・宇宙膨張の過程で、スカラー粒子と呼ばれる特定の種類の粒子が大量に生成された。
・ダークマターがこれらのスカラー粒子と何らかの関係があるとすれば、それはビッグバンより前に存在していた可能性がある。
宇宙の質量の約85パーセントは、ダークマター【暗黒物質】と呼ばれる謎の物質でできています。これは、光やその他の放射線を吸収・放出したり、反射したりすることはありません。また、電磁波の電荷を持たず、重力以外の他の物質と相互作用することもありません。
ダークマターが銀河や銀河団の形成にどのような影響を及ぼすかは科学者により明らかにされているものの、その起源についてはあまり知られていません。現在では、ビッグバンの残りカスだと考えられています。
近頃、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者たちが、天文学と素粒子物理学の新たな関連性を発見しました。これは、ダークマターがビッグバン以前に誕生し、宇宙全体の銀河分布に影響を及ぼしていたことを示すものです。
何十年もの間、科学者はダークマターの観測を試みてきましたが、これまでに行われたすべての実験では、実りある結果は得られていません。研究チームによると、もしダークマターがビッグバンの後に生まれたのであれば、今頃は様々な素粒子物理学の実験で直接的な信号が捉えられているはずだということです。
新しい数学的枠組み
この新しい計算は、ダークマターが宇宙のインフレーション(初期宇宙における空間の指数関数的膨張)中に形成された可能性を示しています。この急激な膨張は、ビッグバンの特異点から10-36秒~10-32秒の間続いたと推測されています。
この期間に、スカラーと呼ばれる特定の種類の粒子が大量に作られました。これまでは、天文学者はヒッグス粒子という1つのスカラー粒子を発見することができただけです。
ビッグバン後の宇宙の年表
出典:NASA
ダークマターの起源は謎ですが、もしスカラー粒子と何らかの関係があるのなら、ビッグバンより前にあったのかもしれません。
この新しい計算では、すでに知られている重力の影響を超える、ダークマターと可視物質との新しいタイプの相互作用は考慮されていません。この数学的枠組みは、大きな自由スカラー場がインフレーションの間に特徴的な時間スケールでその量子ダイナミクスと古典ダイナミクスの間の平衡に必然的に到達し、ダークマター密度を生み出すという、幅広いシナリオを考慮しています。
ダークマターがビングバンに先行するという説は過去に何度か発表されていますが、今回の発見は、理論家がダークマターの起源に関する単純な数学的シナリオを常に見抜けなかったことを示しています。
さらに、この研究では、ダークマターが宇宙の可視物質の分布に残す影響を分析することで、ダークマターの起源を検証する方法を提案しています。
また、ダークマターが宇宙の物質分布に残すサインを観察することによって、ダークマターの起源をテストする方法を提案しています。このようなダークマターを素粒子実験で検出することは非常に困難ですが、天体観測で見つけることは可能です。
欧州宇宙機関は、2022年にユークリッド衛星を打ち上げる予定です。この可視光から近赤外線までの宇宙望遠鏡は、科学者がダークマターと暗黒エネルギーについてより深く知るための一助となることでしょう。