・結晶の中に液晶を作る新しい方法が開発された。
・この結晶を利用することで、消費電力の少ない次世代ディスプレイやセンサー技術を開発することができる。
液晶は、従来の液体と固体結晶の中間的な状態です。液体のように形を変えることができ、固体結晶のような分子配列の特性を持っています。
その独特な挙動から、電子ディスプレイや変調型光学機器に使用されています。例えば、液晶ディスプレイは、コンピュータのモニター、計器盤、テレビ、デジタルカメラなど、幅広い用途に使われています。
このたび、シカゴ大学の研究チームが、結晶の中に液晶を作る新しい方法を考え出し、次世代のディスプレイやセンサー技術の開発に利用できる可能性があることを明らかにしました。
ブルー相結晶
液晶の分子配向が、多くのディスプレイ技術に利用されている主な理由です。分子は、可視光を反射するために、高度に規則正しく配置されることも可能です。この構造は、BPC(ブルー相結晶)と呼ばれています。
BPCには、可視光を反射・透過する規則性の高い特徴があります。従来の液晶に比べ、応答速度が速く、光学特性も優れています。
また、BPC内の光を反射する特徴は、その間隔が、原子数個分ではなく、分子直径最大300という大きな距離で隔てられているため、その界面を容易に設計することができます。この界面は、化学反応や機械的変形、音や光、エネルギーの輸送を妨げる役割を担っています。
このような特徴から、BPCは光学技術に最適な候補と言えます。
別の結晶で結晶を作る
研究チームは、BPCインターフェースを設計するために、リソグラフィー【半導体を製造する際に、基板に光や電子ビームなどで回路パターンを転写する手法】に基づく技術を開発しました。表面を化学的にパターン化し、液晶を蒸着させ、その分子配向を操作するのです。
すると、液晶自体が分子配向を増幅し、特定のブルー相結晶を別のブルー相結晶の中に造形することができるようになりました。これにより、研究チームは、液晶の中に特別に調整された結晶形状を作り上げることができました。
液晶
出典:Martelj/Wikimedia
電流と温度のいずれによっても、新しく造形された結晶を操作する(あるいは色を変える)ことができます。言い換えれば、電流と温度のどちらを使っても、あるブルー相を別の種類のブルー相に変えることができるのです。
意義
これは、外部からの刺激に応答し、特定の波長の光を反射することができる物質を入手したことを意味します。この物質は、光学特性を精密に変化させることができるのです。また、この結晶内結晶は、電圧や温度、添加する化学物質によって制御できるため、より優れたディスプレイ技術やセンシング技術への応用が期待されます。
これらの結晶は、わずかな電圧や温度の変化で色を変えることができるため、このような物質で作られた機器は、既存のディスプレイに比べて消費電力が大幅に削減されます。
この研究により、科学者はナノスケールで結晶を操作し、完全に均一な構造を構築するために結晶を使用することができるようになります。研究チームは、他の光学機器や物質についても実験を行う予定です。同じ技術を使って、より複雑なシステムを開発していきます。