代にさかのぼります。1955年には完全に商業用に転用され、1950年代後半から1960年代にかけて、一連の拡張工事が行われました。
国内線と国際線が増加するにつれ、1960年代半ばには世界で最も利用客の多い空港となり、その後、1998年までその地位を維持しました。
現在、この空港には4つの旅客ターミナルと8本の滑走路があります。その他の施設としては、ヒルトン・シカゴ・オヘア・ホテル、貨物専用エリア、その他の旅客サービスなどがあります。
2019年には世界で最も忙しい空港の第6位にランクインし、世界の空港の中で最も多い合計919,704回の航空機運行を行いました。
12. 東京羽田/国際空港
羽田空港第3旅客ターミナルの出発カウンター|画像提供:Wikimedia
所在地:日本、東京都大田区
取扱旅客数:3,090万人
東京国際空港は、羽田空港とも呼ばれ、日本で最も大きく、最も利用者の多い空港です。羽田空港は、首都圏にある2つの主要空港のうちの1つであり、もう1つは成田国際空港です。この2つの空港の間で、東京は世界で3番目に利用者の多い都市空港システムを有しています。
1978年から2010年までの30年間、羽田空港は主に国内線を取り扱っていました。しかし、2010年に専用の国際線ターミナル(第3ターミナル)がオープンしてからは、国際線の利用者数が急激に増加しています。日本の民間航空局は、羽田空港を国際便の主要空港として推進しています。
羽田空港は、日本の大手航空会社2社(日本航空と全日本空輸)の主要ハブとして機能しています。
11. 西安咸陽(せいあんかんよう)国際空港
西安咸陽国際空港の出発ホール
所在地:中国、陝西省西安市
取扱旅客数:3,100万人
西安咸陽国際空港は、中国北西部の重要かつ最大のハブ空港の1つです。2019年、この空港は旅客輸送量では中国で7番目、世界で40番目に忙しい空港となりました。また、貨物輸送量においても国内で最も忙しい空港の1つです。
現在の旅客取扱能力は年間3,400万人近くで、そのうち約65%は第3ターミナル(取扱能力2,200万人)だけで処理されています。また、2本の滑走路のうち1本は、エアバスA380などの大型旅客機の運航が可能です。
10. 上海虹橋(シャンハイホンチャオ)国際空港
上海虹橋国際空港の国内線ゲート
所在地:中国、上海市
取扱旅客数:3,110万人
上海虹橋国際空港は、中国に位置し、世界で最も利用客の多い17空港のうちの第10位です。往来の大半は国内線または地域線であり、国際線はごくわずかです。
この空港は、上海市虹橋区(長寧区、閔行区内)に位置し、市の中心部から数キロ離れています。また、上海浦東国際空港にも近接しています。
2010年には、新ターミナル(第2ターミナル)と第2滑走路が、153億元(20億ドル)の費用をかけてオープンしました。新ターミナルは旧ターミナルの約4倍の広さで、年間4,000万人の旅客に対応可能です。
9. 昆明長水(こんめいちょうすい)国際空港
昆明長水国際空港の待合室|画像提供:Wikimedia Commons/Windmemories
所在地:中国、雲南省昆明市
取扱旅客数:3,290万人
昆明長水国際空港は、中国南西部に位置する雲南省の省都で最大の都市、昆明の北東にあります。1920年代に建設された昆明呉家壩(こんめいふかは)国際空港に代わるものです。
2020年、昆明長水国際空港は約3,300万人の旅客を迎え、世界で最も忙しい空港の第9位にランクインしました。2019年では、総合37位でした。この空港は、2本のアスファルトの滑走路と、135エーカー(548,300㎡)の面積に広がる中国最大級のターミナルを有しています。
昆明航空、四川航空、洪通航空など、複数の国内航空会社や格安航空会社のハブとして機能しています。
8. デンバー国際空港
デンバー国際空港コンコースCと航空管制塔|画像提供:Wikimedia Commons
所在地:アメリカ、コロラド州デンバー
取扱旅客数:3,370万人
コロラド州デンバーのダウンタウン近くにあるデンバー国際空港は、現在アメリカで3番目に利用客の多い空港です。世界ではサウジアラビアのキング・ファハド空港に次いで2番目に大きな空港であり、アメリカでは最大の空港です。
この空港には6本の滑走路があり、3つのコンコースを持つ単一のターミナルがあります。ターミナルの名前は、航空のパイオニアであり、航空航法の分野で貢献したことで知られるElrey Borge Jeppesen氏にちなんで付けられました。また、アメリカ先住民が避難所として使っていたティピーやティピ【いずれも「テント小屋」の意味】に似た尖った屋根のデザインが特徴的です。
現在、Jeppesenターミナルの3つのコンコースすべてを拡張し、ゲートを増設するとともに、施設周辺の小規模な改修を行うプロジェクトが進行中です。
デンバー国際空港は、低コストの航空会社であるフロンティア航空とユナイテッド航空の重要なハブです。さらに、この空港はコロラド州最大の雇用主でもあります。
7. 北京首都国際空港
北京首都国際空港第1ターミナル(右側)と第2ターミナル|画像提供:Wikimedia
所在地:中国、北京市朝陽・春義区
取扱旅客数:3,450万人
北京首都国際空港は、中国の首都に就航する2つの国際空港のうちの1つで、もう1つは北京大興(ペキンだいこう)国際空港です。北京首都国際空港は、2019年のランキングでは総旅客輸送量で世界第2位、総貨物輸送量で世界第15位の忙しさでした。
この空港は1958年に設立されましたが、当初は小さなターミナルビル1つだけでした。しかし、現在では3つの大きなターミナルで構成されています。第1ターミナルは3つのターミナルの中で最も小さく、国内線のみを取り扱っています。第2、第3ターミナルは主に国際線を扱っています。
2008年に完成した第3ターミナルは、世界最大の空港旅客ターミナルビルとなり、現在、第9位にランクされています。
6. 重慶江北(じゅうけいこうほく)国際空港
空港の第3ターミナルの出発エリア|画像提供:Wikimedia Commons/Juukeihc
所在地:中国、重慶市渝北区
取扱旅客数:3,490万人
近代的な重慶江北国際空港は1990年1月22日に開港しましたが、その起源は1920年代にまでさかのぼります。この空港は、中国南西部最大の自治体である重慶市に仕えています。2020年には、世界で6番目に利用者の多い空港となり、前年より42位上昇しました。
この空港には3本の滑走路があり、同数のターミナルがあります。その中でも最大のターミナル3Aは、床面積が約180エーカー(約725,000㎡)あり、それだけで1年間に4,500万人の旅客を扱うことができます。
現在進められている拡張計画では、既存の施設に新しいターミナルと滑走路を追加する予定です。
5. 深圳宝安(しんせんほうあん)国際空港
深圳宝安国際空港|画像提供:Wikimedia Commons
所在地:中国、広東省深圳
取扱旅客数:3,790万人
深圳宝安空港は、広州国際空港、香港国際空港と並んで、人口密度の高い中国南部の珠江デルタ都市圏にある3大国際空港の1つです。この空港は、深圳航空と世界第4位の貨物航空会社であるUPS航空のハブとなっています。
2013年に、それまでの3つのターミナルが恒久的に閉鎖された後、運用ターミナルは「ターミナル3」として指定された1つだけです。2019年には、世界で26番目に忙しい空港にランクされていました。
4. ダラス・フォートワース国際空港
ダラス・フォートワース空港の航空写真|画像提供:Todd MacDonald/Flickr
所在地:アメリカ、テキサス州ダラス/フォートワース
取扱旅客数:3,930万人
ダラス・フォートワース(DFW)国際空港は、現在アメリカで2番目に利用客の多い空港であり、テキサス州では最も利用客の多い空港です。ダラスとフォートワースの2つの大都市の間に位置し、空港全体の面積はマンハッタン島を超えています。2019年には、最も忙しい空港ランキングで10位となりました。
この空港は、総旅客数、機材規模、ブランド価値で世界最大の航空会社であるアメリカン航空の主要ハブとして機能しています。空港には7本の滑走路、5つのターミナル、そして合計165のサービスゲートがあります。
DFWは260の都市に就航しており、そのうち国内線は182都市、国際線は62都市となっています(2020年現在)。
3. 成都双流(せいとそうりゅう)国際空港
成都双流国際空港の動く歩道|画像提供:Wikimedia Commons
所在地:中国、四川省双流蕪湖市
取扱旅客数:4,070万人
成都双流国際空港は、現在、世界で3番目に利用者の多い空港です。中国西部において不可欠な、最も重要なハブ空港です。この空港は、2019年には世界で24番目に忙しく、中国本土では4番目に忙しい空港でした。
2つのターミナルがあり、2つの異なる滑走路で結ばれています。第2ターミナルは第1ターミナルの2倍の広さがあり、1年間で5,000万人の旅客を扱うことができます。2008年に供用を開始した第2滑走路は、A380を扱うことができます。
2014年、この空港は、アメリカ(サンフランシスコ)と中国を結ぶ直行便を容易にする最初のハブとなりました。中国国際航空、中国東方航空、深圳航空、四川航空など、複数の人気航空会社の主要基地として機能しています。
2. ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港
ハーツフィールド・ジャクソン国際空港のゲートからの眺め|画像提供:Wikimedia Commons
所在地:アメリカ、ジョージア州アトランタ
取扱旅客数:4,290万人
2020年、アトランタのハーツフィールド・ジャクソン国際空港は、世界で2番目に忙しい空港にランクインしました。1998年から2019年までの20年間は、世界で最も忙しい空港でした。
この空港は、4,700エーカー(約19㎢)の土地に広がっています。2つのターミナルに7つのコンコースがあり、合計195のゲートがあります。並行して5本の滑走路があり、そのうち最も長い滑走路の長さは12,000フィート【約3.6㎞】です。
米国運輸省によると、ハーツフィールド・ジャクソン空港は、2017年の国際旅客輸送量において、アメリカの最も忙しい20の空港の中で第7位でした。その年、およそ1億400万人以上の旅客がこの空港を利用しました。
この空港は、売上高で世界最大の航空会社であるデルタ航空の主要なハブであり、格安航空会社であるサウスウエストとフロンティアの小規模なハブでもあります。
1. 広州白雲(こうしゅうはくうん)国際空港
広州白雲国際空港にあるFedExのアジア太平洋地域のハブ空港|画像提供:Meihe Chen
所在地:中国、広東省
取扱旅客数:4,370万人
2020年に世界で最も忙しいハブとなった広州白雲国際空港は、その前年では世界で11番目に忙しい空港でした、この劇的な変化は、COVID-19のパンデミックにより世界的に航空輸送が混乱したことに起因します。
この空港は、2019年、旅客数と貨物輸送量の両方において、中国で3番目に忙しい空港でした。空港には第1と第2の2つのターミナルがあり、第2ターミナルは床面積で世界最大級の空港ターミナル(658,700㎡)です。3本の滑走路が稼動しており、さらに2本の滑走路が計画中です。この空港は、海南航空、中国南方航空、深圳航空など、複数の国内航空会社の主要ハブとして機能しています。
現在進められている拡張計画により、広州白雲国際空港の処理能力は、年間1億2千万人の旅客と約400万トンの貨物に対応する予定です。
よくある質問
2020年に最も忙しい空港はどこでしたか?
アメリカのハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港は、2019年に最も忙しい空港にランクインしました。その年は1億1,000万人以上の旅客を扱ったのに対し、2020年は4,500万人でした。
2020~2021年に貨物輸送量が最も多い空港はどこですか?
メンフィス(テネシー州第2の都市)に位置するメンフィス国際空港は、現在、アメリカおよび世界で最も忙しい貨物空港です。取扱貨物量は460万トンを超えています。
空港の数が最も多い国はどこですか?
アメリカには、2019年現在、世界で最も多い約19,636の空港があります。そのうち、約14,556の空港が民間利用に限定されています。その次に多いのがブラジルで、約4,000の空港があります。以下、メキシコ、カナダ、ロシアと続きます。